
立川「無庵」の古いお弟子さんのお店と知ってから、
ずっと、行ってみたいなぁ、と思っていたお店は、
想像していたのとは違う、派手な演出のない、質素な佇まい。
が、店の前には、茶道の心得感じる打ち水がなされ、
小さいながらも置かれた植栽には、きちんと手が入っている…
熊谷 「蕎麦料理 加那や」
あ…、これはいい感じだ…、「お持て成し」の心を肌で感じ、
扉を開くとすぐ目の前には、小さなカウンター。
その奥に、テーブルが二つ置かれたお座敷だけ、の小さな空間。
年月培った、古い日本の家屋の温かみが、ふわりと体を包み、
後ろには、静かに流れる、ジャズのBGM。
床や柱はよく磨かれ、人の手の慈しみに満ちている…
。
と、すぐににこにことした和やかな笑顔の女将さんが、
「いらっしゃいませ~、お二階にどうぞ~」
と、温かく迎えて下さり、途端にほっと心寛ぎ… 

早速、階段を登ろうとすると、素敵な陶器が置かれてる。
どれもが、情緒溢れた手作りの器で、しばし手にし眺め…
ふたつあるお座敷には、それぞれテーブルがひとつづつ。
その一つの間に置かれた、ゆったりとしたテーブルに腰をおろしたら、
ほおぉぉ、気持ちいいなぁ、と皆すっかり寛ぎモード。

ぽかぽか陽気の日に、しかもこの居心地のいいお部屋、
まずは、くぅ~っとやりたいなぁ、手にしたお酒の品書き。

ビールは、「エビス」に小川町の地ビールがあるようなので…、

早速お願いした地ビールに、コーラとジンジャエールで乾杯~
。

口にした黒ビールは、フルーティーな香りに、豊かなコクが広がり、
乾いた喉に心地よく、味わい深い、美味しい地ビール
。

喉も潤い落ち着いたところで、、ようやく品書きを手にすると、これが豊富。

ふむふむ、なんとなく「無庵」さんの流れを感じるなぁ…と、
一通り眺めた後で、

予約なしでも頼める、お手軽なコース料理、
盛り合わせ4点に天ぷら、蕎麦と甘味のつく「蕎麦楽膳」に決め、
お蕎麦を「二色せいろ」に変えてもらってお願いすることに。

待つ間に、日本酒の品書きも見せて頂き…、
お料理が来るのに合わせて選んだ、福岡の「繁枡」純米冷やおろし。

程なく出されたお酒は、錫製の酒器に、これも素敵な猪口が添えられ…、

続いて「盛り合わせ」のお料理が出される。

蕎麦屋の定番料理、「焼き味噌」に、

しめじや春菊が和えられた、上品な味わいの「酢の物」。

茸の煮物に滑らかなとろろがかかった、とろ~りとした「蕎麦豆腐」。
とろろと蕎麦豆腐の食感がたまらなく、とても美味しい。

「胡麻かけイチジク」は、胡麻だれの濃厚かつまろやかな風味が、
イチジクの甘さを引き立て、優しく品があり…、
一品一品、丁寧に作られた繊細なお料理は、このお酒にぴったり。

と、食べ終えた頃合いに、続いて出された「野菜の天ぷら」。

衣薄く、からりっと揚げられた天ぷらのどれもが美味しい。
瑞々しさを残したレンコンは甘みがあり、茄子はとろり。
柿の天ぷらの食感と甘さが楽しく、舞茸はさっくり。

これには熱燗、「久寿玉」で楽しんで…、
いよいよ楽しみにしていたお蕎麦が出される。

まずは、もり汁に猪口が出され、
「北東北ニ「ででん」ト 鎮座スル 八幡平。
ソノ山麓デ 名人 兎沢氏ガ作ル 極上ノ蕎麦」
との、蕎麦の実を石臼で挽き打たれた、二色の蕎麦。

「せいろ」は、丸抜きで打たれ、九一だそう。
きりっと立った角に、端正に切り揃った繊細な細切り。

手繰り上げると、ふわ~っと広がってくる、馥郁とした蕎麦の香り。
しゃきっとした心地のいい腰に、しなやかな歯ごたえ。
手繰り続けていくと、じわじわと甘みが広がり、これは美味しい
。

一方、「十割田舎」は、殻ごと挽きこんだ挽きぐるみ。
ざっくりと断たれたその穀物感溢れた切り口に、心が弾み、
手繰り上げれば、むわ~っと立ち込める香ばしい蕎麦の香り。

噛み締めると、もちっとしてしっかりとした歯ごたえがありながら、
ほろろ…と、解ける感覚があり、これがたまらない。
ざらりとした表面が心地よく、それでいて喉越しも軽やか。
ああ、この田舎、美味しいなぁ
。
汁は、濃い目でやや酸味を感じる、ちょっと変わった味わいだが、
添えられた大根おろしを加えると、途端に円やかになり、これはいい。
ただ、「せいろ」には、やや強めかしら…
と、あっという間に頂いてしまい、これも気になる「青ゆず切り」。

4人で一枚頂こうとお願いした「青ゆず切り」が美しい…
。

ぴかぴか輝く、透けるような純白の蕎麦の中に、
ほのかに散った、爽やかな青い柚子片。

口に含むと、ぷるるんっとした跳ねるような腰があり、
途端に広がる、清々しく爽快な青柚子の、香りに味わい。
噛み締める毎に弾けるように広がり、体いっぱい清涼感に包まれる。
「裏の庭の木で取れた青ゆず」だそうで、
この青柚子切り、これは素晴らし~い
。
と、4人で手繰ればあっという間…

さらに弾みのついた我々は、「かけそば」も注文し…

取り分け頂くと、熱を帯びたせいろは、もちっもち。
鰹の風味がしかと感じる、旨みの広がる汁を吸い、これが旨いっ
。
汁はやや濃い目だが、蕎麦湯を注ぎいれ頂くと、ほっとする美味しさで…
すっか~り満足、おなかもいっぱい
。

そしてこれも楽しみな、最後の甘味。
4種類ある中から、それぞれ好きなものを選ばせて頂いて…、

程なく、繊細な泡の立った、丁寧に点てられたお抹茶が添えられ、
お皿にそっと置かれた、甘味が出される。(あ、裏だ…)

ほっとする抹茶の味わいが、食後の体にじわりと和み、
私の選んだ甘味は、「利兵栗のくりきんとん」。
木曽のくりきんとんに似た、ほこっと風雅な栗の甘みがたまらなく、
ああ、これも美味しいな~
と、心から満喫できた、「蕎麦楽膳」。
ほんのひと時寛ぐ中で、質素ではあるが、茶道の「わび・さび」に通じる、
このお店の、客人をもてなす心をしかと感じながら…
帰り際、ご主人も顔を出して下さり、
女将さんと並んで、笑顔で見送って下さるのが、何よりうれしい。
ご馳走様でした~
車に乗り込んだ後も、あの女将さんとご主人の笑顔が胸に残り…
いいお店だなぁ、と心からしみじみと。
ああやっぱり、蕎麦遠征は蜜の味、やめられないなぁ 

「蕎麦料理 加那や」
埼玉県熊谷市上川上612-2
048-523-9358
11:30~14:00 / 17:00~19:30
月曜、第2、第4火曜定休
禁煙、P有り