先日(2018年01月15日)の日本経済新聞朝刊11面の法務欄には、知財立国についての特集が組まれていた。


 何故かというと、2003年3月に知的財産基本法が施行され、内閣に知的財産戦略本部が設置されてからまもなく15年経過したが、成果はあったのかという問いである。

 

 知財立国は成ったか(上)「現状60点」電機救えず

 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25609900S8A110C1TCJ000/


 知財立国「まだ道半ば」 企業7割・弁護士8割 自社評価は甘め
 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25609970S8A110C1TCJ000/

 

 特集記事では、否定的な見解が多かったと、報じている。


 プロパテント政策を推進して15年経過しようとしているが、「現状60点」、企業法務7割・弁護士8割が「知財立国」になったと思わないとの回答が示すように、思わしくない結果で、効果なしということか。

 

 では、特許出願件数で日本を牽引してきた電機業界を奈落の底に突き落とした、韓国、台湾、中国はどうなのかというと、特許庁が発行するレポート類を読んでもこれといった知財戦略をとっているようには思えない???

 

 ただいえることは勢いが違うよということ。特に中国は。

 昨年12月6日のWIPOの発表によると
 China Tops Patent, Trademark, Design Filings in 2016
 http://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2017/article_0013.html

 

 Worldwide filings for patents, trademarks and industrial designs reached
record heights in 2016 amid soaring demand in China, which received more
patent applications than the combined total for the United States of America,
Japan, the Republic of Korea and the European Patent Office.


 中国1国で、米国、日本、韓国、EPの特許、商標、意匠の出願件数の合計を上回るということ。

 中国、出願件数は世界一である。

 特許出願件数についてみると、中国は前年比21.5%増の134万件で、6年連続の首位。

 では他の国は如何なのかというと、米国は2.7%増の61万件で2位、これに対し日本は0.1%減の32万件で3位。韓国は2.3%減の21万件で日本に続く。

 

 確かに、日本、国内の特許出願件数は減少の一途をたどっているけれど、海外出願件数や技術貿易収支についてはどうなの?

 これについては、知的財産戦略に関する基礎資料 参考3 2016年10月 内閣府知的財産戦略推進事務局 が参考になる。
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2017/dai1/sankou3.pdf


 海外出願件数は僅かではあるが増加傾向にある(上記基礎資料12頁参照)。

 技術貿易収支については黒字が年々拡大し、2014年度の収支額は3兆円を超える(上記基礎資料8頁参照)。

 


 これをみるとすごいと思うけれど、海外出願件数が微増傾向にあり、技術貿易収支黒字が年々拡大しているとはいえ、今後はどうなるか分からないよね。


 国内出願をせず、いきなり外国出願をするケースについては話しには聞くけど、それほど多くはないだろう。


 基本は国内出願と思うけれど、それが減少傾向にあるとするなら、技術貿易収支だって今後は楽観視出来ないであろう。

 


 話しが変わるが、2018年01月15日、弁理士会研修「ソフトウエア関連発明の特許主題適格性(米国特許法101条)米国最高裁・Alice事件(2014年)以降の判例を踏まえた明細書(クレームを含む)の作成」に出席した。


 講師である米国特許弁護士Mr.John P. Kong、開口一番、ソフトウエア関連発明について、101条で拒絶されたら、指摘された抽象的な個所を具体的な、例えばハードウエア的な表現(device or apparatus)に変えれば済むと、未だ信じているベテランの(?)弁理士がいると、皮肉っていた。

 

 Alice事件以来、今までの考え方とは大きく変わったことを肝に銘じろと、強調。


 巷では、Alice事件以来、米国ではソフトウエア関連発明の特許なんて取れないよ、と囁かれていたが、じゃどうすれば特許取得が可能になるかに興味があった。


 講義では、特許主題適格性の勝算を高める戦略について、CAFCの裁判例を参照しつつ解説があった。

 この解説中、Mr. Kongが強調していたことの一つに、「ミーンズ・ファンクション・クレーム(MPF)、101条には有効だよ、但し明細書には抽象的な表現から具体的な表現にレベルを変えて開示しておく必要がある」は、意外であった。

 MPFはなるべく使用しないようにと、いわれ続けてきたからである。

 そうなのか。

 説明を聞くと成るほどと、あまり理解もせずに思わず納得。


 余談であるが、Mr. Kong、新人時代、先輩特許弁護士からクレーム作成に際して守らないければならないルールがあると教えられたことについて言及した。
 それは、「Three fingers rule(三本の指で隠れるぐらいの短いクレームを書け)」であるが、こんなことは今時通用しないよ。

 確かにそう思う。

 「Three fingers rule」と聞いたとき、思わずほかのことを考えてしまった。

 それは、「Fleming's Right-hand Rule」です。

 「Two fingers rule」のことではありません。

 誤解のないように。

 まあ、 「Two fingers rule」もいろんな解釈があるけど。