アレクサンドル・ワシーリエヴィチ・アレクサンドロフ(1883~1946)はソビエト連邦の作曲家で、陸軍軍人である。陸軍少将の時は、旧ソ連邦「軍歌」を作曲し、その後1943年には、旧ソ連邦の「国歌」の作曲者となり、ヨシフ・スターリンの庇護を受けた。作詞は、児童文学者であったセルゲイ・ミハルコフであり、1944年から1991年のソ連崩壊まで「ソビエト連邦国歌」として歌われてきた。
アレクサンドロフはモスクワ音楽院教授であり、人民芸術家としてソビエト連邦国家賞を受章している。なお息子のボリスも父と同じ陸軍少将であり、作曲家である。
また彼は、『アレクサンドロフ・アンサンブル』を創設し、ロシアの民族音楽の普及に努めたことで知られる。『アレクサンドロフ・アンサンブル』とは、少数のソリストや大勢の合唱団、バラライカやバヤンといったロシア伝統民族楽器を取り入れたオーケストラ、ダンサー集団、指揮者や団長等といった幹部から構成される演奏団体である。独唱・合唱だけでなく、コサック・ダンスやタップ・ダンスといった演舞も取り入れていて、古くからロシア各地や旧東側諸国は勿論、冷戦時代にもアメリカや西ヨーロッパ諸国といった旧西側諸国も積極的に巡業し、冷戦終結後の現在も精力的に活動しており、その世界的名声や評価は高い。
「聖なる戦い」は1941年、ナチス・ドイツによるソ連侵攻の際に作られた赤軍の軍歌で、ヴァシリー・レベジェフ=クマチ作詞、アレクサンドル・アレクサンドロフ作曲である。1941年6月26日にアレクサンドロフが芸術監督を務めていた『アレクサンドロフ・アンサンブル』により初演された。
開戦当時ソ連軍は大粛清による将校不足で連戦連敗であったため、歌詞中では「応戦」ではなく「とにかく追い返せ」という歌詞になっている。そのため、曲調が低音ぎみで暗いがソ連の軍歌としては有名である。軍歌らしく行進曲調ではあるが、拍子は三拍子である。
また、「旧ソ連邦国歌」の歌詞は1977年以降のフルシチョフによるスターリン批判およびその後のソ連内におけるスターリンの否定的再評価によって、スターリンを賞賛する部分は差し替えられた。
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1.「聖なる戦い」(1941年)
■1■「聖なる戦い」(1941年) □ Священная Война (Sacred War) - Ансамбль Александрова - YouTube
2.「旧ソビエト連邦国歌」
■2■「旧ソビエト連邦国歌」(1977年以降の歌詞)□ Soviet Union National Anthem with Lyrics - YouTube
参考として、「聖なる戦い」は日本語訳の1番のみを載せる。また、「旧ソビエト連邦国歌」の歌詞は1977年以降の日本語訳歌詞の1番とコーラス部分を載せる。
・「聖なる戦い」
起て、大いなる祖国よ
戦いへと起ち上がれ
邪悪なるファシストの
悪しき軍を破れ
聖なる怒りは
波の如く、
人民の戦闘、
聖戦へと行け!
・「旧ソ連邦国歌」
1番
自由な共和国の揺ぎ無い同盟を
偉大なルーシは永遠に結びつけた
人民の意思によって建設された
団結した強力なソビエト同盟万歳!
コーラス
讃えられて在れ、自由な我らが祖国よ
民族友好の頼もしい砦よ!
レーニンの党――人民の力は
我々を共産主義の勝利へと導く