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この記事を読んでいるみなさんは何年生でしょうか?中1・中2生もたくさんいるでしょうし、中3生もいるでしょう。もしかしたら小学生や高校生の方、また保護者の方も読んでいるかもしれません。私自身も塾講師歴20年ほどになりましたが、かつて担当した生徒の中で最も成績を伸ばして逆転合格をした生徒のエピソードを紹介したいと思います。

 

今から15年くらい前の10月頃。中3男子のA君と二者面談をしました。面談の趣旨としてはA君が掲げる第一志望校は極めて厳しい状況であり、志望校変更を考えた方が良いというものでした。実際の偏差値や点数を伝え、厳しい現実を伝えました。(さすがに10月なので夢を語るよりも現実路線へと舵を切った形になります。)

 

それから約1週間後。保護者を交えた三者面談を行いました。保護者の方も状況は十分に理解されて、ご家庭の中でも志望校変更を話し合ったそうです。しかし、A君の回答は「絶対に志望校を変えない!」です。結局、家ではこの話し合いのまま塾での三者面談が始まり、A君は面談の中で「おれ、絶対に志望校を変えたく「ないんだよ、先生。どんなことでもするから、志望校に合格するために課題を下さい。なんでもやります。」と言い切りました。「本当にやれるの?大丈夫?かなりきついよ。でも本当に志望校に合格したいなら何が何でもやりきるしかないよね。だったら覚悟を決めてやりきろう!」と私も伝えました。

 

翌日からのノルマは平日1日7時間勉強(塾の授業時間も含む)です。朝学校へ行く前に1時間勉強、学校が終わったらすぐに塾へきて4~5時間勉強、塾が終わってから家に帰ったらすぐに勉強1~2時間、学校の休み時間も勉強。。。。とにかくやることがいっぱいある。10分程度しかとれないときには、漢字や英単語の練習、社会や理科の1問1答を集中して覚える、30分以上取れるときには英語の長文や数学の苦手な単元の学習、国語の読解、長時間集中できるときには過去問を3~5科目一気に解いたり、塾の復習や問題集を進めたりしました。どんな細かい時間も一切無駄にせず、入試までの3~4ヶ月は全てを勉強することに捧げました。塾がある日もない日も、雨の日も風の日も、体調が望ましくないときも毎日毎日、「何をやったのか」を報告しに来てくれました。塾の教材や過去問題集はボロボロになるまで使いこなし、過去問も各学校10~20年くらいまで遡って3~5科目やりきりました。

 

(過去問1科目50分+復習20分)×5科目×20年分 =  ???

(過去問1科目50分+復習20分)×3科目×10年分×3校分 = ??? 

 

あえて???としました。計算してみてください。勉強時間を。これに加えて塾の宿題はもちろん自分の勉強も進めています。もちろん、どれも完璧に。中途半端ではありません。ここで私の中である疑問が。。。もしかしたら、みなさんも思いませんか。「塾の授業時間も入れて、1日7時間の勉強時間で本当にこれだけまわせるの?」と。聞いてみました。即答です。「7時間で足りるわけないじゃないですか!(笑)」と。「昨日は徹夜してやりましたよ!」とA君は普通に答えます。あまり無理をしすぎないように伝えはしたものの、やはり志望校に合格したいという気持ちが本当に強かったのでしょう。学校の休み時間もずっと勉強していたようです。

 

12月に入って高校入試前の最後の模試があります。2ヶ月弱ものすごい勢いで勉強したわけです。A君の中でも、保護者の方も、我々塾の先生も少しは成績が上がっているのかと期待していました。しかし、12月下旬に返却された帳票では成績はなんと、横ばい。。。志望校の合格率ももちろん10%。迫る入試まで2ヶ月を切る中で、偏差値15以上上げないと。まさかの結果にA君は挫折しました。「もう勉強しても変わらないんじゃないか。。。」「どーせ、勉強したって成績なんて上がるわけがない。」この1日は1分たりとも机には向かわなかったらしいです。今まで勢いで勉強してきて前だけを見続けてきただけにショックも大きかったのでしょう。1度上がらない結果をもらうと、今まではできるようになっていた感覚もできなくなっているのではないかという焦りに変わり、本当に合格できるのかという不安が心を襲うようになります。

 

ここで一歩引いて、塾の先生として冷静に考えてみました。私自身も反省してもう1度冷静に判断しました。

 

①勉強し始めて成果が出るのは3ヶ月くらいしてから。まだ2ヶ月弱では成果を求めるには早い。受験までには結果が出るはず。

②受験で合格するためには苦労は必ずする。挫折を乗り越えることができるから逆転合格ができるということ。

 

上記2点をA君に伝え、納得をして受験勉強が再開しました。受験で合格できるかどうか不安な気持ちは誰にでもあります。しかし、「不安」は勉強すればするほど実は大きくなっていくものだと私は思っています。模試の合格率が高いか低いかは関係ありません。合格したいという気持ちが強ければ強いほど、受験勉強をすればするほど不安な気持ちは大きくなるのです。勉強はすればするほど、できなかった問題、間違った問題がどうしても印象が残ります。「あのとき、やったのにできなかった!」「○○をやっておけばよかった!」「○○ページの問題じゃん!何で解けなかったんだろう。」A君はいつも具体的な問題や教材をあげて思っていました。×がつくことへの不安は日に日に膨れ上がっていきます。

 

ついに1月に入って最後の追い込みです。A君は大みそかも元旦もいわゆる正月特訓で毎日勉強中です。過去問も点数が跳ね上がるようになって、「もしかしたら合格できるかもしれない!」という感覚が蘇ってきました。「今までにこんなに勉強したことがない」というくらいの3ヶ月間を経てついに、チャレンジ校の私立高校に合格。その勢いのまま、最後の公立入試も合格です。

 

この生徒はサッカー部に3年間所属していて学校の通知書のほとんどは「3」と「4」です。どこにでもいそうなごく普通の学力の生徒です。しかし、合格した高校は偏差値70くらいの難関校ばかり。10月の成績を考えれば正直、夢物語で終わるというのが一般的な見方ではありますが、A君はそうではありませんでした。今振り返ると大きな分岐点は2か所ありました。ひとつめは「志望校」を絶対に譲らずがむしゃらに勉強したこと。ふたつめは12月の挫折を乗り越えることができたことです。上位の学校に進学した生徒(先輩)を見ると、あこがれのように見え、成績優秀だから楽にうかったんだろうなあ、と思われがちですが、一生懸命勉強している生徒は案外苦労して合格しているものです。それが上位になればなるほどです。逆転合格をする生徒は必ず「苦労」と「挫折」を繰り返します。そして乗り越えます。もし、みなさんが今中3で秋の頃、この文章を読んでいたとすれば、A君のガッツを参考にしてください。