ここにこうして
毎日
今週分のKindleから漏れた
落書きのような物語を載せてみると
面白いことに
これはダメかな? と思って
Kindleから外したものが
以外とウケたりもする
世間と
僕とは
さほど変わらない思考かと
なんとなく思って来たけれど
昨今 年老いたのか
わずかづつそれが
ズレても来たらしい
これからもしばらくは
こうして
週に10編縛りのKindleから
漏れたものを載せてみようかと
思ってみるけれど
ならはここでは
そこそこのチャレンジを
してみようかと思いながら…
竜 宮 城 リ バ ー ス
――クサガメと量子玉手箱――
【まえがき】
昨今、毎晩のように妙な夢を見る。
若い頃の後悔だったり、昔助けた生き物だったり、あるいは「あの時、違う選択をしていたらどうなっていたか」みたいな、人生の分岐点ばかりが、寝ている間に勝手に上映される。
年齢のせいなのか、脳の整理整頓なのか、それとも宇宙のどこかにある巨大な「思い出サーバー」が、勝手に過去データを再生しているのか――その辺りは私にもよく分からない。
ただ一つ言えることがある。
どうやら人生というものは、自分が思っている以上に、小さな縁と偶然で出来ているらしい。
道端のカメを助けたこと。川で釣った魚を逃がしたこと。昔、恐ろしく怪しいスナックのドアを開けなかったこと。
そんな些細な出来事が、もしかしたら別の世界線では、地球滅亡や一千年後の未来や、多次元竜宮城にまで繋がっていたかもしれないのである。
……いや、たぶん繋がっていない。
しかし、人間という生き物は、「もしも」を考えるのが好きだ。
あの時こうしていたら。あの人と会っていたら。あの道を曲がっていたら。
本書は、そんな人生の“もしも”を、少しバカバカしく、少しSFっぽく、そして少しだけ切なく料理した物語である。
肩の力を抜いて読んでいただきたい。
もし読み終えたあと、道端でカメを見かけた時に少しだけ優しくなれたなら――あるいは、昔の黒歴史を笑えるようになったなら、著者としてとても嬉しく思います。
それではどうぞ。
多次元時空要塞【竜宮城】への、ゆるい旅へ。
第一章
トータス・フラグメントの恐怖
私はこれまでに一度も、ウミガメを助けたことがない。浦島太郎のように、砂浜で子供にいじめられ
ている哀れな爬虫類を「これこれ、いじめるのをやめなさい」と一喝し、スマートに救出した経験など
ゼロだ。
しかし、なぜか私は「クサガメ」にだけは異常にモテた。それも、およそ水辺とは程遠い、アスファル
トの照り返しが厳しい農道においてである。
一度目は、スクーターでトコトコと走っている時だった。前方の路面に、妙に大きな「動く石ころ」が
見えた。接近してみれば、それは紛れもないクサガメであった。彼は、今にも対向車の軽トラックにプレ
スされそうな絶望的ポジショニングで、悠然と横断歩道のない道路を横切ろうとしていた。
二度目は、お気に入りのクロスバイク(自転車)で汗を流している時。そして三度目は、マイカーを運
転している時だった。
「またお前か!」
私は三度目ともなると、手慣れた手つきでハザードランプを点滅させ、車を路肩に急停車させた。後続
車と対向車を「ちょっとごめんね」と両手で制し、車から降りる。まるでVIPの車列を誘導するSPのよう
な手際である。周囲のドライバーたちも、私の見事な亀救出劇を察し、フロントガラス越しに「いいよい
いよ、やっておしまい」とばかりに、快く微笑んで待ってくれた。日本人の温かさが五臓六腑にしみる
瞬間である。
私はそのガサゴソと抵抗するクサガメを拾い上げ、近くの水路の土手へと運んだ。そして、亀の甲羅を
