2025年もあとひと月あまり
近所の山々も最後の装いで華やいできましたね。
上空を飛び交う旅客機もなんだか忙しそうです。
人生の終盤を迎えてから恒例行事にしている錦秋の古寺めぐり
今年は東近江にある“湖東三山”のひとつ、『金剛輪寺』を訪ねてみました。
百済寺と西明寺は以前に訪ねているので、三山最後のお寺です。
金剛輪寺は名神高速道路の『湖東三山IC(スマート)』の至近距離で、とてもアクセスの良い寺院ですね。
拝観料は800円でしたが、駐車料金は無料で、関西らしからぬ良心的な値段設定(^^;
総門の黒門から入って行きます 大きく立派な高麗門でした
金剛輪寺の紅葉は燃える様な『血染めの紅葉』が有名ですが、さっそく目に飛び込んで来ます
しかし、葉先の枯れも目立って来てるので、ちょっと遅かったかな?…。
しかしまだ緑の区域もあるので、色んな品種が植えられている様です。
西谷堂は天明元年(1781)の建立
金剛輪寺は天平9年(737)に聖武天皇の勅願寺として行基上人により創建された古い寺院とされます。
平安初期に天台僧の円仁(慈覚大師)により荒れた寺の再興がなされ、以降は天台寺院の大寺としての格を持ちながら受け継がれた様です。
機能としては天台密教の修業の場、広くは天下泰平の祈祷寺だった様で、修行僧が寝泊まりする僧坊は、周囲の4つの谷に百坊以上あったそうです。
また、寿永2年の源平合戦では源義経が十数日間参篭し、必勝祈願しました。
本坊『明寿院』の表門『黒門』
この明寿院が日常の実質的な寺機能ですが、ここの3区の庭園が“国の名勝”に指定されています
最初の南庭は池と石橋を置いた桃山時代の作 春には石楠花の名所です
南庭の上にある茶室『水雲閣』は幕末に“赤報隊”が結成された場所でもあります
次いで東庭は石組を多用した江戸初期の作
そして北庭は江戸中期の作だそうです 四季桜が咲いていました
季節柄かも知れませんが、幾つかの有料の名園を見て来ると、ちょっと手入れ不足…かな。
鎌倉後期、元寇に際して幕府は全国の祈願寺に“敵軍降伏祈願”を命じ、近江国では金剛輪寺を中心に昼夜にわたり大祈祷が行なわれました。
果たして、元軍は敗れて退散したので、金剛輪寺には近江守護の六角頼綱の手により本堂の大非閣(国宝)や三重塔(重文)などの現本堂エリアが整備されたそうです。
しかし。専門家の鑑定ではいずれも南北朝期の建物との見方もあります。
応仁の乱から戦国期にかけて、寺は六角氏や京極氏の陣城とされる事が多々あり、兵糧・金銭の徴発も厳しくて、やむを得ず僧兵を置いて武装した時期もある様です。
ひょっとしたらこの時期の戦火で一旦焼失したのかも知れませんね。
明寿院を出て、本堂へと登って行く参道 両脇には延々と“千体地蔵”が並びます
地蔵さんは沿道の僧坊跡にも九百体が建ち、これは全て個人が供養の為に奉納したものみたいです
より大衆化した現代の顔ですね。
地蔵さんを護る地蔵堂は平成9年(1997)に新たに建立されたもの
最後に石段を登ると山門の二天門があります 室町中期の建立(重文)
建立当時は八脚の楼門だった様ですが、江戸中期に老朽化で二階が取り払われ、現在の姿になった様です
戦国末期、比叡山延暦寺に連座して織田信長軍に焼き討ちされた天台寺院群。 軍兵は金剛輪寺にも火を放ちましたが、住職の機智で山上の本堂や三重塔などは難を逃れています。
西明寺でも参道沿いの僧坊に自主的に火を掛け、その業火で敵兵が近付けなかった…という話があったので、同じ手段だったかも知れませんね。
江戸時代になると寺勢は徐々に衰退して行き、幕末には明寿院周辺以外は相当に荒廃していた様です。
そんな折、討幕急進派の岩倉具視や西郷隆盛などの意を受けた面々が明寿院の茶室『水雲閣』に集まり、密かに『赤報隊』が結成されました。
赤報隊とは…大政奉還後の円満な政権移譲を妨げ、あくまでも徳川家の軍事討滅を目的として挑発行為を繰り広げる工作部隊で、徳川家を戊辰戦争に引きずり込んだ影の立役者ですね。
現代で言えば、“しばき隊”の発展形といった所かな?
金剛輪寺には迷惑極まりない話ですが、明治新政府の闇の部分です。
*お寺の案内やパンフには記載されていません
鎌倉後期に建立の本堂『大非閣』は国宝です
本堂よりも歴史の古い三重塔ですが、こちらは重文
その理由は、江戸期以降の放置で荒廃が進み、一階部分と二階の柱梁を遺すのみとなっていたのを、昭和53年になってから大修理復元したものだから 欠損部は西明寺三重塔を模しています
本堂と三重塔の間を埋めるモミジの群生を『血染めの紅葉』と呼んでいる様です
とくとご覧ください。
そんな事もあってか、明治新政府は金剛輪寺の全山を明寿院だけ残し上地(国有地にする)してしまいます。
しかし、熱心な信者さんや心ある政財界有志の後援で寺は生き残り、昭和の大戦後は急速に復興を進め、今に至っています。
10月の三千院に次ぐお寺訪問でしたが、紅葉見物の客で賑わっていたものの、ほぼ皆さんが日本人で、同じ老境の善男善女でした。
敢えて意識せずとも、互いに自然に身についている周囲への気配りの空間がどれほど心地良いものか… やっぱりこれがイイですね(^^)
了
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帰途に寄った愛知川上流の政所にある光徳寺の大銀杏
近年お気に入りのスポットです(^^)
今年も見事な黄色い絨毯でした





























