「招き猫」 | 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

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東京都武蔵野市吉祥寺でアンティーク時計の修理、販売をしています。店内には時計修理工房を併設し、分解掃除のみならず、オリジナル時計製作や部品製作なども行っています。



先日久しぶりに東村山の実家に帰った。


私の誕生日に両親が 「スキヤキ」 をご馳走してくれるというので、、、調子よく一家で押し掛けたのだ。


最後に来てから半年やそこらは経っているだろうか。


ちなみに実家は、今住んでいる西国分寺からたかだか二十分くらいのところにある。



まあ娘たちの面倒をみてもらったりすることもあり、両親と私はそれなりに顔を合わせているのだが、、、今回久しぶりに会ったネコの 「ミーちゃん」 の老いにはショックを受けた。


あちこち大きな毛玉だらけで、、、、皮と骨ばかりの痩せぎす。


ブラシを掛けてやろうとすれば激しく引っ掻くのは以前と変わらないから、、、結局そのままになっている。


元々両親、特にオヤジにはあまりなつかないネコだし、婆さんになった今では殆ど一日中決まった部屋の隅でじっとしているらしいが、、、私にだけはニャーニャー鳴きながら足元にすり寄ってくる可愛いヤツ。


というのもこの 「ミーちゃん」、、、そもそもは私が拾った猫なのだ。



それは、パスタイムの前身 「ジャンクヤード」 を開店したばかりの頃のある日のこと。


来る日も来る日も店の方は全く駄目で、、、いい加減気が滅入っていた。


そんなある夜、店を手伝っていた彼女(今のカミさん)と私の家に向かってトボトボ歩いていると、、、隣の公園の方から 「ニャーニャー」 とか細い鳴き声がする。 


声の方に近づいてみると、小さな池の脇の草の中にダンボールの箱が、、。


その中に入っていたのは、、、、本当にうまれたばかりの子猫だったのだ。



しかし、、どうしたものか。


かつて私の実家は戦後に建てられた古い平屋の都営住宅だったので、、、少年期の私は、そこいら中の捨て猫や捨て犬を構わず拾ってきては、みんな一緒に飼ってきた。


まあ両親からすれば、「拾ってくるだけ拾ってきて、面倒みているのはこっち」 ということになるが、、。


子供の頃の写真を見てみると、ボロボロの家の縁側に腰掛けている私の横で、デカイ犬と小さい犬の脇に猫が寝そべっていたりしていて、、、、動物だらけの状態だったのだ。


しかし、既にボロボロの都営は三階建ての団地に建て替わっていて、、、基本的に動物を飼ってはいけないことになっている。


そうかといってこのままにしておけば、、、間違いなく1~2日中には死んでしまうだろう。


結局私は両親の反対を押し切ることを前提に、その猫をうちに持ち帰ったのだ。



猫を連れて帰った私を見た両親は 「またか」 と言う顔はしたが、、、特に反対はしなかったように思う。


元々生き物は好きなのだ。


とりあえずダンボールに毛布を敷いてミルクを飲ませると、、、なんとか飲んだ。


手のひらに乗るほど小さいトラ猫だが、良く見ると可愛い顔をしている。


ひとしきりミルクを飲んだら毛布の中で寝てしまったが、、、何とか生きてはいけそうだった。



すると、、、すると、である。


どういう訳か、翌日から突如来客が増えだした。


それまでの不調が嘘のように、、、品物が売れ出したのだ。


普段、縁起や迷信の類を信じるタイプではない私だが、、、ミーちゃんはまさに 「招き猫」 になったようだった。 



あれから22年。


幾度かのピンチはありながら、、、それなりには広がりながら続いてきた今の店。


しかし、20台の若者だった私はもう50に届く歳になったし、子猫だったミーちゃんも22歳の婆さん猫になっている。


いつの間にそんな時間が経ってしまったのか、、全く信じられない思いだが。


今はひたすら、明らかに先の永くない彼女に感謝したい。


今まで本当に良くお客様を招いてくれた、と褒めてやりたい気持ちなのだ。 



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