それからというもの、私は 「TIFFANY自社製ムーブメントとされる時計」 を入手するたびに同様の申請を繰り返しており、、、非常に興味深い結果を得ている。
多くのものは 「パテックによる製品」 として認定を受けながら、、、全く同型の一部の時計に関しては 「我が社で製造したものではない」 という返事が返ってくるのだ。
しつこいようだが、これらのムーブメントはみなTIFFANYが当時発行したカタログで 「自社製ムーブメント」 と宣伝されているもので、、、明らかに後年に製造された 「Tiffany Patek」 や 「Tiffany Audemars」 等の時計の話しではない。
結論として、 「TIFFANYムーブメントには2つの製造者が存在する」 と言える。
一方は、1874年から78年の間、まさしくTIFFANYが運営する工場で製造されていた 「自社製」 の時計。
もう一方は、その後工場を引き継いだパテックがそこで製造した 「パテック製の同型機」。
こう考えて、、初めて辻褄が合うことになるのだ。
さてさて、今回ご紹介したこの 「TIFFANY&COの懐中時計」
例に漏れず、私はパテックにアーカイブを申請した。
そしてその答えは、、、「NO」 だったのだ。
正直嬉しかった。
普通、認定証の発行を断られて喜ぶ人間はいないだろうが、、、今回の場合は例外なのだ。
もちろん 「パテックの時計」 で悪いことは一つもない訳だし、、、どちらにしても機械的な優劣は見られぬ、実質的に 「同一のもの」 なのだが、、、何しろこの場合、それこそが今では数少ない 「TIFFANY自社製ムーブメントの時計の一つ」 であることの証明になる訳だから。
そういう意味でこれは時計の 「品質や評価額」 の問題ではなく、、、純粋に個人的な 「ノスタルジーの問題」 であると言える。
今年で175年目を迎える 「Tiffany & Co」
1837年、Charles Lewis Tiffanyが小間物商から始めた店はジュエラーとして見る見る成長し、、、37年後には大規模な自社の時計工場を持った。
しかし、スイス時計産業界が 「巨人・ウォルサム」 他アメリカの高性能量産機械を用いた時計製造メーカーにその存在自体を脅かされるようになった1878年、、、転機が訪れる。
ビジネスの 「パートナーシップ」 を提案したパテックオーナー 「Jean Adrien Philippe」 の懸命の説得にもティファニーは頑として首を縦に振らず、、、代わりに、 巨額の投資をした時計製造工場を彼に売却したのだ。
この時点でティファニーは 「最高級の時計メーカー」 であることよりも 「最高級の時計の販売者・ジュエラー」 であることを選択した.と言える。
1874年から、たった4年の間に作られた 「ティファニー自社製時計」 の物語。
我々のご先祖様が 「チョンマゲ」 を切り落として間もない頃。
西郷さんが西南戦争を戦っていた頃、の話しである。
(終わり)
※ 参考資料 「Tiffany & Co」 Andrea Danse著
「Complete price guide to Watches」 Tom Engle
Richard E. Gilbert
Richard M.Gilbert
Cooksey Shugart 共著
※ 今回ご紹介したこの時計は、2/25日(土曜日)より販売開始致します。