秘蜜の置き場 -27ページ目

秘蜜の置き場

ここは私が執筆したデジモンの二次創作小説置き場です。オリジナルデジモンなどオリジナル要素を多分に含みます。



 若干出遅れた感はなきにしもあらずですが、観てきましたので感想書いていきます。タイトル通り今回はネタバレありです。





 全体としての点数としては80点くらいですね。自分としてはそれくらいは評価できる作品でした。では、ポイントポイントかいつまんで感想としていきたいと思います。


 〇アクション
 大スクリーンで巧い戦闘を見れるってのはいいもんですね。冒頭のパロットモン戦では、市街地を舞台に空を翔け、道路を砕き、ビルに突っ込む大スケールの怪獣バトルを繰り広げてくれました。人間のパートナー達も見てるだけでなく、バックアップ含めて動いてましたし、デジモン達の動きも見やすく決めゴマ的なカットもあって分かりやすくかつテンポが良くて楽しめました。
 オメガモンもCGを有効に使いつつ大立ち回りを演じてくれてオメガモンらしい強さを見せつつ、やられるときもまた鮮烈にやられてくれる名演っぷりでした。
 本編の敵であるエオスモンも各形態や状況ごとに戦闘スタイルを変えていてその凶悪さを見せてくれました。特別圧倒する描写はないものの進化後に繋がる仕込みを済ませていた第1形態。第1形態の仕込みを活かしてインフェルモンを彷彿させる高速戦闘を仕掛け、二戦目ではディアボロモンの如く増殖して現実世界にまで侵食してきた第2形態。そして、強化されたリフレクターを攻撃に転用してオメガモンを解体してみせた最終形態。個人的に蒼穹のファフナーというロボットアニメのフェストゥムの攻撃を思い出しました。色も最終形態神でアプモンに居そうな金ぴかになってるし。カリスモンとフェイクモン辺りとかで合体できそう。


〇音楽
 音楽面は原典のオリジナルやアレンジが多く使われていてその使い方も上手いように感じました。冒頭のボレロからOPのButter-Fly。ホルモン焼き屋の店内BGMに作品No.2「春」イ長調 ~ぼくらのウォーゲーム!~ などが使われていました。ちなみに個人的に好きなのは02勢がラーメンを食べてるときに流れるターゲットのアレンジだったりします。


〇キャラ
 今回はtri.という前例もあり心配していた既存キャラの扱いと新キャラに魅力があるかという点ですが、これについては杞憂といっていいほどのものでした。太一がパチ屋でバイトしたり、一人暮らし男子ゆえの気の緩みを出したりというのが生活感のある感じが変なキャラ付けもされずいい塩梅でした。
 02勢も現実世界の海外を舞台にそれぞれ調査や戦闘に望んだりと、数年前の扱いが嘘のように見せ場がありました。寧ろ先輩方よりも目立っているかもしれません。四人はネバーランドに取り込まれずに戦い抜いたのもサマーメモリーの経験を超えた彼ららしくて良いです。……タケヒカ? まあ、うん。
 先に言った通りキャラは今回活躍にばらつきがあるというか意図的に絞っています。太一、ヤマト、あと光子郎がほぼメインで、タケヒカは序盤の戦闘以降はそこまで。丈とミミはそれぞれの生活の中で動乱に取り込まれ、空については戦いに参戦することすらありませんでした。空に関してはできなかったというのが正しいですね。他の方の感想で触れられていて二度目の鑑賞で確認しましたが、最終戦の最中にはもう空もピヨモンとのパートナー関係が解消されているのでしたから。前日譚があったのもそういう面での補完だったのでしょう。後述する設定をストーリーの根幹に据えた以上、こういう役割を担うキャラが居るのも納得ですし、その立場に空を据えるのも妥当だとは思いました。
 新キャラも限られた時間の中で役割がはっきりしていていました。市村京太郎は潔いまでのミスリード要員として仕事を果たしていました。そして、メノア・ベルッチはかつての選ばれし子供たちが対峙すべき敵として十分な魅力を持っていました。松岡茉優さんの演技もかなり合っててノイズになるなんてことはなかったです。「聲の形」や「バースデー・ワンダーランド」のときより上手くなってます。何気にポケモンの映画以外松岡さんのアニメ吹替見ていたことに気づいた自分が保証します。かつての選ばれし子供にしてモルフォモンとのパートナーと解消を経験したからこその凶行。彼女の記憶を映す演出もあって悲しみや動機は理解できましたし、行動もしっかり脅威として描かれていました。パートナーデジモンを思うが故の人間の暴走との対峙。……これ、自分がアドベンチャーの続編として見たかったものの一つなんですよ。デジモンカイザーとも及川悠紀夫とも違う人間の信念とのぶつかり合いが見たかったのですごく響きました。……まあ、そのために後述の通り新設定ぶち上げられてる訳ですが。
 エオスモンに関してはアクションで触れた通りに各形態ごと個性と強さを見せてくれましたし、メノアが作った人工デジモンとしての在り方としてもいい立ち位置でした。戦闘の決着付近で第1形態が映った時、その内にモルフォモンの思念が籠っているかのように見えているのがまたいい。
 メノアのパートナーだったモルフォモン、わりとデザインもメノアとの思い出演出的にもかなり好きなベクトルでした。フーディエモンへの進化ルートとか妄想しそうなビジュアルと設定ですし。蝶モチーフで記憶や意識に関わるところとか。
 ただ、新デジモンのメインディッシュともいえるアグモン・ガブモンの新形態については正直そこまで心が惹かれませんでした。人型に寄るのにマトリックスエボリューションした訳でもないのは少し変に期待し過ぎていた感があるかもしれませんが。戦闘シーンの動きの少なさも強く見せようとしているにしてもあまり効果的には思えませんでした。ガブモンのファンネルじみた攻撃はわりと好きですし、アグモンも火力はある感じはしますがなんとも。……まあ、そういうもやもやを吹き飛ばすほどの衝撃が「アグモン 勇気の絆」と「ガブモン 友情の絆」という衝撃的なネーミングセンス。見た目は完全にグレイモンやガルルモン要素の方が強いのに成長期の名前を名乗るちぐはぐさとか、単純に「~の絆」が正直ださいと思えてしまうところとか。Twitter辺りで見たネクサスモードとかの方がまだよかったです。
 あとモブですけど、フランスでエオスモンから少女を守り抜いたヌメモンに涙が止まらない。