ポンと軽く叩き、こう声をかけたのだ。
「もう、道を迷うなよ。そして、長生きせよ」
この時はまだ知る由もなかった。私のこの「親切心」が、宇宙の因果律(コーズ・アンド・エフェク
ト)をズタズタに引き裂き、驚異の時空連続体バグを引き起こす引き金になろうとは。
帰宅後、リビングでこの出来事を子供たちに自慢げに話した時のことだ。長女がポテトチップスを齧り
ながら、冷ややかな、しかし妙に鋭いSF的考察を口にした。
「パパ、それってさ、きっといつかその亀たちが戻ってきて、パパを竜宮城へ招待するフラグじゃな
い?」
「おお、浦島太郎か。お土産は玉手箱かな?」
私が笑うと、次女が真顔で恐ろしい現実を突きつけてきた。
「笑い事じゃないよ。ウラシマ効果って知ってる? パパが竜宮城のキャバクラで数日イチャイチャし
て帰ってくる頃には、地球では百年も二百年も過ぎてるんだよ。……つまり、私たち、もう生きてない
から。パパは孤独な未来人になるの。じゃあね」
子供たちのあまりにもリアルなディストピア的未来予測に、私は少し背筋が寒くなった。だが、まあ所
詮は農道のクサガメだ。まさか彼らが、そんな超空間跳躍ドライブを搭載しているわけがない――その時
は、そう自分を納得させたのだった。
第二章
渓流のネイティブ・ネゴシエーター
亀の件から数ヶ月後、私は山奥の渓流にいた。趣味のフライフィッシングである。マイナスイオンを浴
びながら、私が下手くそなりに自作した「型崩れした毛針」を水面に躍らせる。それはお世辞にも美しく
はなく、どちらかと言えば「瀕死の謎の羽虫」にしか見えないシロモノだった。
ところが、である。バシャッ! という凄まじい水飛沫とともに、驚くほど巨大なイワナがその不格好
な毛針に食いついたのだ。激しいファイトの末、私はその美しい大物をランディングネットに収めた。
「ありがとな。でも、お前は騙されやすすぎるぞ。もう誰にも釣られるなよ。子孫を残して、長生き
せ〜よ」
そう声をかけ、そっとフックを外して川へリリースした。普通の魚なら、一目散に深みへ逃げ帰るはず
だ。しかし、このイワナは違った。浅瀬に佇んだまま、じっとこちらの顔を見上げている。その口元
が、心なしかパクパクと動いていた。
『……ワレ……空間の……歪みを……感知……せり……』
そんな幻聴が聞こえた気がした。私には残念ながら、魚類のテレパシーを正確に翻訳する「魚語翻訳機
(フィッシュ・リンガル)」の能力は備わっていない。私が首を傾げていると、イワナは諦めたように
「バシャバシャ!」と勢いよく尾鰭を振って、緑の深みへと消えていった。まるで「話が通じないな、こ
の人類は」と言いたげに。
その後も、私のユルい姿の毛針に、なぜか何匹もの魚たちが次々と食いついてきた。「今日は僕の
ヘッポコな毛針に付き合って、バカし合いのゲームをしてくれてありがとう。来シーズンも来るから、次
は騙されるなよ」と、私は川の神々に微笑みかけ、釣竿をたたんだ。
しかし、気づけばあたりは急速に暗くなっていた。渓流釣りに熱中するあまり、時間を完全に忘れて
いたのだ。ここはいわゆる、携帯の電波も届かない「超・山奥」である。熊が出てもおかしくない。私
は焦りを感じ、車を停めた林道へとテクテクと急ぎ足で山道を下り始めた。
その時、前方の藪から、ガサゴソと何かが這い出てきた。
「……え?」
私の目の前でピタリと止まったのは、一匹の亀だった。山奥の渓流沿いだ。イシガメか、あるいは例
のクサガメか。暗がりのなかで亀とバチッと目が合った瞬間、私の脳内に、骨伝導スピーカーを最大ボ
