私には小さい頃の記憶がない

気が付いたらこの村にいて、霧雨無音と名乗る様にあやめに言われていた

「私の小さい頃の記憶がないの」 

あやめに聞いたことがあるが

「そのうち話してあげる」

そのうち…………あれから聞いたことがない

私はどこから来て誰なのか

まだ答えは知らない







屋敷から出て歩いていると

「悪魔が来たぞ、逃げろ」
「近づくと殺されるぞ」

と言って離れてゆく子供達

「捕まえて八つ裂きに」
「悪魔に制裁を」

武器を手にした大人達……………

それらから逃げるように走り出す私…………

後方から追いかけてくる足音

(早く逃げないと………捕まると………)

その先を考えるのが怖い…………

気が付くと村から出て森の中にいた

後方からの足音はもうなくなっていた

安堵した私は近くの大木の脇に腰をおろした

「どうして私だけ?」

呟き溜息が出る

小さい頃から同じだった





「お母さん、遊びに行ってくる」

「勝手にすれば、まあ殺されても構わないなら」

「…………えっ?」

「えっ?じゃないの、あなたは村人からしてみれば……悪魔なの………わかるかな、そんなのが歩いていたら………わかるよね」

しかし小さい私にはわからなかった

「わからないと言う顔してるね」

「お母さん………私は……何故悪魔なの」

「それはね………あなたは悪魔から貰った子なの」

「………………………………………」

「大きくなったら詳しく教えてあげる」

そう言うと母親はその場から離れた








そろそろ移動しないと

何処に行く?

村に戻る?

それはない、自殺行為でしかない

間違いなく村人に………………

とりあえず村から離れる事にした

歩きながら途中立ち止まり振り返るが

付いてきている気配はない

「諦めたかな」

軈て森を抜けて隣の村まで来ていた

「ここまでくれば……あっ!」

村の中から煙が上がって村人が逃げ出してきた 

服は破けて、やけどをしている者や体から血を流しながら走っている者もいた

「あの何が起こっているんですか」

一人を捕まえると、青ざめた表情を浮かべながら

「お前も死にたくなかったらこの村から離れろ」

そう言うと腕を振り払い逃げ出していった

「この村に入ると………死ねるんだ」

私は躊躇うことなく村に入るとそこには

家屋が火に包まれていて、地面には死体が散乱していた

堪らずその場で嘔吐する

「何?この死体は?何が起こっているの」

吐き気を堪えながら歩いていると少し開けた場所に出た

やはり死体の山に………

「誰かいる」

それはいた

周りを死体に囲まれた広場の中央……………

全身を返り血に染まりながら、まるでワルツを踊っているみたいな動きで生きてる村人を斬り殺している人物

「……………綺麗…………」

思わず口に出てしまった

これが魔王との出会いであった






次は50回目…………























「エイタ………」

「もう大丈夫なのか」

「大分マシになった」

あれから一時間

無音が起きてきた

因みにサテラは夢の住民になっているみたいだ

「それより何な変な事されなかったか」

「されていない、どうやら黒江はあやめには逆らえないみたいだ」

「…………母親に逆らった事無いからな」

これで力関係が見えて来た

「一番上があやめ、その下に黒江、そして一番下が陰」

「……………………………………………父親が陰と並んで一番下………………」

「えっ?」

普通の家族なら父親が一番上のはずだが、まあ例外もあるが

「となるとこの家はあやめと黒江が……」

「違う、家どころか村自体を支配している」

「事実上のトップ2となるわけか」

「エイタ、父親とは会っているのか」

「会っていない」

「そうだろうな、何かその事について言っていたか」

そう言えば黒江が

[少しヘマをしたから拷問して、今は地下牢で治療中です]

と言っていたような

「かなり不味いな、多分まだ拷問は続いているな」

「助けなくていいのか」

「助けたいが…………助けたいが、拷問部屋の鍵は黒江が持っていて、あやめすら入れないしそのドアはかなり頑丈に作られていて破壊は不可能に近い、更にあの屋敷の地下深くにあるから外から入るのも…………」

要するに助けられないと、諦めるしかないと

「エイタは気にするな、これは家族の問題だ」

それを言われるとこれ以上は…………

「聞きたいことがあるんだけど」

話を変えることにした

「何かな」

「あやめがこう言っていた[…嘘ですね、大方あんなことをしたからこの村に入りにくいんでしょう、いるとしたら村の近くにある森の中かな]さらに[知りたかったら本人から聞きなさい]と」

「………………………………………」


「嫌なら無理に話さなくてもいいよ」

「………いつかは話そうと思っていた……………その時が来たかもしれない」

「…………無音………」

「エイタ……少し長くなるけど………………………構わないかな」

「夜は長いしそれに」

サテラは起きてくる気配はない

「エイタ、隣の部屋に行かないかい」

出てゆく無音を追いかける様に後に続いた








「無音!」

慌てて駆け寄り揺すると

「………エイタか、じゃここは村の中か」

無音はゆっくりと立ち上がると脇にある椅子に腰を掛けた

「一体何があったんだ」

「………木から落ちただけだよ」

そんな傷には見えないが

「そう言えばあやめが黒江達に……」

「…………………………………………」

「まさか………拷問されたのか」

「……………………………少し休む」

そう言うと無音はベットに潜り込んだ

否定しない、間違いなく拷問されている

あの黒江ならやりかねない





少し時間は戻る





「黒江お姉さん、無音が落ちたよ」

落ちた無音の脇に黒江が立っていて手に何かが握られていた

「よくやった陰、馬鹿でも役に立つんだなと褒めてやる」

「ところでこの後どうするの」

「陰は気にしないで早く村にお帰り」

「まさか…………」

「その先を言ったらどうなるかわかっているでしょう」

「……………………………………」

「村についたら母親には見つからない様に部屋に入り私が居るように誤魔化しなさい出来なければ………わかるでしょう」

やはり黒江お姉さんには逆らえない

諦めて歩き出した陰

それを確認して黒江は

「さあこれから楽しい時間が始まり始まりまあ無音からしてみれば地獄の始まりだけどね、さあ……始めるわよ」

こうして地獄の宴が始まった







 

「陰…………いるんですか」

見つからない様に部屋に戻ったつもりだったが

「…………はいお母様…………」

どうやら見つかっていたみたいだ

「当然、無音を宿屋に………」

「……………はい…………間違いなく………」

「歯切れが悪いけど……そこに黒江はいるんでしょうね」

ドア越しの会話、入ってこられたら……………不味い

「黒江…………お姉さんは…………」

「どうしたの?いるの?いないの?」

「…………………無音お姉さんを宿屋に連れてゆくから先に帰れと………言われたから」

「じゃいないのね………まさかと思うけど……拷問とかしていないよね」

「していない…………村の入り口まで一緒だったし………宿屋に向かう黒江お姉さんを見ているし…………間違っても拷問部屋には」

拷問部屋とは黒江お姉さんが拷問に使う部屋

多分父親が監禁されている

「拷問部屋には向かってないと、わかった………私は部屋にいます、黒江が帰ってきたら来るように言いなさい」

ドアの前のあやめの気配が消えた

(何とか誤魔化せた………早く帰ってきて黒江お姉さん……………間違っても無音お姉さんを殺さないで………)

祈る陰の姿があった