村上春樹の新刊『街とその不確かな壁』の前巻に当たる旧作『この世の終わりとハードボイルド』を連休中に再読して、1カ月かけて新刊を読みました。前巻の扉についていた、壁に囲まれている町の地図を見返しながらきちんと読みました。壁の街の構造は30年経っても前作と全く同じ。

 ↓街と壁と図書館の前作の地図

 読後の感想のあれもこれもを先走って書くことはできないのですが、30年前の前作は間違いなく傑作だったのだ、と思いましたとだけ記したいと思います。また、登場人物の少年の描き方も、社会的影響力のある作家ですから少し心配です。ただの読み物として読んで消費されるだけなら、それでよいのですが。

 

 大江のように、坂本龍一のように、社会と時代にコミットメントして苦しんでもがいて生きた生き様から見て、村上春樹ははるかに遠いところに1人で影を消して立っている…。そのことを思いながら、同時進行で還暦になった私に問いかける、生きることの意味、それはそれで感慨がありました。

 ひどい勝手な憶測で言えば、この時代とともに、または村上春樹の死とともに忘れられていくムラカミハルキ、次に読まれるのは五十年後か百年後か…。

 

 小満や村上春樹の三十年

 

 この一輪咲かせむとして葉の繁る