本日の日本経済新聞朝刊第3面に「サントリー特許「無効」 ノンアル訴訟 地裁判決 アサヒ製品差し止め認めず」のタイトルの記事が掲載されていた。


 上記記事によると
 「ノンアルコールビールを巡る特許を侵害されたとして、サントリーホールディングス(HD)がアサヒビールにアサヒの主力商品「ドライゼロ」の製造や販売の差し止めを求めた訴訟の判決が29日、東京地裁であった。長谷川浩二裁判長は「特許の内容に進歩性はなく無効にされるべきだ」と判断し、サントリー側の請求を退けた。」


 東京地裁は、サントリー特許(特許第5382754号?)について、サントリー特許の成分(エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるビールテイスト飲料であって、pHが3.0以上4.5以下であり、糖質の含量が0.5g/100ml以下?)が既存製品に基づいて容易に発明することができるもので(進歩性が認められず)、特許無効審判により無効にされるべきものであるとして特許権者等の権利行使の制限を規定した特許法第104条の3を適用し、サントリーはその特許権を行使できないと判断した。


 これは、被告のアサヒ側が無効の抗弁をしてそれが認められたということである。


 本日の日本経済新聞朝刊の企業欄(第12面)の「特許巡る紛争、激化続く」には、進歩性を認めなかった理由について、編集委員の渋谷高弘氏の解説がある。


 それによると、原告であるサントリー側は、エキス成分、pH、糖質の3成分の数値限定の組み合わせに発明があると主張したものの、裁判所は、特許出願時の明細書にはこれら3成分間の相関性についての立証がないとして、組み合わせに進歩性を認めなかった。


 サントリー特許について、単に既存製品の複数の成分の数値を組み合わせたものに過ぎないものと判断。


 なお、数値限定特許(パラメータ特許)というと、発明の明確性要件(特許法第36条第6項第2号)違反、例えば、技術的意味が理解できず、発明の範囲も不明確であり、委任省令要件も満たさない、技術的意味は理解できるが、発明の範囲は不明確であり、委任省令要件も満たさない、などがよく主張されるが、今回は進歩性(特許法第29条第2項)である。


 原告のサントリー側は判決を不服として知財高裁に控訴する方針であると、報じていたが、どう展開するであろうか。