夜空の道標として古来より親しまれてきた北極星は、天の北極付近に位置し、常に真北を示しています。北極星の仰角が観測地の緯度とほぼ一致するという幾何学的な性質は、かつて大洋を航海する人々が自己の緯度を計測するための不可欠な指針でした。

 

北極星は「こぐま座」の一部ですが、これを見つける鍵となるのは「おおぐま座」の一部である北斗七星です。北斗七星の先端にある二つの星を結び、その間隔を約5倍に延ばした先に北極星が位置しています。

 

こうした星座の概念は、ギリシャ神話などの西洋文化を反映した体系となっているのですが、星座を構成する星同士に物理的な関わりがあるわけではありません。つまり、星座は人間が引いた仮想の線であり、自然科学としての強固な基盤を持つものではありません。

 

これに対して、化学結合は電子の相互作用という物理的実体に基づいた、純然たる自然科学の領域です。

 

離散的な「線」の理解

 

私たちが有機化合物を理解する初歩的な概念として、共有結合を単結合、二重結合、三重結合として把握いたします。電子対を1、2、3と数える離散モデルは非常に明確で分かりやすく、分子の骨格を直感的に理解することができます。

 

連続的な「分布」の実態

 

しかし、量子論に踏み込むと、景色は一変します。電子には波動性があるため、分子中の電子は特定の点に留まることはありません。分子に対応する3次元ユークリッド空間に電子の存在密度分布(電子雲)が連続的かつ滑らかに広がっています。

 

連続的で滑らかに変化する確率分布という捉え方は、分子中の電子の実態に即している一方、離散モデルに慣れた目には、まるで霧や霞のように曖昧模糊としたものに映るかもしれません。

 

星座で描かれる線は、文化的な想像力が根拠となるのに対して、共有結合で描かれる横線は、電子の存在確率分布という自然の真理が基盤となっています。