前世療法では、過去を眺めながら治療をしていきます。そのため、過去と向き合いたくない方にはお勧めができません。たとえ前世を思い出しても、過去を振り返ったり、そこから学びを得ることができないため、治療的な効果があまり期待できません。その方の準備ができた時に思い出されることをお勧めしています。ご家族に勧められてご来院された場合でも同様です。
ある時、こんなことがありました。僭越ながら、ご家族がリバーサイドメンタルクリニックの前世療法を受けて効果を感じられました。そして、ご家族が20歳代の娘さんに強くお勧めされ、その娘さんがご来院されました。この方は、適応障害で休職中でした。
この方は頑なに、現世も含めて過去について思い出したり振り返る必要は一切ない、今現在と未来のみ見ていけばよい、と仰いました。そして、現世で休職に至った経緯やストレスを引き起こしやすい考え方を振り返ったり、昔学生の時に不登校を経験したけれどもそれを乗り越えることができた自分自身の強さについても、一切見向きもしませんでした。
ご自身は大学で心理学の授業を選択されたのだそうです。ですが、過去を振り返る治療を否定されるのです。心理学は過去を振り返る治療を否定はしないので、彼女の科学的ではない意見に対して、こちらが過去を振り返る治療がどのように役に立つかご説明しても、彼女はこちらの意見を受け入れることができません。そして同じ意見に戻ってしまわれます。
途中で、この方は、ご自身の過去に向き合いたくないために、過去を振り返る治療を否定しておられるのだ、と気が付きました。
残念ながら、過去はなかったことにはできないのです。でも、過去を振り返るのには、適切な時があると思います。ですので、この娘さんに対し私からは、ご自身の信じる治療法を選択することをお勧めしました。
この話には後日談があります。ご家族が前世療法で、この娘さんが第二次世界大戦中のドイツでユダヤ人の女性であったことを思い出されたのです。
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