「回想」 その34 | 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

東京都武蔵野市吉祥寺でアンティーク時計の修理、販売をしています。店内には時計修理工房を併設し、分解掃除のみならず、オリジナル時計製作や部品製作なども行っています。

 

修理の受付けを始めるようになってまず最初に預かったのは、常連さん達の時計だった。
 

実際のところ、以前から 「前から持ってる時計、直してもらえると有り難いんだけどなぁ」 などと言われていたのを、ずっとお断りし続けていた経緯があったのだ。
 

有難いことに皆さん色々と持って来てくれて、開始早々、それなりの仕事量になった。
 

そのうち修理を始めたことが口伝てに知れてくると、ポツポツながら新規のお客さんも来るようになり、、、時には 「修理品を持ち込みに来た方が時計を買ってしまう」 というアクシデント(?)も発生するように。

 

修理品の受け付けには、想定外の相乗効果もあったと言える。
 

 

 

一方で、商品の整備を極力岩田に任せ、主に催事の出店と修理品の仕事を掛け持ちするようになった私は、、、段々、催事に出店する時間を惜しむ気持ちが強くなってきた。
 

というのも、修理の仕事でそれなりの成果が出始めたのと反対に、、、催事の方は、百貨店にしろ骨董祭にしろどこも急激にかつての勢いを失ってきたのだ。
 

 

 

それまで数年来、巷に広がっていたアンティークブーム。
 

アンティークの催事をやりさえすれば人が集まりそれなりの売り上げが見込めるということで、「どこもかしこも催事だらけ」 になった時期があり、、特に都内など、いつもどこかの百貨店で催事をやっていると言ってもいいほどだった。
 

しかし考えてみれば、業者の数はさほど多いわけではない。
 

結局、先週まで高島屋で出店していた業者が今週は西武百貨店、その次の週はプランタン銀座、というような具合になる。

 

これはお客さんに関しても同様で、先週あっちの催事に来てくれた方が、今週はこっちにいらっしゃる。
 

つまり、お客さんは場所こそ違っても同じ 「目垢がついた品物」 を見続けることになるし、、、かといって四六時中催事に出店している業者は、そうそう買い付けに行って新しい商品を補充することができない。
 

自ずとどこの催事も新鮮味がなくなり、商いにもかつてのような活気がなくなったのだ。
 

 

 

幾人かの同業者がこの時期に廃業していったが、、、勿論、私にとっても、これは堪えた。
 

出店するのが1日~2日間の骨董祭などなら、結果が悪くてもまだ諦めがつく。
 

でも、2週間も通い続けた百貨店催事が貧果に終わったりすると、、、その時間的ロスは、計り知れない。
 

 

 

そんな訳で、それまで 「月々の支払いのために催事に出ないと」 だったのが、段々と 「これなら店で仕事をしてた方が良かった」 に変わり、、その思いは、修理のお客さんが増えるにつれて、強くなる。

 

その後、修理に専念すべく大半の催事は悦っちゃんに担当してもらうようにしたのだが、、、その彼女がニューヨークに語学留学することになったのを契機に、私は、長年お世話になったプランタン銀座のアンティークバザールを含む全ての催事を、辞退するようになったのだった。
 

 

 

(続く)

 

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