平成26年11月12日のブログで、(ノウハウを)営業秘密により保護する場合の留意点として、先使用権を挙げ、
先使用権を主張する際において、自ら技術を発明していたこと,及び,発明の実施または準備していたことを証明する必要がある。
と書いた。
そこで、今回のブログでは、先使用権の主張について考えてみた。
先使用権の要件として、
要件1:「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をした者から知得したこと」
要件2:「特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をし、又はその事業の準備をしていること」
があるが、これら要件1,2を立証する必要がある。
例えば、自ら発明したことの立証方法として、
研究ノート(通称ラボノート)
議事録
実験報告書、技術成果報告書
発明提案書書
設計図、デザイン図、その他の図面
製品仕様書
がある。
また、事業の実施や準備をしていたことの立証方法とし、
事業計画書
見積書、発注書、契約書
請求書、納品書
原材料仕入記録簿、発注簿、受注簿、製品受払簿などの帳簿類
業務日誌、作業日誌、製造記録
運転マニュアル、作業標準書、検査マニュアル、保守点検基準書、製造工程図等
製品サンプル
カタログ、パンフレット
商品取扱説明書
がある。
これら書類を、技術の存在や内容を証明する際の証拠とするには、保有日付が付与された文書とすることが有効であり、これには
公証人役場による公証(確定日付の付与)
電子文書におけるタイムスタンプの付与
があるけれども、これらはあくまでも当該文書の保有日付を証明するだけであり、その内容の真偽を証明するものではない。
こうしてみてくると先使用権の主張には結構手間がかかる。
先使用権を主張しなければならないのは、例えば特許権侵害と訴えられた特許侵害訴訟の場面ではないのか。
特許権侵害訴訟において、抗弁として先使用権を主張するが、この場合、弁護士に依頼することが多い。
訴訟で先使用権の存在を立証するが、立証の困難性などを考えると、弁護士費用は結構高額になることが予想される。
巷で言われているのが最低でも200万から300万円である???
そうすると、ノウハウを営業秘密により保護し、仮にノウハウと同じ技術について特許権を取得した者から権利侵害として訴えられたとしても、先使用権を主張すれば対処できるとした手法は、現実的ではないような気がするが、どうだろう?
ノウハウを営業秘密としてしか保護できない場合を除いて特許権取得により保護する方が手間がかからず、費用も安く済むのでは?