4.『浮遊霊ブラジル』読了
津村記久子さんの『浮遊霊ブラジル』読了しました。津村記久子さん作品、7作品目の読了となりました。どの短編も良かったのですが、川端康成文学賞を取られた「給水塔と亀」がこんなにも短い短編だったとは意外でした。男性目線のお話は、私の読書順序からいって珍しく、新しく感じました。「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」は、お話のその先が気になったのですが、主人公の気の弱さでこれ以上の希望はないのだなと残念に思いました。読む前は題名なんだそれ、って思っていましたが、読んだ後は題名がそのまますぎ~って思いました。自分の感情の変化に単純に笑いました。「アイトール・ベラスコの新しい妻」は、地球の反対側で奇しくも似た状態に置かれた家庭があって、過去に行ってそれぞれの登場人物の人となりを見て、現代に帰ってまた地球の表側と裏側を見て、因果応報というか、すっきりではないけれど納得した気分になりました。綾(図書館に返却してしまったので手元に本がなく、間違えていたらすみません)の性格が潔くて、自分の行動に罪悪感はなくとも悪い事をしているという意識はあって、この人はこの人で別の誰かからしたらいい人なんだろうなと思いました。友達には、していただけないだろうけど。続く「地獄」もよかったな~「アイトール・ベラスコ・・・」とこの「地獄」が短編集の中で好みでした。地獄に行っても続く友情、最高です。地獄の種類、私だったらどうなるんだろうな~ぐうたらしすぎ地獄かな・・・睡眠を取らせてもらえない地獄とかあったら耐えられないかも。「運命」は・・・これまた不思議な夢の中の出来事のような話でした。でも確かに、よく道を尋ねられる人がいる一方で、全く道を尋ねられない人生を歩んできた人もいて、逆に、道を尋ねまくる人もいるのだろうな・・・多分どれも人生の中で公平にしたりされたりされなかったりする訳ではなく、「尋ねやすい」という特徴を持った宿命とも言うべき運命を全うしてくれているのだろうと思いました。私は道を尋ねられないタイプだと思います(単にぼやぼやしているから)。ですが、路上での宗教押しつけには何度かあったことがあるので、そういう目的のターゲットにはしやすそうな見た目をしているのかなと思います。「個性」はGWを挟んで緑髪から黒髪にした女子大生と、顔認識がうまくできない男子学生の夏期講習数日間の物語。主人公はこの二人の様子を観察していて、それぞれに入れ知恵(?)するんだけど、返ってくるのはあいまいな反応。ちょっとやきもきしてしまうおばさん癖が出てしまった。主人公のほうがよっぽど大人。笑「浮遊霊ブラジル」は耳から耳へ、アイルランドのアラン諸島を目指す。「地獄」に続く主人公死者設定。死んでなお不自由はつらい。死後は愉しく暮らしたい。けど未練を持ってこの世を浮遊するのも悪くない、かもしれない。成仏上等。