高校生のとき、ビクトール・E・フランクルが著者の「夜と霧」を読んだ。
第二次世界大戦中、ナチスドイツが、ポーランドにアウシュビッツなどの強制収容所を設立し、多くのユダヤ人をガス室で毒殺した。
ガス室で毒殺された死体を運び出すことを担当している囚人が、
しばらくするとガス室で毒殺される順番になるというような描写が普通にある。
精神分析を専門とするユダヤ人心理学者が、強制収容所における過酷な体験をまとめたものである。
看守は日常的にユダヤ人を虐待し、人体実験、拷問まである世界である。
「夜と霧」を読んで、衝撃が走ったことを今でも覚えている。
あまりに残酷なので、18才未満は読まない方がよい。
米国に留学中、同じ本と気付かず、「夜と霧」の英語版を購入した。
英語版と日本語版では、本の題名(title)が全く異なる。
英語版のタイトルは、"Man's Search for Meaning"
強制収容所で過酷な日々を送りながら、生きる意味、人生の意味を考察しつつ、強制収容所で人間性が破壊されていく人間心理を観察する記録になっている。
著者のフランケルは、ロゴセラピーを提唱している。ロゴセラピーは生きる意味を探求するものであり、強制収容所のようなみじめな状況であっても、生きる意味があるというものである。
英語版と日本語版の旧訳では印象が異なっていた。
日本語版と比べて、英語版は著者のメッセージが明確であり、
読者に希望を与えるものであった。
ちなみに、仕事が順調であり、休暇中は観光地に家族、友人、又は恋人と旅行に行き、好きな音楽を聞いて、余暇に趣味を楽しみ、預金通帳残高を見て笑みが自然と浮かぶ人は、生きる意味、人生の意味などを考察することなく、人生を謳歌している。