音は耳から聞こえる。

音は20ヘルツから2万ヘルツ前後の周波数の縦波が
空気を伝わる現象となる。
 

周波数が2万ヘルツ前後を超える音波が空気を伝わるときには、

人間の耳に聞こえず、このような音波は超音波と命名されている。

 

ところが、何事にも例外があり、

1970年代から1980年代にかけて、

ソビエト連邦共和国科学アカデミーの研究者が、

特殊な条件超音波が聞こえることを報告している。

 

周波数がメガヘルツのオーダーであり、かつ、

パルス幅がミリ秒オーダーの超音波パルスを

頭部が焦点となるように照射すると、クリック音が聞こえる。

 

例えば、2.35メガヘルツ又は2.47メガヘルツの周波数にて、

0.1ミリ秒~2ミリ秒のパルス幅の超音波パルスを

頭部が焦点となるように照射すると、音として聞こえる。

 

一方、超音波がパルス波でなく、

連続波のときには音として聞こえない。

 

超音波パルスに関する実験結果は

米国コロラド大学電子コンピュータ学科のグループが、

再現しているので、信憑性はあるのでしょう。

 

超音波パルスの焦点が、蝸牛を中心として

概ね35mm前後の範囲内にあるときに聴覚を刺激する。

 

超音波パルスの焦点におけるエネルギー密度で表わされる

聴覚刺激の閾値は超音波パルスの焦点の位置に依存する。

 

内耳の蝸牛が焦点の場合には閾値が小さくなる一方、

前頭骨が焦点の場合には閾値が大きくなる。

 

聴覚刺激の閾値は1秒間にパルスを繰り返す回数に依存し、

パルス繰り返し回数が増加するにつれて、閾値が低下する。

 

例えば、内耳の蝸牛が焦点となり、

パルス繰り返し回数が50回のとき、

エネルギー密度の閾値は、

1平方センチメートル当たり15ワット前後となる。

 

あるいは、内耳の蝸牛が焦点となり、

パルス繰り返し回数が500回のとき、

エネルギー密度の閾値は、

1平方センチメートル当たり3ワット前後となる。

 

前頭骨が焦点となり、

パルス繰り返し回数が50回のとき、

エネルギー密度の閾値は、

1平方センチメートル当たり150ワット前後となる。

 

前頭骨が焦点となり、

パルス繰り返し回数が500回のとき、

エネルギー密度の閾値は、

1平方センチメートル当たり50ワット前後となる。

 

超音波パルスが聞こえる生理機構は、

複数、提案されている。

 

超音波パルスが頭部に照射されたとき、

瞬間的に頭部に圧力が付与されるが、

この圧力が聴覚刺激の生理機構に関与している。

 

ちなみに、骨伝導では、通常、プローブを皮膚に接触させ、

プローブから振動を発生させている。

 

これに対して、強烈な超音波パルスが頭部に照射されることにより、

その照射圧力により振動を発生させているのかもしれない。

 
文献
 

1.          L.R. Gavrilov. E. M. Tsirul'nikov, and E. E. Shchekanov,

"Stimulation of the auditory receptorsby focused ultrasound,"

Akust. Zh. 21. 706 (1975)
[Sov. Phys. Acoust. 2, 437 (1975)].
 

2.          L. R. Gavrilov. V. I. Pudov, A. S.Rozenblyurn, E. M. Tsirul'nikov, A. V.

Chepkunov, and E. E. Shchekanov.

"Application of focused ultrasound forthe input of auditory information 

into the aural labyrinth,"
Akust. Zh. 2,557 (1977)
(Sov. Phys. Acousc. 2, 318, 1977).
 

3.           L.R. Gavrilov, G. V. Gershuni, V. I. Pudov, A. S. Rozenblyum, and 

E. M.Tsirul'nikov

“Human hearing in connection with theaction of ultrasoun

in the megahertz range on theaural labyrinth”

Original journal: Akust.Zh. 26, 528-532 (July-August 1980)

English translation: Sov. Phys. Acoust.26(4), July-August 1980, p290-292

 

4.  L.R. Gavrilov. G. V. Ge:shuni, O.B. Il'inskii, E. M. Tsirul'nikov. and E.

E. Shchekanov.
Reception and Focused Ultrasound
[in Russian]. Nauka, Leningrad (1976).

備考:書籍