訂正の再抗弁のタイミングについて
なぜ今頃このタイミングで「訂正の再抗弁のタイミングについて」をブログにしたかというと、単なる備忘録としてと尤もらしいことをいうが、実は気になることがあったからである。
昨年(2017年)の12月06日、弁理士会研修「「シートカッター事件」最高裁判決から学ぶ訂正の再抗弁主張のタイミング」に出席した。
講師の弁護士・弁理士 弓削田 博 先生、最高裁判決 平成28年(受)第632号 シートカッター求事件について、平成18年(受)第1772号 ナイフの加工装置事件、平成25年(ネ)第10090号 共焦点分光分析事件などを参照しつつ解説を行い、最後に訂正の再抗弁のタイミングとして
① 第1審判決で無効理由の主張が採用された場合には、控訴審の早い時期
② 訂正審判請求等と同時又は遅滞のない時期
③ 法律上訂正審判請求などができない場合には、対応すべき適切な時期
を挙げていた。
①、②の場合、確かにそう思うけど、③の場合がいまいち分からなかった。
少なくとも第一審又は控訴審の事実審で訂正の再抗弁を行う必要があることは分かるけれど、前提となる訂正審判請求などができない場合に「対応すべき適切な時期」とはどうゆうことなのか?
これについては、
例えば、
理系弁護士の何でもノート
弁護士・弁理士 岩永利彦 氏
最高裁平成28(受)632号(平成29年7月10日 判決)
2017/07/10
http://iwanagalaw.blog.shinobi.jp/%E6%9C%80%E9%AB%98%E8%A3%81/%E6%9C%80%E9%AB%98%E8%A3%81%E5%B9%B3%E6%88%9028-%E5%8F%97-632%E5%8F%B7%EF%BC%88%E5%B9%B3%E6%88%9029%E5%B9%B47%E6%9C%8810%E6%97%A5%20%E5%88%A4%E6%B1%BA%EF%BC%89
また、
外国出願のSK特許
弁理士 伊藤寛之 氏
【最高裁判決】上告審で初めてなされた訂正の再抗弁は認められない。
2017-07-24
http://skiplaw.blog101.fc2.com/blog-entry-867.html
また、
イノベンティア・リーガル・アップデート
事実審の口頭弁論終結後の訂正審決の確定を理由に事実審の判断を争う主張を退けた最高裁判決(シートカッター事件)について 弁護士 松下 外 氏
2017年7月17日
https://innoventier.com/archives/2017/07/3695
が参考になる。
上記最高裁判決では、「原審で新たに主張された本件無効の抗弁に係る無効理由とは別の無効理由に係る別件審決に対する審決取消訴訟が既に係属中であることから別件審決が確定していなかったためであるなどの前記1(5)の事情の下では,本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張するために現にこれらの請求をしている必要はないというべきであるから」といっている。
言い換えると(by弁護士松下外氏)、
「訂正審判請求等を妨げていたのは、別の無効理由に係る別件審決に対する審決取消訴訟が係属中で別件審決が確定していなかったためであって、本件無効の抗弁に関するものでなかったから、訂正の再抗弁を主張するのに訂正審判請求等を予め請求しておく必要はなかったとの判断」を示しているともいえる。
予め訂正審判請求等を請求しておかなくても、事実審の口頭弁論終結時までに取り敢えず訂正の再抗弁をしておけということ。
そうすると、弓削田博先生のいう法律上訂正審判請求などができない場合の「対応すべき適切な時期」とは事実審の口頭弁論終結に至るまでの間の適切な時期ということなのか。
当たり前のことで、何もブログにすることはなかったかもしれない。
平成28年(受)第632号 シートカッター求事件
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/898/086898_hanrei.pdf
平成18年(受)第1772号 ナイフの加工装置事件
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/309/036309_hanrei.pdf
平成25年(ネ)第10090号 共焦点分光分析事件
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/495/084495_hanrei.pdf