「夫………?」
菜月(なつき)は目を見開き、男の言葉を繰り返した。
「何を、言ってるんですか……?」
彼女の自室のベッドに腰掛けた男・昂希(こうき)は、自分を見つめる菜月の様子に、面倒そうに肩をすくめてから口を開いた。
「いや、だから、そのままだよ。 俺はお前の旦那。 俺たち結婚するんだよ。」
しばし固まっていた菜月は、ふいに花梨那の言葉を思い出した。
「……まさか………!」
真実を知った菜月は思わず口をおさえ、狼狽した。
他になすすべがなかった。
そんな菜月を見かねた昂希は、菜月のベッドから立ち上がり彼女に近づいた。
「まあとりあえず、シャワーでも浴びてきたら? この後寝るんだろ?」
自分に近づく昂希に、菜月はより警戒を強めた。
「近づかないで。」
その言葉に、昂希は目を丸くした。
「おいおい、出会って早々、俺は嫁に嫌われるわけ?」
一瞬落ち込んだ様子を見せた昂希は、鋭く菜月を見た。
目の奥に悲しみを秘めた、冷たい瞳。
昂希の眼光に、菜月は怯えた。
「……それか、もう手っ取り早く済ませちゃうか。」
そう言って昂希は菜月の腕を引く。
油断していた菜月は、たやすく昂希の力に流され、ベッドに押し倒されてしまった。
呆然と天井を見つめる菜月は、今、自分の身に起こっていることを現実だとは思えなかった。
いや、思いたくなかった。
今、自分の上にいるこの男は、出会ったばかりで何者かも分からない。
だけど。
ただ一つ言える。
自分に触れるのは、愛する和雄のみ。
そうでなくては。
他の誰かなど、許されるはずもない。
「……どいて……。」
腹の底から絞り出すように低く、菜月は言葉を吐いた。
そして天井より自分の近くにいる昂希を睨みつけた。
その様子に、昂希は一瞬目を見張った。
「なんで? 俺は、お前の夫なのに。」
「違う。」
「違わないって。」
「違う!!」
「……あーもう……、だるいって、そういうの。」
反抗する菜月の様子にため息をついた昂希は、すかさず菜月の首元に口づけた。
その感触のおぞましさに、菜月は身震いした。
「やめて!! 触らないで!!」
その言葉にも昂希は耳を傾けず、菜月の胸元をはだけさせ、肩に直接口づけた。
目に涙をにじませ、菜月は叫んだ。
「私は、あなたのものなんかじゃない!! これ以上、私に触ったら死んでやるわ!! ただじゃおかないわよ!!」
「……おいおい、落ち着けよな。まったく……。」
昂希は菜月を見下ろし、呆れている。
その時、菜月の自室のドアが勢いよく開いた。
To be continued
~追伸~
TATSUさん、メッセージありがとうございます
Ameba本部さんですか、頼めるかなあ
誕生日に大好きなアーティストさんのライブは最高ですね
いつもメッセージ大変励みになっております
皆様、39話、読んでくださりありがとうございます
次回もお楽しみに
浅田瑠璃佳