世界経済に広がる資源・食糧高騰の影
原油、穀物などの価格高騰には資源国や農業国の経済力を強め、増産を促す側面もある。しかし足元で深刻さを増すのは、新興国でインフレが加速したり、先進国の個人消費や企業収益を圧迫したりする景気への悪い影響だ。
国内でも光熱費や食品価格の引き上げが広がっており、政府と日本銀行は原油などの価格動向とその影響に一段と警戒を強めてほしい。
中国の消費者物価指数(CPI)は、4月まで2カ月連続で前年同月比の上昇率が5%を超えた。中国政府は金融引き締めに加え、食品や生活用品価格、電気料金の上昇を抑える指導に動いた。だが、原燃料高が続く中で値上がりを抑え込むと供給量も抑えられ、逆に物価上昇は加速しかねない。
中国の電力問題は深刻で、国有送電大手が今夏の不足量が過去最大に達する可能性を警告している。自家発電設備の稼働が燃料不足も引き起こす。日系工場の操業のほか、輸出への影響も大きい。企業や政府はこれまで以上に警戒すべきである。
長江流域の干ばつ被害も気になる。農業生産が減れば中国で食料品価格が一段と上がり、国際市場では「中国の輸入拡大」という材料が穀物の投機買いを誘うからだ。
石油や食料品の値上がりに賃金の上昇が拍車をかけるインフレへの対策は、新興国に共通する喫緊の課題だ。ただ、金融の引き締め策が行き過ぎると景気が失速し、補助金や価格統制に依存すれば財政の悪化が通貨急落などの混乱を招く。適切な運用が求められる。
先進国でも米国でガソリン高が個人消費に影を落とし、5月の雇用回復も鈍った。デフレ圧力の根強い日本でも、4月のCPIは2年4カ月ぶりに前年比上昇に転じ、ガソリンのほか、電気代や航空運賃、海外パック旅行と燃料高に連動した価格上昇が目立つ。
電力10社と都市ガス大手は先週、7月の料金も4カ月連続で一斉に引き上げると発表した。電気料金の上げ幅は過去2年間で最大だ。7月には食パンなどの価格も小麦高騰を受けて上がり、消費者の生活防衛意識が高まる可能性がある。
原油などの国際商品価格は5月にいったん下落した。それでも中東産ドバイ原油の価格は1バレル100ドルを超え、前年同期より5割近く高い。
政府・日銀は資源や食糧の高値が続く事態を想定し、企業収益に加え、東日本大震災後の萎縮から回復途上にある消費者心理への影響にも注意を払ってほしい。
***社説終わり***
日本は多くを輸入に頼っています。
資源高・食糧高では今後の見通しに不安が出てきます。
資源は限度がありますが、食糧に関しては政策次第で改変ができるのではないでしょうか。
パスカル進学教室(茂原市)