大学図書館で「マイクロ波通信」というタイトルの本を見つけた。
 
かなり古い本であり、昭和50年代に執筆されている。
 
著者は、昭和20年代に大学を卒業し、同じ年に日本電信電話公社に就職して、マイクロ波に関する部門を歴任している。引退後、または引退間際にマイクロ波通信の専門知識を書籍にまとめたのでる。
 
なお、日本電信電話公社は民営化にともなって社名を変更して、現在では日本電信電話株式会社になっている。
 
この本の序文に我が国のマイクロ波研究は電波兵器の開発で始まったことが明記されている。昭和20年代後半にマイクロ波通信の民生利用が認められており、東京と大阪を結ぶマイクロ波通信回線が最初に敷設されている。現在では、マイクロ波はテレビ放送、携帯電話に使われている。
 
このようなマイクロ波が普及した経緯を考慮すると、何か別のものが見えてくる。
 
まず、マイクロ波という用語に関する問題である。
 
マイクロ波という用語があっても、マイクロ波の周波数について明確な定義がされていない。
 
やはりマイクロ波が電波兵器の開発と密接に結びついていた時代、電波兵器に使われている電波の周波数は極秘だったと推測される。戦後、マイクロ波通信としてマイクロ波の民生利用が認められるようになっても、マイクロ波兵器、電波兵器に使われている周波数は秘密が維持されたと推測される。
 
次に電波の波長は1万キロを超えることもあるし1mm 以下のこともある。波長が1万キロの場合と波長が1ミリの場合では電波の性質が変わってくる。電波の波長がどんどん短くなると、光になる。
 
光の典型例は可視光であるが、可視光の波長は約0.8マイクロメートルから約 0.3マイクロメートルぐらいになる。
 
可視光は影をつくる。例えば日なたを歩いていると、足元から影が伸びている。要するに光は直進するので、影の部分に光が届かないのである。
 
影ができるという可視光の性質は電波にも同様に当てはまるのだが、
厳密にいうと、影ができるかどうかというのは、
電波の波長と物のサイズとの比較で決まる。
 
光の波長や電波の波長に比べて、物のサイズが極めて大きい時には影ができるのである。例えば人間の身長は1.5m から2m ぐらいであるが、可視光の波長よりはるかに大きい。また電波の波長が1mm の場合と比べると人間の身長ははるかにはるかに大きい。
 
一方、電波の波長が1万キロという場合を考えてみる。
 
高さ10m 20m のマンションと比べて1万キロという波長は極めて大きい。高さ200m の高層ビルと比べて1万キロという波長は極めて大きい。標高3000m、すなわち3kmの山と比べて、波長1万キロは極めて大きい。
 

波長が1万キロもあれば、建物の裏側や山の裏側まで電波が簡単に回り込み、建物や山があっても影ができるということにならないのである。即ち、建物や山の影になるから電波が届かないということがないのである。

 
このように電波の波長と物のサイズが関係する。
 
さて、マイクロ波の波長というのは
実は人間のサイズまたは人間のパーツのサイズと大体、同じぐらいになる。
 
例えば、人間の頭のサイズとか、脳のサイズとか、心臓のサイズとか、手のサイズということ。
 
電波の波長と導電性物質のサイズがだいたい同じとき、電波は導電性物質に吸収される。
 
電波の波長と人間のサイズが大体同じとき、電波は人間に吸収される。
 
人間は細胞、組織、臓器から構成されているが、人間のどこに吸収されるかというと、電流が最も流れやすい所、抵抗が最も小さいところに吸収される。
 
神経系は電流が流れるようにできているので、神経系に最も電波が吸収されやすい。
 
ところで、電波兵器を開発するとき、身体のどこを狙うと思う?
 
やはり心臓か脳を狙うでしょうね。
 
電波兵器の機能としては、電波が心臓に命中して異常電流が流れ、
不整脈が起きたり、心筋梗塞が起きることが期待されているのではないだろうか。
 
脳は厖大な数の神経細胞がネットワークを構成しているが、電波兵器からマイクロ波が脳に照射されたときには、この神経ネットワークに電流が流れることになるので、神経ネットワーク全体に電流が分散することになる。
 
同一の電力のマイクロ波が電波兵器から心臓に照射された場合と脳に照射された場合を比較すると、心臓に照射された方が致死的になることが想定される。