昨日(2017年12月12日)の日本経済新聞朝刊 社会欄(42面)にタイトル「国立大の特許出願減 06年度から 負担増え絞り込みか」の記事が掲載されていた。

 同記事は、11日、文部科学技術・学術政策研究所がまとめた国立大学の特許動向の調査結果に基づいて書かれたものである。

 特許動向調査では1995年~2012年度のデータが使用され、2006年度をピークに特許出願件数が減少傾向にあるものの、質の高いものに出願を絞っている結果であり、研究力が低下しているとはいえないと分析している。

 

 ここで疑問に思ったのが、「研究力が低下しているとはいえない」と分析した根拠が明示されていないことである。

 そもそもであるが、出願件数と研究力との間に相関関係なんて存在するの?

 出願件数は研究力のファクターの一つになるの?

 等々である。

 また、分析に使用したデータが1995年~2012年度であるが、少し古くない?

 

 そこで、以下のデータを参照してみた。

 産学官連携データ集2016~2017 https://sangakukan.jp/top/databook_contents/2016/cover/2016-2017_databook_ALL.pdf 

 特許出願件数(平成19 ~ 27年度)の項目で
 大学等全体の特許出願件数は、平成20年度以降は9,000件前後で推移しており、平成27年度は8,817件となり前年度比で3.7%減少した。内訳では、国内出願が6,437件および外国出願が2,380件と共に減少しているが、公立大学等の国内・外国出願及び私立大学等の国内出願は増加している。


 国立、公立、私立大学を含めた総出願件数


 国立大学等の特許出願件数


 公立大学等の特許出願件数

 
 私立大学等の特許出願件数

 

 特許行政年次報告書2017年版の「大学等における知的財産活動」 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2017/honpen/0104.pdf 

 「特許出願件数の推移」の項目で、
 我が国の大学等からの特許出願件数を見ると、2004 年の国立大学法人化を境に急激に増加し、2005 年には7,000 件を超えた。その後、2007 年をピークに漸減傾向にあったが、2016年の特許出願件数は前年比3.7%増の7,223件であった。
 
 大学等からの特許出願件数の推移

 


 

 でも、特許出願件数は大幅に減少してわけではない。

 減少傾向にあるものの、研究力が低下していないとの根拠は結局不明。
 出願件数以外の別のファクターは?

 

 

 ところで、話は変わるけど、12月10日、NHKスペシャル「追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国日本」で指摘された、図表などの実験データの改竄、研究費獲得のためとはいえ、これこそ研究力の低下のあらわれではないのか?

 

 

 2017年12月14日 追加

 

 上記記事の日本経済新聞Web版は以下のURLから入手できる。
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2449344011122017000000/

 

 上記記事のベースになった、科学技術・学術政策研究所がまとめた「国立大学の研究者の発明に基づいた特許出願の網羅的調査[調査資料-266]」については以下のURLから入手できる。
 http://www.nistep.go.jp/archives/35126