「イニュニック」星野道夫 | ​ 観るチカラを、生きる糧に。 ー SCREEN(私設)研究所

​ 観るチカラを、生きる糧に。 ー SCREEN(私設)研究所

観る映画が、あなたの、わたしの、人生のヒントになる。
ここは、SCREEN(私設)研究所。

潜在数秘術×映画で
「観る」ことと心の関係を
映画を通して読み解いていきます。




イニュニック
・・・エスキモーの言葉で
「生命」


「どれだけ長い時間をひとつの土地で過ごそうと、まだすべては見ていないという心の白地図だけはいつまでも持ち続けたいものです」


・・・彼の文章は
彼自身の言葉と
友人達の言葉。

それから
旅の中で出会った人達の言葉と
彼らから聞いた話。



エスキモーが持つ
たくさんの「雪」を現す言葉。

「英語の雪は“snow”でも、わしらにはたくさんの雪がある」


雪の世界の暖かさは
人間の想像力と無縁ではないのだろう・・・

それを「たどってみたい」だなんて
いったいこの人の五感と心はどうなっているのだろう。

カメラマンが
言葉を持つとこうなるの?



・・・彼の話に登場するのは
いわゆる「アラスカ原住民」
そして、彼と同様アラスカに“住み着いて”しまった人達。

合衆国としての歴史は浅いこの土地に
彼と同じく「何かを求めて」やってきた・・・



土地は、誰を拒むこともない代わりに
冬の厳しい寒さは人を選ぶ。

・・・やってくる者以上に
去る者も多いのだそうだ。

そして、誰の上にも
同じように降る雪。


  冷たくて、暖かく
  優しくて、厳しい、雪。



「クマのいない森はつまらない」
という彼にとっては
雪のないアラスカも
さぞつまらないものなのだろう。



-------



「旅をする木」は泣けて読めなくなるのに
これはフツーに読める。
何故だ。


この本が単行本で世に出たのが93年。
「旅をする木」は95年。
星野氏が“去った”のは96年だ。


私が手にしているのはどちらも文庫版で
氏がもういないことを偲ぶように解説が添えられている。



映画の中で主にとりあげられていたのが
「旅をする木」の方だからだろうか

話は重複もしているのに
「イニュニック」はすごくオンタイムに感じる。
(勿論、今から見れば充分に古いのに)



タイトルのごとく
生命力溢れるというか、



・・・多分、近いのだ
言葉のすべてが
星野道夫という人の
すぐ傍で話を聞いているような
そんな近さ。


イニュニック 生命―アラスカの原野を旅するイニュニック 生命―アラスカの原野を旅する
星野 道夫

新潮社 1998-06
売り上げランキング : 4037

Amazonで詳しく見る by G-Tools