体温について | Takaomi Ogata OFFICIAL BLOG

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緒方貴臣(映画監督)公式ブログ

昨夜、Facebookに上げた文章ですが、こちらにも掲載します。


この作品の撮影は2年前、原案は4年以上前にもなります。
ラブドールの設定の映画と言えば、『空気人形』を思い出す方が多いと思います。
本当は、僕の最初の作品になるはずでしたが、
前述の『空気人形』が製作中との話を知り、特異な設定なので、パクリ疑惑なんてかけられたら嫌だったんで、企画を無期限延期にしました。

『空気人形』が公開され、観に行きましたが
人形を恋人にする設定は同じものの、
作品自体はマンガ原作のファンタジーよりになっていました。
個人的には、この物語は現実的に描きたかったので
残念に思いました。
やっぱりこの設定で僕も作品を撮りたい想いが再燃して
周りの方に相談したら、
『空気人形』を超えればいい、というお言葉をもらいました。
是枝監督を超えるなんて畏れ多いですが、
その時は、やってみようって思っちゃったんですね。

そう言ってる間に、『終わらない青』を撮っていて
映画祭での上映で観た方々から
技術的な指摘をいくつか頂きました。

正直、当時同じコンペにノミネートされた作品を観たのですが
レベルの違い過ぎに、同じ場にいることをとても恥ずかしく思ったことを覚えています。

ただ中には、技術的なものを抜きに気に入ってくれる方も沢山いて、次回作では協力するよって言ってくれる方々が集まり
本作『体温』ができました。

今観ると、まだまだ足りない部分はありますし、
撮り直したい、再編集したいところもありますが、
当時の僕にできることは全てしたつもりなので
是非たくさんの方々に観てもらいたいです。

僕の作品は、娯楽性がほとんどありません。
物語というものもあまり感じられません。
劇中には、環境音以外の音楽はありません。
セリフも少なく、大きな事件は起こりません。
人物がいるだけ、と言ったら大げさですが、
以上の文章を読むだけで
つまらなさそうですね。
そう、現実はつまらない。
映画やドラマのように事件やイベントなんて
そうタイミングよく起こるものではないし、
基本的に辛く、つまんないと思ってます。

全然、宣伝する文章になってませんが、
それでも面白かったと言ってくれる人たちはたくさんいました。
海外でも反響が強く、劇場公開の話まで来たくらいです。

映画を観に行くって、すごくパワーがいることです。
よく「映画は劇場で」って言いますが、
これは大きなスクリーンで観るとか、
集中して観られる環境で、とかだけではないと
僕は思ってます。
一番、重要なことは、赤の他人と観ること、と思ってます。
社会との繋がりを持って観ることは、
映画を映画の世界だけで終わらせない
大きな要因になると信じてます。

公開はまだ先になりますが、
『体温』を公開の際には是非観てほしいです。
よろしくお願いします。

緒方貴臣