より

 

不思議と5月の連休は晴れ渡った日が多い。まさしく五月晴れ、豊かな新緑、1年中で最も爽やかな季節です。家づくりを考える人にとって、遊びがてら住宅展示場に出かけるには絶好の日々、そして、総合住宅展示場には大手メーカーがずらりと出展しています。

ツーバイフォーやパネルエ法、軽量鉄骨、重量鉄骨、スチールハウス、コンクリート住宅、木造住宅、高断熱高気密住宅、ソーラーハウスと多種多様です。最近は、輸入住宅も加わって国際色にあふれています。でも、ひとまわりするだけでクタクタ。

それでも5月の爽やかさです。巡った家々も涼やかな印象が残ります。そんな折り、何気なく玄関脇に目をやるとクーラーの室外機のファンが回っています。

あれれっ、もうクーラーがかかっていたの?

 

気になって住宅の周りを歩いてみました。クーラーの室外機が1台、2台……5台6台。

しかも1軒2軒じゃない、展示場のほとんどの家にクーラーが5台も6台もみんなファンが回転しています。スイッチオン。そういえば、展示場の窓は開いていなかったなぁ。何か摩詞不思議な気持ちにとらわれませんか。

この最高に爽やかな明るい季節に、変ですね。窓を開けて風を通せばいいのに。

 

日本の家づくりの原点を、『徒然草』第五十五段のはじめに「家の作りやうは、夏をむねとすべし」と吉田兼好が指摘しています。「暑きころ、わるき住居は堪へがたき事なり」と。

夏涼しい家が原点なのです。吉田兼好ならずとも、日本の気候風土を考え合わせれば、風通しのいい、夏過ごしやすい家が当然の帰結になるはずです。

風通しは、涼しさを得るばかりでなく建物内の湿気を調整して、カビやダニの発生を抑え、建物を腐れから守る働きをしていたのですから。

しかし、現代の家は、5月にすでにクーラーが必要となります。その根本原因は、「家づくりは、冬にこそ重点をおいて、するべきである」と『徒然草』が現代版に改訂されてしまったからでしょう。

 

『徒然草』では、冬のことも書いています。「家の作りやうは、夏をむねとすべし」と述べたそのすぐ後に「冬はいかなる所にも住まる」と。寒さは厚着をすれば我慢ができるといったところでしょうか。実際は、当時の家づくりの技術では、冬の寒さに対して手の打ちようがなかったのでしょう。やはり、冬は家の中でも、相当に寒かったはずです。

現代の家づくりは、昔の家の寒さが忘れられず、戦後のさまざまな技術革新で出現してきた、いわゆる新建材で、冬対策をすすめた結果、夏向きの家が捨てられてしまったのです。

その結果、隙間風はなくなり、暖房は効くようになったのですが、逆に、夏も室内の熱がこもってしまい、5月にさえクーラーが必要になってしまいました。

 

1年中、機械に頼らなければ住めない家になったと言えます。

何かおかしい、家づくりの観点が、ずれにずれてしまったのではないでしょうか。昔は、「つれづれ」草が基準、現代は「ずれずれ」草が基準なのでしょうか。

昔の「つれづれ」草の時代の家。屋根は茅葺き。壁は土。木と紙の建具。板床、畳。床下に犬猫、子どもが遊ぶ。田の字間取り。大きな開口。骨は太い木。

現代の「ずれずれ」草の家。屋根は石綿スレート板。壁はモルタル、サイディング。アルミの建具。床は合板フローリング。コンクリートの基礎に閉ざされた床下。個室だらけで小さい窓。家中ぐるりと断熱材。骨は細木や鉄。パネルの家は骨すらなし。

 

昔と比べてよくなったといえる事。

燃えにくい材料になりました。壁や建具の隙間が少なくなり暖房が効くようになりました。地震にも強くなったといえるでしょう。しかし、夏は熱がこもりクーラーが必要になりました。しかも、そればかりではなく、もっと深刻な意味で、決定的に悪くなった事があります。日本の気候風土を無視した家づくりになってしまったのです。日本の気候風土の特徴は、一言で表せば、「雨が多く湿気に悩まされる」ということでしょう。

日本の国土に建てられる家は、湿気に強くなければいけないのです。

 

雨と湿気の多い国で、こんな変化が起こればどうなるか、誰でも想像できることではないでしょうか。

建物の寿命が短くなった。カビやダニの発生が多くなりアトピー性皮層炎が子どもの三人に一人、いや二人に一人といわれるまでになった。建築後の湿気がなかなか抜けずに、すぐに壁などがかびる。その結果、カビやダニ対策として薬剤があらゆる建材に使われるようになり、今度は化学物質過敏症、と悪循環が続いています。

五月晴れでクーラーが必要な、夏暑くなってしまった家。湿気が引き起こす悪循環を背負い込んだ極めて健康に悪い家。そんな家ばかりが多くなってしまいました。

 

書籍『夫婦の生活実感でつくる家』より

 

木木木

 

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