内科では、体温の上昇を発熱と高体温に分けることがある。
 

要するに、発熱feverと高体温hyperthermiaは、別箇の現象であり、

これに伴って、二つの用語は区別して使われている。

 

発熱

 

発熱は、体温が正常な日常変動を逸脱して上昇するが、

ほとんどがウィルス感染による。

 

発熱では視床下部の体温調節機構が関与している。

 

視床下部が設定する温度の基準値が上昇しており、

視床下部からの信号により、血管収縮におり熱を温存し、震えが起きる。

 

高体温

 

一方、熱を喪失する能力の限界を超えて体温が上昇するときには、

hyperthermiaとなる。

 

例えば、真夏に運動をしたときに高体温となる。

 

視床下部における体温調節機構の温度基準値は変わらない。

 

発熱feverにはアスピリン、アセトアミノフェンのような

解熱剤は有効であり、ある程度、熱を下げるのに対して、

高体温hyperthermiaには解熱剤は有効でない。

 

高体温のときには濡れたスポンジ、扇風機、冷やした毛布、

氷風呂などで全身を冷やす。

 

氷で冷やした食用液を用いて胃の内部や腹腔内を洗浄して、

内部から冷却することもある。

 

悪性症候群 malignant syndrome

 

悪性症候群は、高熱、発汗、振戦、頻脈等の症状があり、

向精神薬を使用するときの重大な副作用である。

 
神経遮断薬(フェノチアジン系向精神薬、
haloperidol, prochloroperazine, metoclopramide)の使用や、
ドパミン作動薬により引き起こされる。
 

鉛管様筋硬直、錐体外路症状、自律神経系の調節障害、

高熱をきたすのが特徴である。

 

視床下部における温度調節機構が向精神薬により

阻害されることによって生じるものであり、

視床下部からの信号により、体内で産生する熱が増加するとともに、

身体から放出される熱が減少する。

 

人間は恒温動物の一種であり、

体温が一定に維持されるのが生存の基本的な条件となる。

 

人間はホメオスタシスの作用により、

体温、特に、身体の内部の体温が一定に維持するようになっており、

視床下部が体温を一定に調節する機能がある。

 

ところが、悪性症候群は、視床下部の機能が壊れているのである。

 

悪性症候群を治療しないときには死亡することもある。

 

ちなみにセロトニン症候群と悪性症候群を区別することがある。

 

セロトニン症候群も悪性症候群と近似する症状であるが、

下痢、震戦があり、鉛管様筋硬直でなくミオクローシスを呈する。

 

参考文献

「ハリソン内科学」第4版、福井次矢、黒川清日本語版監修

メディカル・サイエンス・インターナショナル

Harrison’s Principles of internal medicine,18th edition