外交政策が米大統領選挙の新たな緊急課題となってきた。イスラム世界で暴動が再燃し、共和党大統領候補のミット・ロムニー氏がオバマ政権の同地域への対応に対する批判を強めるなか、オバマ大統領は国連総会での演説の準備を進めている。
 25日に予定されている国連総会での演説で、オバマ大統領は反米活動を誘発した反イスラム映画を強く非難することになる。大統領補佐官が明らかにした。リビアの暴動では米領事館が襲撃され、駐リビア米大使のクリストファー・スティーブンス氏を含む4人の米国人が死亡した。しかし国連でのオバマ氏の演説に詳しい筋によると、オバマ氏はキリスト教徒やユダヤ教徒に対する中傷を非難し、同地域の重要性も強調するという。
 オバマ氏は演説で、イランが核兵器を手に入れないよう武力行使を視野に入れた対策を引き続き講じるとの立場を再確認するほか、シリアの内紛と頓挫中の中東和平プロセスについても言及する予定だ。
 ロムニー氏は24日、オバマ氏が中東での暴動を軽視していると批判、米国はより強いリーダーシップを発揮し、海外でもっと多くの行動をとる必要があると述べた。
 23日に放映されたインタビュー番組でオバマ氏は、「アラブの春」が起こった際に米国が民主化運動と連携したのは正しかったが、「道にはデコボコがあるだろう」と発言したことに、ロムニー氏は集中砲火を浴びせた。

 「中東の発展を“道のデコボコ”と表現した(オバマ氏の)認識は、私の見方とはかなり異なる」とロムニー氏はABCニュースに述べた。

 ロムニー氏はイスラム世界での暴動とイランの核兵器開発、またシリアの内紛について、オバマ氏を非難した。「われわれは中東で行動するのではなく、事件になすがままになっている」と、ロムニー氏は述べた。
 ロムニー氏はまた、オバマ氏は「デコボコ」発言のなかで、4人の米国人が死亡する原因となった暴力について特に言及したと示唆した。ロムニー氏はコロラド州プエブロでの遊説先で「これは道のデコボコではない。人間の命だ」と述べた。
 オバマ氏の補佐官らは、オバマ氏は中東地域が変化を遂げていく過程では困難が伴うことを意味したのだと述べ、その中には米大使館で起こった反米活動を含む、ここ数週間の暴動なども含まれるとした。ホワイトハウスのジェイ・カーニー報道官は、オバマ氏は米国人4人の死亡について「絶望的で侮辱的」だと述べているとした。
 両候補者の攻撃は、世論調査がオバマ氏の外交政策でのリーダーシップに対する国民の目が厳しくなっていることを示唆するなかでおこっている。中東と北アフリカでの暴動が激しくなった9月12~16日にウォール・ストリート・ジャーナルとNBCニュースが行った最新の世論調査によると、大統領の外交政策を支持する人の割合が支持しない人を上回り、49%対46%となった。
 しかしこの数字は54%の人が支持し、40%の人が支持しないとした8月の数値から急落している。
 外交政策に対する支持率の低下は特に、支持政党のない有権者の間で深刻だ。8月の調査で、支持政党のない有権者は大統領の外交政策を支持するとした人の割合が、支持しない人よりはるかに多く53%対38%だった。ひと月後、これらの支持しない人の割合は支持する人の割合を10ポイント上回り、51%対41%となった。
 同じ9月の調査で、最高司令官としてどちらが優れていると思うかとの質問で、オバマ氏はロムニー氏を上回り45%対38%となった。
 オバマ氏の補佐官らは国連総会が同氏を大統領然として見せてくれる機会であり、最近になって政治の舞台で目立つようになった外交問題をその文脈に組み入れる機会ととらえている。
 オバマ氏は反米活動を誘発したと非難される反イスラム映画に対する反応として暴力は受け入れ難いものであり、米国は中東地域でのプレゼンスや、民主主義の価値を広めるという目的を縮小したりしないと国連総会で発言する予定。ロムニー氏は反米抗議活動への初期の対応でオバマ政権が映画を批判して表現の自由という原則を放棄したと非難していた。
 オバマ氏はニューヨークに24時間滞在するが、その第一の目的は無事に過ごすことだ。これまでの国連総会への出席と違い、オバマ氏は世界各国のどのリーダーとも会談の予定はない。昨年は12を越える首脳会談があった。
反米活動が中近東、東南アジアで起きて死者まで発生したことが、オバマ大統領の支持率に影響を与えている。