竜潜の満月 | でるでるッゼルダの伝説ッ♪

でるでるッゼルダの伝説ッ♪

ちまらんブログです(´∀`∩
時間の空いている限りみてやってくだされ。

少年は何かを思い立ったかのように突然家を飛び出した。


街の冬の夜道は人々が歩くところ以外は真っ白で、歩けば歩くほど少年を孤独にさせていた。


揺れる木々に嘲笑われ、野良犬に蔑まれ、夜空の星は最後の一つが今にも消滅しそうだった。


風は少年の胸を貫き、希望や好奇心を攫っていく。


暗闇を求めて歩いた。


気付けば家の灯りも遠くにある。


「なんで僕は生きているのか。」


少年はその意味を考えること自体に意味がないことは知っていた。


「生きていいのなら、本当の居場所はどこであろうか。」


フラワリュー・ジェルマンという名の少年は小声で呟いた。







ある小さな街のひとりの科学者はその夜、友人の家を訪れた。


玄関の鍵は開いており、灯りのついたその家には友人の姿はなかった。







ある街では当時の医学ではどうしようも手がつけられない流行病があった。


3年間も続いたその病に人々は生きる気力を失くしていた。


しかし、病が流行してから3年目の冬、その街に突然姿を現した救世主がいた。


高度な科学で街を救ったその科学者はノガード・ロッシャーと名乗り、今では街の人々から親しまれている。








少年の目はもう光を捉えることすらできなくなっていた。


遠くから声が聞こえた。


「…フラワー!フラワー!」


少年をそう呼ぶのは、この街では小さな子供たちと友人だけである。


ノガードは息を切らせて暗闇の森へと走り出した。


ぼやけた感覚で微かに聞こえたその声に少年の目は少し反応した。









ノガードとフラワリューが知り合ってからはちょうど4年になる。


その小さな街で育ったフラワリューがちょうど16歳になった頃、ノガードはこの街に現れた。


当時ノガードは30歳の大人であったが、街を救った彼の魅力にひかれたフラワリューは誰よりも彼と親しむようになった。


フラワリューが抱えていた流行病を治してくれた恩人でもあり、治療が間に合わなく両親を流行病で失ったフラワリューの父親代わりでもあった。








「…ワー!フラワー!」


次第に大きくなる声に少年も我に返り向かっていった。


「なんでここにいると分かったの?」


「…ハァ…お前が何か悩んでいるとき、ここに行く姿をよく見ていた。」


「バレてたんだね。僕もうずっとここにいる…心も記憶も冷え切るまで。」


「バカ言うな!さ、はやく戻って暖まろう。」


「ねぇ!」


突然の大声に驚いた鳥たちは暗闇へ羽ばたいた。


「知ってるんでしょ。僕がみんなと一緒じゃないってこと。」


「…。」


静かな暗闇のなかに沈黙が響いた。


最後の星はいつの間にか消えていた。


「この様子だと明日は満月だね。」


少年は木の陰から月を眺めて言った。


「俺が必ず治してみせる。研究も進んでるんだ。」


「もういいよ。そんなことは無理だってことも知ってる…。」


「でもさ、あと少し時間をかけ…」


「いいんだ!僕、もうやりたいことなんてないから。」


少年はノガードがさしのばす手を強く払った。







確かに、少年を救う為のノガードのその研究は4年間も行き詰っており、前に進む気配がなかった。







この街には不思議な噂がある。


『満月の夜になると、子供が狼に変身してしまう。だから満月の夜は子供は外出させてはならない―。』


子供を夜遊びさせない戒めであっても少々大袈裟である。


その中、その噂を真実と知る者はただ一人、ノガードのみであった。


そして、この街に残る、狼に変身する子供はフラワリューただ一人であった。







少年は、噂が4年前から流れて以来自分が満月の夜に記憶を失くすことを知っていた。


少年は薄々感付いており、そのせいか友達とも仲良くすることができなくなった。


ノガードと親しむようになってから、少年の味方はノガードだけになった。


孤独になったのは自分のせいであるし、命の恩人であるノガードを恨むことは一切無かった。







「とにかく、今日はうちに帰ろう。」


ノガードは少年の手を引っ張り、家へ帰した。










翌朝、少年の横でうたた寝をしていたノガードが目を覚ますと、少年は消えていた。










1日中探しても見つからず、昨日の場所にも少年はいなかった。


時刻は夕方、冬の空はすっかり暗闇になっていた。


ノガードは街中を何度も何度も探し回った。


もう、フラワーはいなくなってしまったのか。


そう考えると心がすっかり空しくなる。


ノガードはとぼとぼ自分の研究室へ戻った。


すると、そこに少年の姿があった。


「フラワー!よかった!無事で!」


「うん…最後にお礼を言いたくって戻ってきちゃった…」


「お礼…?何言ってんだよ!今夜はここに泊っていけ。早く寝よう、な。」


「僕の為に研究を頑張ってきてくれてありがとう。僕、ノガードさんのこと忘れない。」


「な、何言ってんだよ…まだ治療は終わって無いじゃんか…」


「もう、終わったんだ…僕は僕のあるべき姿で生きる。」


「お前は…人間だ。分かってるだろ…。」


「分かってるよ。その傷は僕が付けたってこともね。」


少年はノガードの頬から顎まである大きな引掻き傷を指して言った。


「これは事故だって言ったろ!」


「分かってるよ。僕はここでは暮らせないってことも。…分かってるよ。だから、最後に伝えたかった。ありがとう!」


少年は暗闇の森へ駆けだした。


「フラワー!」


ノガードも後を追い、森へと向かった。


夜空には綺麗な満月が昇っていた。


満月は星たちの光を呑み込んでいた。








森へ到着したひとりの科学者の前に一匹の狼が現れた。


科学者は狼を取り押さえようとしたが、狼の圧倒的な速さに負けてしまった。


その科学者は「これまでか…」と思ったような顔をして、狼に液体を浴びせた。


それは怪しく光る液体の薬品であった。


ジュワジュワと肉の焼けるような音がして、もくもくと上がる湯気で狼の姿は見えなくなった。








次の日の朝




街の外れの森の中、木漏れ日で目覚めた少年は、霞む目を擦り、身体がなぜ焼け焦げているのだろうと思いながらも、疲れきって重たくなった足を引きずり自宅へと向かった。








少年は机に置いてあった紙切れに文字があるのを読んだ。




『竜潜の満月に光あらば闇あり。


竜、時に人々救えどもその姿豹変す。』








その街の図書館の古い伝記にこんな物語がある。




―むかしむかし、とある村が不治の病に侵されてどうしようもなくなったとき、満月の夜に竜が現れ村人の姿を動物に変えてしまったという。


それ以来その村人たちは、満月の夜になると動物に豹変し、お互いを傷付け合ってしまう。


たが、それ以外の日常では人間の姿で不自由なく暮らし、不治の病も治っていたという。










紙切れの字を眺めた後、少年は安堵したように頬笑み、大きく深呼吸し眠りへとついた。









この街にはもう、ノガードという名を知る者は誰一人いなかった。






















──────────────


今日満月だったので小説風に書いてみました。


竜潜ってのは『11月』の異称です。


最初は現実味のあるやつ書こうとしたんだけど、


まあ寒いし雰囲気的に秋じゃなくて冬にしてしまった。


ちなみに登場人物の名前…ry (分かった人はコメントまでw)






ご精読ありがとう御座いました。