里見の城を歩く ⑧  上総国  万木城   登城日2014.12.07
 
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  城郭構造   平山城
  築城主    土岐頼元
  築城年          応永年間
  主な城主       土岐氏
  廃城年          明治4年(1871年)
  遺構             曲輪、土塁、井戸、削岸
  指定文化財    なし
 所在地   千葉県夷隅郡夷隅町万木
 
 
 勝浦城の次は内陸に入って行って、夷隅の万木城を目指します。
里見の城では無いので目的に反するかも知れませんが、里見氏が制圧した上総にあって、唯一抵抗し続けた城なのです。
 
 万木城の城主は上総土岐氏という氏族で、頼元ー為頼ー頼春の三人の名前が当主として確認されています。
上総土岐氏は美濃土岐氏の傍流で、土岐頼芸が斉藤道三に美濃を奪われた後に諸国を流れ、上総に住みついたと言われます。
 
 最初は安房の安西氏を頼り、後に里見義実の配下になって活躍し、上総の夷隅郡を貰って万木城を造った…というのですが、義実の時代に夷隅郡までは手中に無いし年齢の時間軸が合わないので、実堯・義堯の頃ではないかと思います。
 
 ともかく、土岐頼元、為頼親子は最初は里見氏の下で活躍していて、正木氏、酒井氏とともに“里見の三羽烏”と呼ばれるほどの主戦力でした。
 里見氏の元を離れるキッカケになったのは国府台合戦で、里見と北条の勢いの違いを目の当たりにした為頼は、北条氏のしきりの誘いもあり、北条側に寝返ります。
 
 さてここからが大変で、里見氏の領内に孤立した土岐氏への周りからの攻撃は激しく、里見義弘、義頼、義康と三代にわたり、入れ替わり立ち代わりガンガン攻め立てますが、これをすべて防いだ主役は、為頼の嫡男:頼春の卓抜した武勇と知略でした。
 
 頼春は家督を継ぐと逆に攻めに転じ、徐々に周囲を伐り従えて、領地は10万石にもなり、“土岐五千騎”と称せられました。
 五千はオーバーにしても、こうなると里見義康も手詰まりになってしまいます。
 
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万木は東上総の内陸ですが、九十九里の海にも近く、頼春はその沿岸を支配しました
 
  
 豊臣秀吉の小田原攻めが近付くと、頼春の元にも北条氏から小田原入城の要請が来ます。
頼春は主力の多くを弟の頼実に託して小田原へ送り出します。
これを察知した里見義康は庁南の武田氏を主力に手薄になった万木城を攻めさせますが、頼春に翻弄され、大損害を出し退却します。
 
 この頃、里見氏の元にも秀吉から小田原参陣の触れが届きますが、義康はこれを無視して万木城攻めに固執します。
今度は大多喜の正木氏を主力に攻め込みますが、これも頼春に撃退されてしまいました。
真田昌幸に匹敵するほどのス-パースターぶりですね。
 
 そうこうしてるうちに小田原征伐が始まり、間もなく北条氏は降伏してしまいます。
上総では北条方の掃討と城の接収が始まり、秀吉側の大軍に囲まれた頼春は「もはやこれまで」と城に火をかけて自刃したとも、三河に落ち延びたとも言われ、これで万木城は廃城になりました。
 
 その後に大多喜に入封した本多忠勝は、頼春の旧臣を多く召し抱え、頼春の武勇伝を聴くのを一番の楽しみにしていたそうです。
 
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里見領の大多喜方面
 
  
 
万木城を歩く
 
 勝浦からは海岸を離れ、R297で内陸から向かいます。
さらに途中で県82に分岐して山越えしますが、房総の道は概して良く整備されていますね。
観光立県だからなのか、ハマコーさんの力なのか… 意外と早く到着しました。
 
 城山の下に大きな駐車場がありますが、あいにく町のマラソン大会がある様で満車でしたが、山の上にも駐車場が有るのを知ってたので、直接乗り込みます。
 細いけど対向車も無く、途中のトイレの所に信号があって、青信号を待って登りますが、着いたら停まっているのは1台だけでした。
 ここは天守風展望台のある土壇の下で、二ノ丸的な役割の曲輪跡かな?
ここから主郭部だけでも歩いて見ます。
 
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天守風の展望台
物見台の土壇に建っています
“怪しい城”に採り上げられそうですが、城址の目印には良いかも
 
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 居館跡の本丸?と思われる場所はかなり広く、舗装もされています。
岩がちな山をこうも綺麗に削平は出来ないでしょう…
 
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 奥の米曲輪と呼ばれる土壇は手を加えられずに残っています
 
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広さも有り、外側を土塁が巻いてるから、ひょっとしたら本丸は…
 
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外側は嶮しい削崖です
  
 
 主郭の部分を見ただけですが、この部分だけ残されてもなお沢山の兵を囲えて、最後まで抗戦できる構造になっています。 
土岐氏のルーツが美濃に有るからか、里見の城とも北条の城とも上杉の城とも違う趣が有りますね。
こうゆう城は弾丸ツアーでなく単独でジックリ見たかったw