リュームにしたような「声にならない声」が直接流れ込んできた。
『あの日は、ありがとうございました。おかげさまで、こうしてサイボーグ化することなく元気にして
おります』
「うわあ! 喋った!?」
『ええ、正確には脳内量子通信です。いつかまたあなたにお会いできる日を、我々一同、全宇宙の
ネットワークでお待ちしておりました』
「え、ええと、何だっけ? どちらの亀さまでしょうか?」
『ほら、あの日の農道です。ハザードを焚いて軽トラを止めてくださった……』
「ああ! あの時の亀さんか! 元気そうで良かったけど……って、なぜこんな標高八百メートルの山奥
にいるんだよ!?」
亀は甲羅のスピーカー(?)を震わせるように言った。
『ご安心ください。我々「タートル・トランスポート社」の技術をもってすれば、ここでも、どこの水
辺からでも、多次元宇宙のハブ駅である【竜宮城】へと直通のワームホールが繋がっているのです。あの
日のお礼に、今から最高級の多次元キャバクラ……ゲホン、竜宮城へとご案内いたしましょう』
魅惑的な提案だった。しかし、今の私は暗闇の山道で遭難しかけているのだ。それに、今日中に家に
帰らなければ妻の雷が落ちる。
「へ〜、それは凄いね! でもごめん、今は急いで車に戻らないと遭難するし、今日中に帰宅しなきゃ
いけないんだ。有り難いが、今回はパスで! また次回にでも!」
『そうですか……。タイムパラドックスの調整が面倒になりますが、仕方ありません。では、またど
ちらかの世界線でお会いしましょう』
亀はそう言い残すと、驚くべきスピード(時速四十キロメートルは出ていた)でブッシュの中へと消え
去った。私は夢でも見たのだろうと、車へ急いだ。
第三章
エメラルド・エフェクトと一千年の孤独
その「次回」は、驚くほどすぐに訪れた。しかも、場所は山形の山奥から一転、常夏の沖縄である。
私は、那覇で釣り船の船頭をやっている地元の友人(大の酒好き)の案内で、とある美しい無人島に
上陸していた。人類の文明から隔絶された、エメラルドグリーンの海。友人はルアーを、私は懲りずに例
の「型崩れしたフライ」を投げ、熱帯魚たちと高度な心理戦(という名のバカし合い)を楽しんでいた。
すると、波打ち際にプカプカと、数匹の小さなウミガメが浮かび上がってきた。彼らは私を見ると、
明らかに「あ、ターゲット発見」という目で近づいてきた。
「どうした?」と私が問いかけると、脳内にあの量子音声が響く。
『お迎えに上がりました』
「どこへ?」
『お約束の、多次元時空要塞【竜宮城】ですよ』
「えっ? いやいや、ちょっと待ってくれ。確かにそんな約束を山奥の亀とした覚えはあるが、ここは
海だ。しかもキミたちはウミガメだろう? 私は人生でウミガメを助けたことは一度もないぞ!」
ウミガメは呆れたようにパタパタと前鰭を動かした。
『お客様、我々カメ類は、海も山も川も陸も、すべてのタイムラインが量子もつれによって繋がってい
るのです。どこからエントリーしても、竜宮城のデータベースは一元管理されております。あの日、農道
であなたが救った「三つの生命(スリー・タートルズ)」が、どうしてもあなたに恩返しをしたいと、こ
ちらの時間軸を指定してきたのです』
横を見ると、船頭の友人がビール缶を片手に、なぜか全てを納得したような顔で頷いていた。
「おいカトウ、せっかくだから行ってきなよ。多次元竜宮城なんて、一生に一度のチャンスだろ? 俺
は明日、まったく同じ時間にこの場所へ船で迎えに来るからさ。男の約束だ、ここで待ってる。だから、
