意匠は魅力がないのか


 前回のブログで 「デザイン経営」って何だ を書いた。
 https://ameblo.jp/patanze/entry-12463561585.html

 2018年5月23日 経済産業省・特許庁 「デザイン経営」宣言 の内容が今一分からなかったと、デザインでイノベーションを起こすなんてとても無理ではないかというのが理由である。


 しかし、そこで片付けるのはいかがなものか?


 意匠について再度考えてみた。


 例えば、「我が国の意匠登録制度の役割 2017年11月2日 特許庁」 https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sangi/sangyo_design/pdf/005_02_00.pdf によると、美しい意匠の保護は、技術保護の補完とブランドの形成につながると、謳っているじゃないのか?


 これは以下の、特許法、実用新案法、商標法の規定をベースにしたもので、決していいかげんなことを謳っているわけではない。
 ちゃんと根拠があるということ。


 特許法第72条(他人の特許発明等との関係)では、特許発明が先行する他人の登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するとき、又は特許権が先行する他人の意匠権と抵触するときは、業として特許発明を実施することが出来ない旨を規定(いいかげんに省略してあるので条文参照)。


 実用新案法第17条(他人の登録実用新案等との関係)では、登録実用新案が先行する他人の登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するとき、又は実用新案権が先行する他人の意匠権と抵触するときは、業として登録実用新案を実施することが出来ない旨を規定(いいかげんに省略してあるので条文参照)。


 商標法第29条(他人の特許権等との関係)では、指定商品などでの登録商標の使用がその使用態様により先行する他人の意匠権と抵触するとき、抵触部分について登録商標の使用が出来ない旨を規定(いいかげんに省略してあるので条文参照)。


 これらの規定から、取り敢えず意匠で保護しておけば、後から他人が特許権や商標権を取得してもその実施や使用を制限できる。


 そう考えると、意匠はコストをかけない知的財産戦略手段として使える。

 

 じゃあ意匠制度の利用状況はどうなの。

 

 

 まずデータをあたってみよう。


 意匠登録出願について、 特許庁ステータスレポート2019(https://www.jpo.go.jp/resources/report/statusreport/2019/index.html)の 第1章 我が国の知財動向 に意匠登録出願件数の推移(2009年から2018年までのデータ)を示すグラフをみると、意匠登録出願件数が30,000件台で推移し、増えもしなければ減りもしない。

 

 

では、意匠登録件数の推移はどうなんだろう。これもほぼ横ばい状態である。

 


 では、他の国(5庁 中国、米国、EP等)と比較したらどうなんだろう。

 同じ特許庁ステータスレポート2019の 第2章 世界の知財動向 に、世界の知財動向に意匠五庁(ID5)の意匠登録出願件数の推移(2008年から2017年までのデータ)を示すグラフがあるが、同グラフをみると、中国(中国の件数は右軸で示す)を別にすれば、日本、米国よりは少ないもののEPとほぼ同じである。

 ただ、日本、30,000件台で推移し、増えもしなければ減りもしないのに対し、米国、EPは増加傾向にある。

 

 

意匠登録件数の推移は

 

 

 中国を別にすれば、国際的にみてそれほどオカシイとは思わない。

 

 まあ、こんなものでしょう。

 

 別段騒ぐ必要はないのかも。

 

 ちなみに、五庁(ID5)の特許出願件数の推移(2008年から2017年までのデータ)は

 

 

 また、特許登録件数の推移は