〇シナリオ
 デジモンアドベンチャーや02へのリスペクトもありますが、それ以上に劇場版に対するリスペクトが感じられたシナリオであり作品でした。冒頭のパロットモン戦や後半の逆転を握るホイッスルの演出は初代劇場版、サイバー空間の演出やエオスモン第2形態の増殖などはぼくらのウォーゲーム、そして幼き思い出への回帰を望むゲストキャラとそのパートナー関係の喪失や後半戦闘におけるダークな雰囲気は02のデジモンハリケーンへのリスペクトが感じられました。実際パンフレットでも触れられていましたし、ウォレスとグミチョココンビに似たシルエットもありましたし。……メタ的なサービス無しに考えるなら親戚でしょうか。tri.に関しては望月芽心が取り込まれてたりと軽いフォローをしながら、反面教師というか叩き台にして要素を上手く抽出した感じに思えました。特に感じたのはゲストキャラ二人と姫川・西島の類似性です。暴走する選ばれし子供だった女性と彼女を止めようとする男性という立ち位置。違う点はそれぞれの行動がちゃんと理にかなって結果が伴っていることですかね。
 シナリオそのものについては縦軸がはっきりしていてテンポもよく程よくどんでん返しもあるバランスのいいものだったと思います。冒頭のパロットモン戦で引きつけ、日常描写とそこに異変を潜ませてメノア達の登場とエオスモンの初戦に流れ込み、逃走を許すと同時に根幹の設定が明かされ苦悩する。02勢の力を借りて素行調査をしていたところでタケヒカが拉致られ、ミスリードの答え合わせをしつつ、本性を現したメノアとのネバーランド決戦に臨むという流れ。少なくとも「誰と戦っているんだ」なんて間抜け極まりない台詞が出る余地はないです。キャラで触れたとおり人間の信念に対峙するシナリオになっているのも個人的にグッドです。
 ただまあ細かい粗というか無駄な要素がないという訳でもないのも事実です。特に冒頭のパロットモン戦で使い損ねた試作品ゴーグルや中盤まで使い通していたスマホ型の新デジヴァイスのガジェット類二点は正直なくても影響がないと思います。後者に至っては後継機的な立ち位置な訳ですが、出自も差別点も特に明かされなかったためフィクションのガジェット好きとしてもさして心惹かれないというか、正直普通のスマホでも何ら問題なかったと思います。
 今作のシナリオにおけるネックと呼べる過去作と相容れない設定――「大人になるとデジモンとのパートナー関係が解消される」という点については予め事情知っていた身としてはまあシナリオのために作った設定だという印象が強いせいかあまり乗り切れなかったですね。角銅氏がデジモンという存在を人類種全体の進化の証のように扱っていたのと相容れないのも納得ですし。というか及川由紀夫さんはどうなるんですかね。別のピピモンも居たのに。
 オチとしては結局は分かれて今後の再会のために頑張りますよというテイマーズ的な終わりで、パンフレットによると02最終回に繋がるとのことです。しかし、あの最終回があるからこそ離別に対する希望ではなく微妙なノイズに受け取られる可能性もあります。既成概念を壊すという思惑はあるのは分かりますが、もう少しやりようはあったと思います。


 数年前の地獄を越えた身としては多少粗はあれど、ちゃんとまとまったシナリオでダイナミックなデジモンの戦闘が見れたので満足してます。
 ただ四月からリメイクがあるのを踏まえると何とも微妙な気持ちになるのも事実だったりします。同じプロダクトで横の連携が取れてないのか取れた上で敢えてなのか。とりあえずこの一区切りから四月のリメイクがよい作品で子供達に受け入れられることを望むばかりです。