特許庁ホームページ新着情報欄に、産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会商標審査基準ワーキンググループの第12回「議事要旨」及び「配付資料」が掲載された(9月25日)。


 配布資料には、「標語、キャッチフレーズに関する商標審査基準について(案)」 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/t_mark_wg_new12shiryou/05.pdf  

が含まれている。


 

 実は、キャッチフレーズ等については、端から自他商品・自他役務の識別力を有しないものとして登録が認められず、例外として商号などが含まれている場合にのみ登録が認められる場合があると、考えていた。



 今回の審査基準の改訂案によると、

 商品又は役務の直接・具体的な宣伝・広告として認識され、出所識別標識として認識されない場合の基準を明らかにした上で、
 出願商標が下記に挙げる事項に該当する場合には、商品又は役務の直接・具体的な宣伝・広告ではなく、何人かの業務に係る商品又は役務であると認識させる事情として考慮するとしている。
 例えば、
 出願商標に商号等の自他商品・役務の識別機能を有する語が含まれる場合
 出願商標が自他商品・役務の識別機能を有する図形等と結合している場合
 出願人が出願商標を長期間使用している場合
 第三者が出願商標と同一又はそれに類する語を宣伝・広告として使用していない場合など。


 また、商品又は役務との直接的な関連性は弱いものの、企業の理想、方針等を表したものとして認識され、出所識別標識として認識されない場合の基準を明らかにした上で、
 出願商標が、例えば、下記に挙げる事項に該当する場合には、企業の理想、方針等としてのみならず、何人かの業務に係る商標又は役務であると認識させる事情として考慮するとしている。
 例えば、
 出願商標に商号等の自他商品・役務の識別機能を有する語が含まれる場合
 出願人が出願商標を長期間使用している場合
 第三者が出願商標と同一又はそれに類する語を企業の理想・方針等として使用していない場合など。


 キャッチフレーズ等が登録されるか否か(自他商品・役務の識別機能を有するか否か)の判断基準が一応明確になったので、キャッチフレーズの選定や出願をする際に参考になるのでは。


 また、審査段階で拒絶理由通知を受けたとき、意見書を提出する際に効果的な反論を書くのに役に立つのでは?


 新聞などによると、キャッチフレーズ等について、
「商標登録までの期間3分の1に(9月25日の日本経済新聞)」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS24H4D_U5A920C1PP8000/

「企業のフレーズ、商標登録しやすく(9月18日の朝日新聞)」
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20150918000057.html

センセーショナルに報じているが、審査基準を改訂した結果としてそのようになることは否定しないものの、あくまでも審査時においてキャッチフレーズが自他商品・役務の識別機能を有するか否かの判断基準を一応明確にしたことではないのかと思う。


 決して今回の改訂案で直ちに商標登録までの期間が短くなったり、商標登録を受けやすくなったりするものではないことに留意する必要がある。


 なお、今回の審査基準の改訂案とは別の話しであるが、キャッチフレーズそのものについて考えるのに参考となる論文がある。

 それは、他人の登録商標を無断でスローガンやキャッチフレーズとして使用する行為がいわゆる商標的使用に該当するかについてまとめた論文で、別冊パテント誌 Vol.62 No4(別冊No.1)に掲載されている。

 論文のタイトルは「キャッチフレーズと商標的使用」
http://jpaa.or.jp/about_us/organization/affiliation/chuuou/pdf/no25/705_03.pdf