放射性物質の基礎知識 | とりあえず

東京ウィメンズプラザで行われた東京都消費生活総合センター主催の読売・日本テレビ文化センターのセミナー に行ってきました。この日の講座は、以前ブログ にも触れた緊急消費者講座「惑わされない放射性物質の基礎知識」です。


国立がん研究センター中央病院の伊丹先生と、フードアナリスト協会「放射能と食の安全を考える会」の若尾先生が30分ずつお話してくれました。スライドは用意されていましたがデータが中心で、特に原稿などもご覧になっていなかったので、ぴったり30分というところが一番印象的でした…笑!しかし、なかなか難しい内容を聞いてメモしてスライドも見る…となると、せめて40分ぐらいにスローダウンしてほしかったな…汗!



皆さんも興味ある話題だと思うので、間接的ではありますが、またスピーカーはお二人ですが、視点が違うもののデータなど重複する部分も多かったので、ひとまとめにシェアさせていただきます。



基礎知識ということですから、言葉の定義や放射線の性質なども説明していただいたのですが、そのあたりは簡単に調べられることなので割愛し、結論とそれに至る考え方、特に私がなるほどと思った考えをお伝えします。以下、聞いた話を私のメモに依存して書いており、数値等に間違いがないとも限りません。細部ではなく考え方の例としてお読みください。



ズバリ、私たちはどうしたらいいの?

答は、少なくとも東京に住んでいる人が大騒ぎする必要はありません。健康的な普通の暮らし、普通の食生活をすることです。一番危険なのは必要以上に心配して過度なストレスにさらされることです。



まず放射線はDNAに直接働きかける性質があるとのことで、それ故にがん治療などに有効に利用されているわけです。一方、放射線による人体への影響として、確定的影響と確率的影響があります。


確定的影響は、しきい値という一定程度以上の大量の放射線が当たった時に影響が現れます。その一番低いものが、胎児に影響する100mSVというレベルなので、放射線を取り扱う職業従事者の被ばく上限として5年間で100mSVという基準が設けられています。また一時的不妊の影響が現れるのが250mSV、一時的脱毛が現れるのが500mSVということで、緊急時の作業員の規制値が250mSVとされました。


確率的影響としては、がん発生率の上昇と遺伝的負荷があり、人体にデータがあるのはがん発生率の上昇 です。その上昇率は、100mSV被爆した場合で0.5%程度。これは、受動喫煙の場合と同じ程度の上昇率です。緊急時被ばく限度の250mSVの場合、運動不足の場合と同じ程度の上昇率で、喫煙の場合、毎日3合以上の飲酒、やせすぎの場合、肥満の場合などよりもリスクは低くなります。なので、たとえその基準値の被ばくをしたとしても、生活習慣を整えることで、がん発生率の点では改善させることも可能です。



食品に含まれる放射線という点でも、日本で市場に出回っているものを食べている範囲では、たとえ基準値を超えたものを何日か食べたとしても、人体に影響が出るレベルにはなりえません。

気になる方は、問題の数値を入れて試算 してみてください。


その他、食品分野でも除菌、殺菌目的で従来から放射線が利用されています。

まず、プラスチックの殺菌にも多く利用され、マヨネーズの星型の部分は、放射線を利用しないとできません。

食品への直接的利用として、日本でもジャガイモの芽止めへの放射線利用が認められていますし、輸入はされていませんが、海外では玉ねぎ、にんにくへの利用もされています。また、海外では牛肉の滅菌にも利用されています。

人工的という意味では、食品添加物にも同じように気を配り、とりすぎないことが大事です。



影響は現れないとはいえ、被ばく量は低くしておくのに越したことはないため、また生活習慣として、帰宅後の手洗いうがいは◎です。食品を洗ってから食べるのも基本です。放射線物質は、基本的に花粉と同じように、ふき取ったりふり払ったりして、取り入れない、持ち込まないという対処ができます。だからといって、熱い夏に東京でマスクする必要はありません。

よくホットスポットということが言われますが、都内で一番高いのは銀座4丁目です。これは、和光の御影石が放射線を出しているためです。同じ理由で、一般的には、関西の方が放射線の測定値が高くなります。世界で見ると、ブラジルのガラパリ、イランのラムサール、インドのケララなどでは、年間5-10mSV超が観測されていますが、そこに住む人に特に健康障害があるわけではありません。



歴史的にみた場合ということで、高円寺で観測された放射線量が紹介されました。同じグラフがないかと探したところ、元データ がみつかりましたので一度ご覧になってみてください。


米ソが核実験を繰り返していた時期、その後中国を中心に核実験を繰り返した時期などは、最悪と言われたチェルノブイリ原発事故と同じオーダーで長期にわたり観測されています。また、現在でも春になるたびに観測値が多少上がりますが、放射線を含んでいるとみられる黄砂の影響です。


以上が、私のメモをベースにしたまとめです。



きっかけは、子どもの健康被害を心配しての参加だったけれど、彼らの将来の累積被ばく量よりも、私の累積被ばく量の方がはるかに高そうです。私よりも上の世代はもっと高くなります。農薬なども問題視される前だと、よく洗わないでいろんな実なども取って食べていそうです。すでにかなり内部被ばくしているのかもしれません。



この観測データを見た途端、細かいことを気に病んでもはじまらないってことがよくわかりました。

細かい数値を気にできる現在の日本は、基本的には安心して暮らせる国だということです。


だからといって、自分がよければいいとか、現状容認ということではありません。国家としての国内、海外への責任、エネルギーの問題、被災地域の問題、食品の問題、考え始めたらきりがありません。簡単には結論が出ない問題ばかりです。でも、国民の一人の責任として、正しい判断をしていくためにも、正しく理解することを怠ってはいけないと思っています。



今回と同じ講座 を含め、緊急消費者講座 がまだ何回か開催されます。

ご存知の内容ばかりかもしれませんが、断片知識の総まとめをするのも悪くないと思います。お時間があればぜひいらしてみてください。