音とマイクロ波(1)
 
 まず、音が聞こえるしくみについて簡単に説明し、
次に、マイクロ波が聞こえるしくみについて簡単に説明します。
 
音が聞こえるしくみ;初級
 
 音は耳から聞こえます。耳は外耳、中耳、内耳に分かれているのですが、音は外耳、中耳、内耳と伝わっていきます。
 
図に表わすと次のようになります。
 
 
音の伝わり方
 
音→外耳(耳の穴)→中耳(鼓膜)→内耳→脳
 
 
マイクロ波が聞こえるしくみ;初級
 
 これに対して、マイクロ波は外耳、中耳を飛ばして、内耳に伝わります。もっとも、マイクロ波が直接、内耳に伝わるのでなく、その途中のプロセスがあります。マイクロ波が内耳に伝わるしくみは難しくなるので、省略しているのです。
 
マイクロ波の伝わり方
 
マイクロ波→(省略)→内耳→脳
 

 
 次に、一段階、難しくして、音やマイクロ波が
内耳に伝わるしくみまで説明します。
 
音が聞こえるしくみ;中級
 
 マイクロ波が聞こえるしくみとの関係では、内耳の蝸牛が振動すると音が聞こえるというところがポイントになります。図を参照ください。
 
音の伝わり方
 
空気の振動→鼓膜の振動→耳小骨の振動→蝸牛の振動→電気信号の発生



 
 今回は、空気、中耳(鼓膜)、内耳(蝸牛)の機能、役割を中心に説明します。

 音は空気の振動であり、空気の振動が順次、伝わっていきます。まず、空気の振動がその近くの空気に伝わって振動し、更に近くの空気に伝わって振動するというのを繰り返しています。
 空気の振動が耳の穴から鼓膜に伝わり、鼓膜が振動します。
 鼓膜と骨小骨は互いに接触しているので、鼓膜の振動が耳小骨に伝わって耳小骨が振動します。
 耳小骨は内耳の蝸牛に接触しているので、耳小骨の振動が内耳の蝸牛に伝わって、内耳の蝸牛が振動します。
 内耳の蝸牛が振動すると電気信号が発生します。この電気信号が聴覚神経を経由して脳の聴覚中枢に伝わります。
 聴覚中枢は大脳皮質にあります。聴覚中枢に電気信号が発生すると音を認識します。


 ここで、内耳は蝸牛という器官と前庭という器官に分かれています。とはいっても、内耳そのものは蝸牛と前庭が連続して一体化した骨で形成されており、内部にリンパ液が満たされています。

 蝸牛はカタツムリのような渦巻の形状をしています。渦を巻いている管の内部は、三つの部分に分かれており、個々の部分の内部にリンパ液が満たされています。蝸牛内部のリンパ液が振動すると、蝸牛が電気信号を発生します。

 なお、蝸牛の内部構造は大胆に省略しており、実際はもっと複雑です。
 
マイクロ波が聞こえるしくみ;中級
 
 通常の音では、鼓膜及び耳小骨が内耳の蝸牛に振動を伝えるのに対して、マイクロ波では、頭部組織、特に頭部組織に含まれる水が内耳の蝸牛に振動を伝えます。
 
図を参照ください。
 
 
マイクロ波の伝わり方
 
 
マイクロ波→頭部組織の振動→蝸牛の振動→電気信号の発生
 
 
 
 頭部は細胞で構成されています。個々の細胞の内部は水分で満たされているし、細胞と細胞の間にも水分があります。細胞と細胞の間の水分の一例は血液になります。脳内部の80%前後は水になります。
 マイクロ波が頭部に照射されると、細胞の内部にある水分(専門用語で細胞内液という)や細胞と細胞の間にある水分(専門用語で細胞外液)が振動するのです。
 そして、この振動が内耳の蝸牛に伝わり、蝸牛が振動します。そして、蝸牛が電気信号を発生して、脳内にある聴覚中枢に伝わり、音を認識します。
 通常の音では、鼓膜とか耳小骨という固体が蝸牛に振動を伝えています。これに対して、マイクロ波では頭部の内部にある水が蝸牛に振動を伝えています。
 
音、マイクロ波が聞こえるしくみ;上級
 
 音は空気の振動と説明しましたが、物理学や音響学では、音についてもっと難しく表現しています。
 高校の物理で波について勉強したでしょうが、音は波の一種になります。媒質が波とか振動を伝えるのですが、音は空気が振動を伝えます。要するに、空気が媒質となります。
 波は縦波と横波がありますが、音を波として表現すると空気を媒質とする縦波になります。
 物理的には様々な波の種類がありますが、音は音響波(acoustic wave)の一種となります。音を音響波という概念に一般化した場合、媒質は空気のような気体に限られず、液体や固体も媒質となります。

 さて、音は空気の振動と簡単に説明しましたが、難しく言うと、音は、空気を媒質とする音響波ということになります。そして、音が聞こえるしくみとの関係では、音響波の媒質が最初は空気だったのですが、鼓膜の振動により、耳小骨という固体を媒質とする音響波に変換されたのです。耳小骨を媒質とする音響波が、更に、蝸牛内部のリンパ液という液体を媒質とする音響波に変換されます。

 また、人間に聞こえる音は可聴音といい、一定の範囲の周波数の音が聞こえます。一方、空気が振動する周波数が高すぎても低すぎても人間に聞こえなくなります。このように超音波も低周波も音響波に含まれます。

言葉遊び?

 通常の音では、耳小骨という固体が蝸牛に振動を伝えています。これに対して、マイクロ波では頭部の内部にある水が蝸牛に振動を伝えています。
 
 専門用語を使って同じ内容を難しく表現すると下記のようになります。
 
 音刺激では、耳小骨という媒質を経由して、蝸牛に音響波が伝搬するのに対して、マイクロ波刺激では、細胞内液及び細胞外液を媒質として、蝸牛に音響波が伝搬する。
 
 半分、言葉遊びですね。
 
 マイクロ波を頭部に照射すると、頭部組織が振動すると表現してもよいし、難しく「細胞内液及び細胞外液を媒質とする音響波」が発生すると表現してもよいのです。

 「頭部組織の振動」とか「細胞内液及び細胞外液を媒質とする音響波」と表現する代わりに、別個の専門用語を使って表現することもできます。このような言い換えが多ければ多いほど、専門知識がない人にはチンプンカンプンになります。

 頭部組織の振動は圧力波と表現してもよいし、圧力変動と表現することもできます。
 あるいは、頭部組織の振動は、弾性波と表現することもできます。弾性波は弾性体を媒質とする波です。頭部組織が弾性体として機能しているのです。弾性波の例示としては地震になります。地震では地表が弾性体となって縦波及び横波が伝わります。

 ちなみに、マイクロ波聴覚効果の引用文献には、
音響波、圧力変動、圧力波、弾性波という用語が登場します。
 
 
備考
若干、編集しました。

内容はほとんど同じです。