(1) 耳小骨と蝸牛の接続部
 

 側頭骨の内部に空間(専門用語で中耳腔)が形成されており、

この中耳腔の内部に耳小骨が配置されている。

 

中耳腔は鼓室ともいう。

 

ちなみに、医学、解剖学の専門用語では、

このような中空の構造などは腔という。

 

耳小骨はツチ骨(malleus)、キヌタ骨(incus)、及び、

アブミ骨(stapes)から構成される。

 

アブミ骨には卵円形(ほぼ楕円形)をした底板がある一方、

蝸牛の前庭階に卵円窓(oval window)という開口部が形成されている。

 

アブミ骨の底板が蝸牛、前庭階の卵円窓(oval window)の

開口部にはまっている。

 

耳小骨の振動は、アブミ骨の底板の振動となり、

蝸牛の卵円窓(oval window)に伝わる。

 

(2)蝸牛の構造

 

 蝸牛は、カタツムリや巻貝と似た形状をしており、

管が渦を巻いた形状をしている。

 

この管の内部が3つの空間に仕切られており、

3つの空間の何れもがラセン階段のように渦を巻いている。

 

3つの空間は、

 前庭階(scala vestibule)

 中央階(scala media)

 鼓室階(scala tympani)と命名されている。

 

「前庭階」などの名称に「階」”scala”という用語が付されているが、

階段という意味である。

 

3本の管を横切る断面を見ると、

前庭階と鼓室階の間に中央階が位置する。


前庭階と鼓室階の断面積はほぼ同じだが、

中央階の断面積は前庭階や鼓室階より小さい

 

前庭階と鼓室階は蝸牛頂の蝸牛孔で連続しており、

何れも外リンパが充満している。

 

前庭階と鼓室階はクモ膜下腔と連続しているので、

外リンパは脳脊髄液とほぼ同一となり、

ナトリウム濃度が高く、カリウム濃度が低い。

 

一方、中央階は内リンパが充満している。

内リンパはカリウム濃度が高く、ナトリウム濃度が低い。

 

外リンパと内リンパの組成が異なることが、

感覚受容器(有毛細胞)が電気信号を発生させることと関係する。

 

中央階(scala media)の内部にコルチ器官(organ of Corti)があり、

コルチ器官に有毛細胞(hair cell)がある。

 

有毛細胞は、外有毛細胞と内有毛細胞の2種類がある。

 

コルチ器官の構造は複雑なのでその詳細は省略する。

 

有毛細胞が感覚受容器であり、

音の振動に反応して神経インパルスを発生する。

 

蝸牛は、前庭窓(卵円窓)と蝸牛窓(正円窓)という2つの窓で

鼓室とつながっている。

 

前庭窓(卵円窓)は前提階の開口部であり、

蝸牛窓(正円窓)は鼓室階の開口部となる。

 

前庭窓(卵円窓)が音の入り口となり、

蝸牛窓(正円窓)が音の出口となる。

 

ちなみに次のブログ記事では正円窓という用語が登場します。


(3)蝸牛の機能、音が伝達するしくみ

 

 蝸牛の卵円窓の振動により、蝸牛の前庭階に外リンパが振動する。


外リンパは液体なので、気体と異なって圧縮されない。


卵円窓が内側に向かって膨れると、前庭階の外リンパが内部に押される。


卵円窓が外側に向かって膨れると、前庭階の外リンパの外側に押される。

 

外リンパの振動が前庭階の入り口(卵円窓)から

渦を巻いて蝸牛頂部に伝わり、

蝸牛頂部から鼓室階に伝わり渦を巻いて正円窓に伝わる。

 

前庭階の外リンパの振動は、

前庭階と中央階を仕切る基底膜を振動させる。

 

基底膜の振動はさらに

基底膜上にあるコルチ器官の有毛細胞を振動させる。
 

すると、有毛細胞が振動を電気信号に変換する。

 

音刺激により内耳および内耳周辺では刺激音を忠実に再現する

蝸牛マイクロホン電位が発生する。


この電位は音圧に比例して増大し、

音刺激に対して特別な閾値を示さない。


蝸牛器官で記録されるマイクロホン電位

有毛細胞の頂部で極性が変化する。

 

蝸牛器官で記録されるマイクロホン電位については、

次の記事で言及する予定です。

 

長くなったので、ここで切り上げます。

 

有毛細胞は内有毛細胞と外有毛細胞の2種類があり、

その機能が異なっているのですが、そのような詳細は省略しています。

 

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