部屋は以前住んでいたアパートよりも綺麗に掃除されていた。
玄関を入って直ぐ右にキッチン。
ガスコンロは無く、かわりに小さくて少し深めのホットプレートが置いて有る。
流しには洗ったお皿とコップが伏せて有った。
流しのとなりに全自動洗濯機。
中には何も入って無かった。
玄関の左にはトイレが有り、ここもキチンと手入れされていた。
大家さんの話しだと週二回ケアサービスの方が掃除に来て下さっていたみたい
キッチンと続き間の四畳半のカモイには洗濯物が干されてた。
足元には沢山の段ボールに衣類やタオル等が畳んで仕分けされていた。
半間の押し入れが有り、中にはかつての仕事道具が詰まっていた。
カラーボックスには書類や郵便物、書籍が列んでいた。
奥の六畳間にはシンプルなベッドと炬燵、小さいテレビと本棚があった。
壁に架かったカレンダーは3月のままだった。
部屋の中を一通り見て回るってから三人で片付けを始めた。
ボッチが奥の六畳、㍉が四畳半、たえさんがキッチン。
初めて直ぐにボッチが声をあげた『これ、㍉んじゃね』
手にしていたのはワンカップの空き容器に入った五百円玉。
途端に“あの日”を思い出した。
貰う訳にはいかないが、気持ちだけ戴いて行くよ。
㍉『ボッチ、モロッコの○って本が有ったら教えて。』
それは直ぐに見付かった。
中腹に栞が挟んであり、なかを開くとピンクのライン。
㍉『ココ、見てみて。』
ボッチはその部分を読んでから表紙を見て著者を見ていた。
㍉『この本、圭次郎君のお気に入りなの。貰っても良いかな?』
ボ『へぇ…』
ボッチは呟きながらで表紙を撮ると、本を㍉に手渡してくれた。
カラーボックスの片付けをしていた㍉は、写真を見付けた。
半透明の小さな袋に入った数枚の写真。
中には圭次郎の兄と弟、その子供達が写っている。
良く見るとボッチも写ってる、若くてカッコイイ頃のボッチ。
たえさんの写真も有った。誰かの結婚式に呼ばれ、ドレスアップしたたえさん。隣には礼服を着た父、二人とも笑っていた。
たえさんに写真を見せると、父の隣にいる自分を指差『誰この綺麗な人』
えっ
流石、天然キャラ炸裂
㍉『それ、たえさんじゃん』
た『あっ、私だ綺麗ねぇ』
大笑いした。
その後皆黙々と作業を進め日も陰ってきた。
ボ『お洒落さんじゃん。俺より服持ってる。』
そうなのだ。荷物が意外と多くて半日では終わりそうもない。
二ヶ月、主の無かった部屋は電気も止まっていて今日は作業を切り上げる事にした。
つづく