昼夜逆転というか、朝を失いつつある。
厳密に言うと早朝に眠りに落ち、昼前に起きるので、失ったわけではない。ここのところよく、白々と明るくなり始めた窓を眺めながら眠る。今日もそうだった。傍らでひろこさんが寝返りを打つ。
睡眠のリズムを失ったのはいつの頃だったろうか。飲まないので徹夜明けと言ってもそう堪えるものでもなく、気にもとめていなかったが、日を経るうちに、早くても3時くらいに眠ることが常となり、さすがに自然に仕事が昼始まりにずれた。フリーランスの気安さで、そう迷惑もかからず支障もない。また戻るだろうとのんきに考えている。朝から動かなければいけないときは、だから、仮眠となる。
受験勉強の「ふり」をしていた高校生の頃、深夜は、完全な、自由な時間だった。束縛だらけだと感じていた少年でも青年でもない「未青年」にとって、静粛を守りさえすれば手に入る自由は、自分を取り戻したような気持ちの高揚を、いつも伴っていた。ヘッドホンに閉じ込めたPat Methenyの音楽はいつも僕を祝福していた。窓から外に出て、タバコに火を点けて煙と一緒に吸い込んだ冷気に脳天がしびれた。
この頃、眠る前、明るい窓を見ながらそんな昔のことを思い出すことが多い。
精神、心理、心持、気持ち、魂、つまりは肉体以外の僕、が、未青年の当時のそれと比してどれくらい変わったのかを知るすべがない。豊かになったのか否か。
毎日眺めている自分の顔が変わったと気付くのは、毎日眺めてはいない、昔の写真を見た時だ。だから昔の精神、心理、心持、気持ち、魂を知ることができない以上、知るすべはない。
これはきっと幸福なことなのだ。
自分の魂が随分と汚れてしまったことを知らずに済み、卑屈に歪んだ精神を見ずに済む。狡猾な心の眼差しを知らずに済む。
傍らにひろこさんが眠る。お互い歳を重ねたものだと寝顔を見て思う。
今日から一年、僕は四十代最後の時を刻む。
初日から、寝不足だ。
厳密に言うと早朝に眠りに落ち、昼前に起きるので、失ったわけではない。ここのところよく、白々と明るくなり始めた窓を眺めながら眠る。今日もそうだった。傍らでひろこさんが寝返りを打つ。
睡眠のリズムを失ったのはいつの頃だったろうか。飲まないので徹夜明けと言ってもそう堪えるものでもなく、気にもとめていなかったが、日を経るうちに、早くても3時くらいに眠ることが常となり、さすがに自然に仕事が昼始まりにずれた。フリーランスの気安さで、そう迷惑もかからず支障もない。また戻るだろうとのんきに考えている。朝から動かなければいけないときは、だから、仮眠となる。
受験勉強の「ふり」をしていた高校生の頃、深夜は、完全な、自由な時間だった。束縛だらけだと感じていた少年でも青年でもない「未青年」にとって、静粛を守りさえすれば手に入る自由は、自分を取り戻したような気持ちの高揚を、いつも伴っていた。ヘッドホンに閉じ込めたPat Methenyの音楽はいつも僕を祝福していた。窓から外に出て、タバコに火を点けて煙と一緒に吸い込んだ冷気に脳天がしびれた。
この頃、眠る前、明るい窓を見ながらそんな昔のことを思い出すことが多い。
精神、心理、心持、気持ち、魂、つまりは肉体以外の僕、が、未青年の当時のそれと比してどれくらい変わったのかを知るすべがない。豊かになったのか否か。
毎日眺めている自分の顔が変わったと気付くのは、毎日眺めてはいない、昔の写真を見た時だ。だから昔の精神、心理、心持、気持ち、魂を知ることができない以上、知るすべはない。
これはきっと幸福なことなのだ。
自分の魂が随分と汚れてしまったことを知らずに済み、卑屈に歪んだ精神を見ずに済む。狡猾な心の眼差しを知らずに済む。
傍らにひろこさんが眠る。お互い歳を重ねたものだと寝顔を見て思う。
今日から一年、僕は四十代最後の時を刻む。
初日から、寝不足だ。