特許、実用試案、意匠、商標の知的財産のうち、一番大事なのはどれかと問われれば、前提条件により異なるかも知れないが、商標と答えることにしている。

 

 それは何故か?

 先使用権の視点からである。

 
 商標の先使用権は、他人の商標登録出願前から不正競争の目的ではなく使用をしていた結果、商標登録出願の際、需要者の間に広く認識されていた場合に認められる(商標法第32条)。


 しかし、「商標登録出願の際、需要者の間に広く認識されていた」事実を立証するのは難しく、先使用権の主張はなかなか認められていないのが実情である。


 商標に対し、特許・実用新案・意匠の場合、先使用権は、他者がした特許出願(実用新案登録出願、意匠登録出願)の時点で、その特許出願に係る発明(実用新案登録出願に係る考案、意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠)の実施である事業やその事業の準備をしていた者に認められる(特許法第79条、実用新案法第26条、意匠法第29条)。


 立証困難な周知性は商標のみに要求される。


 したがって、もし未登録のまま使用している商標があるならば、直ちに商標登録出願をして商標権を確保しておくほうがよい。


 お金の面から考えると、商標権取得のほうが先使用権を認めてもらうよりもはるかに安くて済む。


 先使用権を主張するのは、通常、権利侵害として訴えられた裁判で、抗弁としてではあるが、権利化のための費用よりも高額の弁護士・弁理士費用がかかる。

 

 繰り返すが、商標をあまり軽く考えないほうがいい。