化学の要点シリーズは日本化学会が編集し、共立出版から刊行されているが、化学の要点シリーズ7「ナノ粒子」を読了した。

 

ナノ粒子については、直径100ナノメートル以下の微粒子という定義があり、本書はそのような定義を採用している。

 

いずれにしても金属クラスターがナノ粒子の典型例である。昔、金属クラスターについて研究したことがあるので、ナノ粒子という専門用語より、金属クラスターという専門用語に馴染みがある。

 

ところで、正二十面体のマジックナンバーとして、原子数が13,55,147などが例示されているが、これらのマジックナンバーと正二十面体との関係は明記されていない。

 

そこで、このような基本的な内容を補充する。

 

マジックナンバー13ということは、13個の金属原子が正二十面体構造をしていることを意味する。

 

正二十面体では、正三角形からなる面が20面あるが、頂点は12個ある。そこで、12個の金属原子が正二十面体の頂点の位置となり、1個の金属原子が正二十面体の中心に位置すするときを考える。この場合、13個の金属原子の全体として正二十面体構造をすることになるのだが、このようなナノ粒子、金属クラスターは安定化する。

 

この場合、正三角形からなる面は3つの金属原子から構成されているが、これらの3つの金属原子は同時に正二十面体の頂点でもある。

 

また、正二十面体では回転対象群はA5であり、正二十面体の構造は、2つの正五角錐の底面が互いに結合している。

 

五角錐の5回対象軸を基準とすると、頂点の数は、1+5+5+1=12となる。

 

第1層の原子        1

第2層の原子        5

第3層の原子        5

第4層の原子        1

 

これら12個の原子は頂点の位置となる。

 

正二十面体の対称性を維持しつつ、その外側に更に原子を配置したときには、金属原子の数は55となる。

 

この正二十面体は3層構造をしている。最も外側の層では、正三角形からなる面が6個の金属原子から構成されている。第1列が1つの金属原子、第2列が2つの金属原子、第3列が3つの金属原子となる場合、一つの面が6個の金属原子となる。

 

中間層では、正三角形からなる面が3個の金属原子から構成されている。第1列が一つの金属原子、第2列が一つの金属原子である。

 

最も内側の層は、正二十面体の中心であり、1つの金属原子から構成されている。