日本刑法学会が編集、発行する刑法雑誌第58巻第2号は、「精神の障害と責任能力・量刑の判断」について特集している。2018年5月26日に関西大学で開催された日本刑法学会第96回大会における共同研究分科会Iの報告が特集としてまとめられている。

 

この特集として複数の論文が掲載されているのだが、ここでは岡田幸之(東京医科歯科大学教授)が執筆した「精神科医から見た法律家が考えるべき問題」という論文を紹介する(154-170ページ)。刑法には、責任能力、事理弁識能力、行動制御能力などの法律専門用語があるのだが、これらは事実に適用されるものである。この論文では、「イメージ共有のための仮想事例提示」というセクションで、容疑者A(25歳、男性、無職)が被害者Vを包丁で刺殺した仮想事例を提示しているのだが、このセクションから抜粋する。

 

Aは事件の1か月前から近くの交番に「Vがしつこく嫌がらせをしてくるので何とかしてほしい」「集団ストーカーもされている」など3度相談に行っていた。・・・Aは「事件の前の日も(2階のVの部屋からの)電磁波が強かったので、天井を棒で突いた。」という。

 

引用終了

 

この論文では、刑事責任能力を判断するときには、8ステップで判断すべきと提唱しており、このような8ステップが上記の仮想事例との関係で解説されている。ちなみに、この8ステップのうち、5ステップから8ステップが法律判断になる。

 

ところで、ある団体は、複数の加害者が被害者に対して、集団ストーカーをしていると主張しており、このような被害者が会員となる団体が組織されている。

 

この団体は、更に、集団ストーカーは犯罪であると主張している。そこで、集団ストーカーという犯罪を解決するために、被害者は警察に集団ストーカーという犯罪被害を相談するよう勧めている。

 

ところで、警察は、集団ストーカーという犯罪被害を訴える被害者に対して、どのように対応するだろうか。

 

集団ストーカー、電磁波攻撃について警察に相談して、警察が集団ストーカー、電磁波攻撃などを実行する犯人を摘発するということは期待できないので、警察に被害相談というような行動は控えるのが無難でしょうね。

 

ちなみに、お隣さんとか、ご近所さんとか、〇〇さんが集団ストーカーとか電磁波攻撃をしているわけではないので、このような人達を加害者と誤解すべきではないですし、誤解に基づいて、暴力で報復を実行してはいけません。

 

文献

岡田幸之、「精神科医から見た法律家が考えるべき問題」

日本刑法学会、刑法雑誌、第58巻、第2号、154-170頁、2019