まず、本書のタイトルから始める。
ファクトfactは事実という名詞なので、ファクトフルfactfulと語尾を変化させたときには事実に関する形容詞になるのかもしれない。
ところが、Merriam-Websterという英英辞典にfactfulという英単語は掲載されていない!
事実factの形容詞は、factualであり、factual という英単語はMerriam-Websterに掲載されている。
同様に、factfulnessという英単語はMerriam-Websterに掲載されていない。これに対して、factualityという名詞もfactualnessという名詞も掲載されている。
どうやらfactfulnessという単語は著者の造語のようである。
ここで、本書から脱線するのだが、造語を商品の名称に選択したときには、識別力が高いという特徴がある。即ち、造語と商品との結びつきが高くなる。スペリングミスのようであるが、本来のスペルは見当がつく単語は、マーケティング戦略として有効である。また、商品のネーミングは商標法と密接に関連する。
さて、本書に戻るのだが、著者は、公衆衛生が専門の大学教授であり、本書は世界各国について公衆衛生という観点で比較している。乳幼児死亡率、1人の女性が生涯に産む子供の数などの統計データに基づいて各国を比較している。
クイズ形式にして学生に尋ねると、学生が、世の中に関する事実、世界に関する事実をあまり知らないことが判明する。
著者が大学教授なので、学生に質問して回答が得られただけであり、社会人も同様に世の中のことをあまり知らないかもしれない。
本書によると、乳幼児死亡率、特に5歳までに死亡した乳幼児の死亡率で、世界各国の公衆衛生が大まかな把握できるとのこと。
安全な水が入手でき、食料が十分に入手でき、医療機関にアクセスすることができる国では、乳幼児死亡率は低い。
一方、乳幼児死亡率が高い国では、そもそも汚染されていない水が簡単に入手できなかったりする。
興味深いことに、乳幼児死亡率が高い国では、1人の女性が生涯に産む子供の数が多い。端的に言えば、多産多死という状況である。
50年前、60年前の統計と現在の統計を比較すると、世界は着実に良くなっている。即ち、安全な水が提供される地域は増え、乳幼児死亡率は低下し、平均寿命は延びている。
世の中の全体としては、未来は明るく、現在より確実に良くなるとのこと。