昨今は、収縮期血圧が140mmHg以上で高血圧とされている。水銀柱で圧力を計測したときに、水銀の高さが140㎜以上のときに高血圧ということになる。
ところで、140㎜Hgという圧力はどの程度のものなのだろうか。
SI単位系で圧力の単位はパスカルとされているので、パスカルに換算すると、140mmHgは18665パスカルである。
18665パスカルといっても、どの程度の圧力か良く分からない。
1パスカルは、1平方メートルの面積に1ニュートンの力が作用する圧力又は応力とされている。
さて、この圧力の定義を読むだけでは、1パスカルの圧力がどれぐらいのものなのか、見当がつかない。
ここで、縦1メートル、横1メートルの机を考える。
この机の上に100グラムの質量の物質を置いたとき、0.98ニュートンの力が机表面に作用し、机表面にかかる圧力が0.98パスカル、即ち、概ね1パスカルになる。
この机の上に500ミリリットルのペットボトルを一つ置く。ペットボトルの中身の液体は比重1として、液体の質量は500グラムとなるが、更にペットボトルの質量(5グラムそれとも10グラムそれとも20グラム)を考慮すると、5パスカル前後の圧力が机の表面にかかる。
この机の上に体重100キロの人間が乗ったとき、980ニュートンの力がかかり、980パスカルの圧力ということになる。
140mmHgに対応する18665パスカルは、980パスカルの約18倍であるのだが…
1パスカルの定義に影響されて、縦1メートル、横1メートルの机を想定したのだが、実はここに問題がある。血管の直径は1メートルもない。そもそも人間の肩幅は1メートルもない。
人間の体内では、胸部大動脈で直径25mmから30mm、腹部大動脈で直径20mmから25mmとされている。
ここで、直径2㎝、半径1㎝の動脈を考える。すると、断面積は3.14平方センチメートルになる。
動脈の直径といっても、血管壁を含めた外径なのか、血管壁を含めない内径なのかで差異があるのだが、有効数字一桁として、3平方センチメートルの面積を考える。ちなみに、上記の机は、1万平方センチメートルの面積となっている。
1ニュートンの力が3平方センチメートルの面積に作用すると、その圧力は3333.33パスカルになり、5ニュートンの力が3平方センチメートルに作用すると16666.66パスカルとなる。
16666パスカルの圧力では、ギリギリ高血圧にならないということになる。