泣きわめいても、駄々をこねても、ダメなものはだめらしい。 男は女の涙に弱いだなんて嘘じゃないか。


12月23日

とんでもなく落ち込んだ気分でアルバイトに行った。その日は私の大嫌いなPDと働く日だった。何でもかんでも人に押し付けてくる。嫌味を言ってくる。

ねぇ、私、しごく落ち込んでいるの。イライラしてるの。ムカついてるの。機嫌が悪いの。頼むから、怒らせないでよ。

しかし、そんな事あっちには関係ないのだ。いつものように、PDは私をいらつかせた。ついに私は言ってしまった。

「ムカつく!! このオカマ野郎!!」

翌週、私はバイトをクビになった。

12月24日

MCがドライブに連れて行ってくれた。彼は私に何があったのかを知っている。気分転換に、と、気を使ってくれたのだ。せっかくのクリスマスイブの日に。

MCは私を叱ってくれて、とても優しい。いつか、冗談で「お父さんみたいだね」と言ったら彼も私の事を「バカ娘」と呼ぶようになった。 彼にはほかにも「バカ娘」と呼ぶ女の子が二人いる。1人はSK、もう一人は友達のMP。冗談で、私たちは家族になった。
ドライブ中の車内で、私は「今から私たちの家系図作る」とバカなことを始めた。そこで、「Sも兄妹の一人に入れてあげよう」ということになり、Sは知らないうちに私達と兄妹になった。

「ねぇ、今までのは近親相姦だね」

そう言って笑った。



浮気。不倫。愛人。これもまた面白いかもしれない。

「テツコのことが好き」

そんなこと言って、この男がMYと別れるものか。

「テツコの事が好き」

「テツコの事が」じゃない。「テツコの事も」だろう。

帰りの電車の中で、彼は友達のSKに攻め立てられていた。彼女も誕生日会に来ていたメンバーの一人で、私とSのKY行動を目の当たりにしていた。

「ちょっと。MYとテツコ、どっちが好きなわけ?MYと付き合ってんのにテツコとも付き合ってるの?二股?テツコがどれだけ傷ついているか分かってんの?どっちかにしなよ。テツコにこれ以上泣かすようなことをすれば、アンタの事殺すから」

その日の事ははっきり言えば私が悪いのだ。 しかし傍から見ればSには彼女がいるのに年下の私にちょっかい掛けてた、そんな感じに見られていたらしい。

誕生日会の次の日、私はある事実を友達から教えてもらった。どうやら、SとMYは同棲するらしい。 驚いた。

その日の夕方、私はSの家に遊びに行った。一緒に映画を見て、夕食を作った。

夕食後、彼は私に言った。
「やっぱり僕は、テツコとは付き合えない。テツコは僕にとって、外見も中身もパーフェクトだよ。セックスの相性もいいよ。けれども、MYは僕と同い年だし、経験豊富そうだし、彼女と付き合った方が僕のプラスになると思うんだ。 イチャつくことだけが付き合うってことじゃないと思うし。一緒にいる時間が楽しいのが優先な人なら、絶対テツコを選ぶと思う」
その後、彼は信じられないことを私に言った。
「でも、実を言うと最近MYとうまく行ってないんだ。もし、MYとダメになったら、その時はテツコと付き合ってもいい」

三度目の正直。これで最後だ。

 
翌週、私は彼をデートに誘った。映画を見た。フランス人もビックリするくらいいちゃいちゃした。映画の後はレストランに行った。レストランまでは歩いて行ったのだが、手をつないで、立ち止まってはキスをした。

「ねぇ、僕の事好きになならないでね。テツコはまだ19歳だし、僕は悪い大人だから・・・」
「なんで?」
「だから・・・」

私の事好きじゃないのかな?映画館で散々いちゃついたのに。若くて可愛いから、一回くらいデートしてもいいと思ったのかな?誰かほかに好きな子がいるのかな?付き合ってる子がいるのかな?もしかしたらMY? 何でもいい。落とす。

その夜、私は彼と寝た。

翌週金曜日、彼の家の夕食に招待された。試飲会のメンバーと、彼の友達4人。私はSとMYを観察することにした。どうやら、私の思ったとおり、SはMYに気があるらしい。MYも嫌ではなさそうだ。

勝つ。負けてたまるか。この私と寝たのにヤリ逃げなんて許さない。

しかし、その夜、私は負けた。Sは私ではなくMYを選んだ。

家に帰っても、あまりの悔しさで眠れなかった。土曜日、一日中何も食べられなかった。日曜日、MCの家の昼食会に行った。SとMYは二人で一緒に来た。ここで、無視したり、よそよそしい態度を取っては、それこそ負けだ。しごく普通に振る舞った。悔しがってると思わせてはいけない。 

SもMYも恨んだりはしていない。恨んでいるのは自分自身だ。S一人落とせなかった自分が。恥ずかしかった。悔しかった。MYに負けた自分自身が情けなかった。

翌週日曜日、MCの家で誕生日会が行われた。もちろんSもMYもきていた。

Sはもう私に興味無いのかな。
確かめてみた。MYの目の前で抱きついたりイチャついたり甘えたりしてやりたい放題やった。Sはまんざらでもなさそうだ。3度目の正直。いや、まだ2度目だ。もう一度チャンスがある。

周りから白い目で見られているのは分かっていた。これで何人友達を失うのだろう。そんなことは構うものか。
こうなりゃ意地だ。体を使ってでも、卑怯なことをしてでも、どんなことをしてでも手に入れる。失うもの方が大きいかもしれない。それでも、欲しいの。

MYは私とSのとんでもない光景を目の当たりにして途中で帰ってしまった。その時、こころの中で「勝った」っと思った。しかし、帰ろうとするMYを見つけたSは帰らないでと言わんばかりに玄関でホットなディープキスをしていた。この悔しさ、一生忘れるもんか。

誕生日会も終盤に近づいたころ「テツコ、ちょっとこっちにきて」とSに部屋の外に呼び出された。天国か地獄か。

「ねぇ、僕はやっぱりテツコが好き。」

素直に喜ぶべきか否か。それが問題だ。