「そうだったの……本当に頑張ったね」
一也の告白を聞いて、葉月が一番最初にかけた言葉はそれだった。あのとき一也が泣いたときに掛けてくれた言葉も、相手を気にかける柔らかな言葉だった。黒いところはあっても、本当の芯の部分で人を気遣えるそういうところに自分は惹かれたのだと彼は再確認した。
だからこそ、彼女に対して問いかける必要があった。
「こんな俺でも幻滅しないでくれますか?」
ここまで言ってしまえば、もう離れていってしまうのではないかと思っていた。それが怖かったから、ここまで時間が掛かった。だが、もう大丈夫。どんな返答でも構わない。ただ、ケジメとして聞いておきたかった。
「言ったでしょー、私達を信頼してくれって。君が見てきた私はその程度でどーこーするような女だった?」
答は自分が憧れついていこうと決めた彼女らしいもの。向日葵のような眩しい笑顔が自分に向けられていることが、一也にとって大きな光となった。心の奥に刺さった冷たい杭はとっくに解けていた。
「いいえ。そんな女だったらここまでついてはきませんでした」
返した言葉は本心から思えたこと。眩しいくらいの暖かさを知っているから、彼女についてこれた。だから、改めて彼女のことを守れる強さが欲しいと願う。
その願いは掌の中の銃に宿るかたちで叶えられた。
「ありがとう、話してくれて。ずっと待ってた甲斐があったよ」
「……はい」
充が穏やかに声を掛け、今も少し震えている三葉の手を優しく握る。それだけで震えは完全に止まり、三葉は改めて自分の中での彼の存在の大きさを確認した。
「でも……いや、だからこそ断言する。誰でも良かった、なんてことは絶対にない」
「……え?」
真っ直ぐに見つめて紡がれる言葉はしっかりと三葉の胸に染みわたる。その真意をもっと聞きたいと思った。
「誰かに必死に忠義を尽くす関係。それに憧れていたとしても、それだけでここまでついてきてくれた訳じゃないないだろ。僕が君のイメージを超えていたからさらにのめり込んだって、君自身がそんな風に言っていただろ。君が僕をそこまで想ってくれたから、ここまでついてきてくれたんじゃないのかい?」
「…………はい」
珍しく熱を持った充の言葉。長い間一歩前を歩いてきたかれだから出たその言葉をゆっくりと咀嚼する。そうしてちゃんと自分の心を見つめ素直になれば、その言葉通り誰でもよかったなんてことはなかった。
あのとき充についていきたいと思ったのは事実。だが、それは彼だからこそそう思えた。
自分の本当の気持ちに気づいた瞬間、長い間刺さっていた杭は自然と抜け落ち、心の奥底から歓喜が溢れた。
そして、それは新たな決意となって、彼女の掌の中に収束する。
素直になって心の奥に隠していたことを話して本当に良かった。自分が憧れていた人がそんな狭量な人ではないと分かっていたはずなのに、勝手に臆病になって悩んでいただけの話。それでも――多少の催促はあったかもしれないが――長い間待っててくれたことに心から感謝する。
そして、今恩返しとして出来ることは目の前の脅威を掌の中に宿った力で打ち払うこと。この人を守りたいと思った本心を裏切ることはしたくない。
ほぼ同時に心を決めた二人の小さな騎士は同時に宣言して愛銃の引き金を引く。
「「超進化弾」」
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とりあえず年が明けるまでに更新できて良かったです。阿呆みたいに時間かかりましたが……。それにしてもASCIIコードを延々と打ち続けるのってきついですね。腱鞘炎になるかと思いましたよ、ハハハ……。
一年間お疲れ様でした。来年もよろしく願いします~。…………昨日はクリスマスイブ? 何それおいしいの?。