地球は太陽の周りを1年かけて回転している。地球の軌道は円でなく楕円なので、軌道を移動する速度は一定ではない。

 

計算を簡略化するために円軌道に近似して、速度が一定と仮定したときには、秒速約30キロになる。

 

月は地球の周りを約27日で回転している。本来は楕円軌道なのだが、円軌道に近似したとき、秒速約1キロになる。月までの距離は約38万キロ。

 

静止衛星軌道は高度36000キロになるが、人工衛星は地球の周りを1日で回転している。正確には23時間56分で一周するが、秒速3.1キロになる。

 

低軌道衛星は高度500キロになり、94分で地球の周りを一周し、秒速7.6キロになる。

 

月とか人工衛星は回転半径が大きいが、もっと回転半径が小さい場合を考える。

 

フィギャアスケートのスピンでは、回転軸を中心として身体がクルクルと回転している。

 

手足が回転軸から離れているとゆっくりと回転するが、手足が回転軸に近くなると、回転速度が早くなる。

 

回転半径が更に小さい場合はどうなるだろうか。

 

原子構造のボーアモデルでは、電子は原子核の周りを回転しているとされている。量子力学の世界なので、電子の運動エネルギー及び電子の軌道は離散値となる。

 

難しい数式を省略すると、ボーアモデルでは、電子の速度は、(1/137)(Z/n)cになるとのこと。

 

ここで、Zは陽子の数。

nは量子数であり、具体的には、K殻で1、L殻で2,M殻で3。

cは光速。

 

例えば、水素原子では、Zが1であり、量子数nが1であるので、電子の速度は(1/137)cであり、秒速2200キロになります。

 

電子が秒速2200キロという高速で水素原子の周囲を回転していたとき、電子の位置を計測するのは大変でしょうね。物理では不確定性原理というものがありますが、不確定性原理を持ち出さなくても、電子のように小さくて、高速な物体の位置を正確に計測するのは大変そうです。

 

鉄原子では、Zが26になりますが、1s軌道の電子は、(26/137)cという速度で動いていることになり、光速の約20%の速度になります。

 

ヨウ素では、Zが53になりますが、1s軌道の電子は、(53/137)c、即ち、光速の約40%の速度になります。2s軌道の電子は、nが2になるので、(26.5/137)c、光速の約20%の速度になります。3s軌道の電子は、nが3になるので、53/(3x137)c、即ち、光速の約13%の速度になります。

 

いずれにしても電子の速度は極めて速いので、相対性理論に基づく影響が現れます。