この週末は、世俗から離れバートランド・ラッセルの「西洋哲学史-古代より現代に至る政治的・社会的諸条件との関連における哲学-」を読んでいた。本書は1945年に米国で刊行され、翌年、1946年にイギリスで刊行されている。
ラッセルは、米国、イギリスなどの連合国がドイツなどの枢軸国と戦争をしている時期に米国ペンシルベニア州で本書を執筆していたのだが、第二次世界大戦の影響が如実に表れている。
カント、ショーペンハウエルのようなドイツ観念論は紹介されているが、19世紀から20世紀にかけて活躍したドイツ人哲学者が省略されている。例えば、現象学で有名なエトムント・フッサール(1859年- 1938年)も現象学を発展させたマルティン・ハイデガー(1889年-1976年)も省略されている。
一方、ギリシャ哲学は実に詳細に描写されている。アリストテレス、プラトンが詳細に記述されているのは分かるのだが、アリストテレス、プラトン以前の哲学者まで詳細に紹介されている。
また、リバイアサンのホッブス、社会契約説のジョン・ロックのようなイギリス人哲学者が詳細に記述されているのはともかく、ヒューム、バークリーなどのイギリス人哲学者も紹介されており、とにかくイギリス経験主義が重点的に紹介されている。
ところで、第一次世界大戦は1914年から1918年まで続いたが、1916年にラッセルは平和主義を提唱したことを理由に100ポンドの罰金を科されるとともに、ケンブリッジ大学トリニティカレッジにおける教職を失っている。
これにも懲りずにラッセルは反戦主義を続けたのだが、結局、1918年には反戦主義を理由に半年間、投獄されている。
第一次世界大戦中の教訓に鑑みて、第二次世界大戦中、ラッセルは当局を刺激するようなドイツ思想は公表しなかった、ということになります。
第二次世界大戦という時代背景のもと、政治的・社会的条件との関連における哲学を追求したこともあり、ラッセルは1950年にノーベル文学賞を受賞しました。
参考文献
バートランド・ラッセル、市井三郎訳、
西洋哲学史 1―古代より現代に至る政治的・社会的諸条件との関連における哲学
みすず書房、1970