その羽根を手折る危うさを | Papytat~東京農工大学生協読書部~

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「東風荘」に完全にハマってしまったナカムラです。
こうやって人はギャンブルにのめり込むのですね。

読書感想です。読んだのは、

「僕は天使の羽を踏まない」
   大塚 英志

注目はあとがき。
ここで作者は「ライナスの毛布」について書いてます。
毛布=子供の世界を守る防御壁や翼になるアイテム、というわけです。

海外の児童文学では、
物語の終わりのほうで、主人公たちが現実と向き合うエピソードが入っていたりします。

「長靴下のピッピ」では、主人公の兄妹が「大人にならない薬」がただの豆であると看破し、
黄色いくまのご主人様は学校へ。

大塚英志は、それらと同じことを
より露骨に、現代風に
「僕は天使の羽を踏まない」の中で試みてます。
つまりは、空想の翼をやや乱暴に手折ること。

物語に対する裏切りと言えばそれまでなので、
物語にどっぷり浸ってなんぼ、という方には御勧めできませんが、
「ピッピ」や「ローラースケート」、「はてしない物語」が好きだった私としては
なかなか楽しく読める本でした。
「ローラースケート」、知ってる人いるかな? いたらすげー嬉しい)

…ところで。
もし、なんらかの事情によって、
「ライナスの毛布」を手放せないまま大人になってしまった人は、どうなるのか。

その答えが
「バットマン:キリングジョーク」で描かれているんですねえ。
けけけけけ。

バットマンとジョーカー。ヒーローとヴィラン。
自分の罪と狂気を知りつつも、醜く変わり果てた「ライナスの毛布」にすがりつくしかない大人たち。
もはや未来も救いも得られない二人が、最果ての遊園地で繰り広げる絶望的な死闘…


ああ…

最高!!!!