【35話】ある豪勢なお屋敷で【web小説】 | 浅田瑠璃佳@物書きブログ✡✡言の葉の楽園✡✡

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ある冬の朝。



やわらかな日差しが、カーテンの隙間から部屋に差し込む。


ベッドに一糸まとわぬ姿で横たわる花梨那(かりな)と、その隣に男性の姿がある。


彼女はまだ夢の中である。

男は彼女の儚く美しい寝顔を、息をひそめて見つめている。

やがて微かに、彼女のまぶたが動いた。


「……お目覚めですか?」


男が、優しい声で花梨那に問いかける。

彼の声には、溢れんばかりの愛情が込められていた。


花梨那はしばし天井を見つめていたが、やがて隣の男に目線を移した。

彼女は彼の顔を、まぶしそうに見つめながら口を開いた。


「ええ。……外は晴れているのね、前島(まえしま)。」


前島は穏やかに、彼女の言葉に頷いた。

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神山家のメイド・菜月(なつき)と対峙したその翌日。

花梨那は実家へと足を運んでいた。



院上寺の屋敷の中を、彼女は懐かしさを胸に感慨深く見回した。


自分が神山家に嫁いだ日、ここには二度と帰らないのだろうと思っていた。


神山家の次期社長夫人として、立派に務めを果たして、………幸せに暮らしていくだろうと信じていたから。



しかし、現実はあまりにも違った。



このままではいられない。


変えなくては、この状況を。

院上寺家へ帰省した花梨那の目的。

それは………。



「……お嬢様?」



背後から聞こえた声に、花梨那は目を見開いた。

そしてその声の主見たさに、たまらず後ろを振り返る。


「……前、島……。」


花梨那はその名を呼ぶと同時に、溢れる涙を必死にこらえようと肩を震わせた。

今、彼女の目の前には、彼女が最も会いたかった男の姿がある。

あの頃と変わらぬ、礼儀正しく整えられた茶色の髪と口ひげも……。




一方。



突如現れた花梨那を見て、前島は言葉を失っていた。

しかし何よりも、彼女が今自分の目の前にいることに極上の幸せを感じた。

涙を抑えきれず、それでも強がる彼女に対する愛しさは昔も今も変わらない。

前島は微笑み、口を開いた。


「おかえりなさい。」


彼のその一言が、花梨那の心に暖かな風を吹かせた。


彼女は時が止まったかのように前島を見つめていたが、やがてその場で声を上げて泣き出した。

そんな彼女を、前島は自分に引き寄せて強く強く抱き締める。

彼の目には、涙が光った。

花梨那も彼の背に、しがみつくように腕を回した。

この時の二人には、令嬢と使用人という身分差など何の足枷にもならなかった。


神よ。

地獄に落としたいのなら落とせばいい。


だが今だけはどうか、二人を隔ててくれるな。



今だけは。



To be continued



ハート前回のお話はこちらからどうぞひらめき 


~追伸~



TATSUさん、メッセージありがとうございますニコニコ花束
正しさは存在しない、確かにキラキラ
偶然ですが、最近自分も虫歯を疑って歯医者さんに行きました不安
結果的に虫歯はありませんでしたが、歯石取りがけっこう痛かったですアセアセ
でも歯を綺麗にしてくれる歯医者さんには感謝しかありませんニコニコ愛


カメ浅田瑠璃佳カメ