時間を気にせず遊んでこい!」
「おい、いいのか?」
波打ち際に、突如として軽自動車ほどもある超巨大なウミガメが浮上した。私は半ばヤケクソになり、
そのサイバー感漂う甲羅に跨った。カメが潜行を開始した瞬間、私の周囲に球体のバリアが展開し、水が
存在しないかのような快適な空間が生まれた。私たちは光速を超え、深海へとワープした。
たどり着いた竜宮城は、まさに「絵にも描けない美しさ」……を通り越して、完全にオーバーテクノロ
ジーの結晶だった。ホログラムのネオンが輝き、見たこともないサイケデリックな魚たちが乱舞してい
る。驚いたことに、つい先日、山形の渓流でリリースしたはずのあの巨大イワナたちが、タキシードを着
て笑顔で(魚類特有のポーカーフェイスだが)私を出迎えてくれたのだ。
「いやあ、あの時の毛針は最高にユルくて美味そうでした!」と、イワナがシャンパングラスを片手に
(?)語りかけてくる。私は彼らと最高級の量子酒を酌み交わし、時間の感覚を完全に失って大宴会を
楽しんだ。乙姫様がアンドロイドだったか人間だったかも定かではないほど、私は酩酊した。
「ハッ……! いけない、そろそろ戻らねば!」
私は友人が無人島で待っていることを思い出し、立ち上がった。
『もうよろしいのですか? まだメインディッシュの量子キャビアが出ておりませんが』と亀の支配人
が引き止めるが、私は首を振った。
「船頭の友達を待たせるわけにはいかないんだ。一日だけの約束だからね」
私は大きなカメに再び跨り、現実世界へと送ってもらった。眩しい沖縄の太陽が目に染みる。ウミガ
メたちは「ありがとうございました」とテレパシーを残し、静かに海へと帰っていった。
「ふう、楽しかった。……さてと」
私は砂浜を見回した。そこには、約束通り、友人の姿があった。しかし、何かがおかしい。彼の愛船
はボロボロに朽ち果てて砂に半分埋まっており、何より、浜辺に立つ友人の姿は――頭髪も髭も真っ白
な、ヨボヨボの「おじいさん」になっていたのだ。
「す、すまん! 待たせたかい?」私が駆け寄ると、老いた友人は、歯の抜けた口元でニヤリと微笑ん
だ。
「ああ……一千年間、待ったよ」
「一千年!? おい、どうしたんだその姿は!? 何があった!?」
老人は、遠い目をして水平線を眺めた。
「お前が亀に乗って消えた翌日、大きなカメが俺の前に現れてこう言ったんだ。『もしカトウを待ち
続ける覚悟があるなら、貴方に一千年の寿命のナノマシンを授けましょう』ってな。俺は意味がわからな
かったが、お前と『明日ここで待つ』って約束しちまったからな。だから、ず〜〜〜っとここで、こう
して釣りをしながら待っていたのさ」
「一千年も釣りを!?」
「ああ。しかし、残念なお知らせがある」友人は肩をすくめた。「お前が竜宮城でバカ騒ぎしている間
に、上の世界……つまり地球の文明は、バカな人類どもの自業自得による核戦争と環境崩壊で、完全に
滅亡しちまった。世界は消えたんだよ」
「ええええええええええっ!?」
「でも安心しろ。この無人島だけは、あのカメどもが張ってくれた量子バリアのおかげで、ほら、一
千年前と変わらない楽園のまま残されている。……ところで、お前、カメから何か土産を貰わなかった
か?」
私はハッとして、小脇に抱えていたメタリックな輝きを放つ立方体の箱を見た。「あ……。箱をひと
つ、貰ってきた。『もし戻った世界が変わってしまっていたら、この箱を開けなさい。世界はまたリバー
スする』って言われたけど……」
一千年間、孤独に釣りをし続けた白髪の友人は、悪ガキのような笑みを浮かべた。
「そうか。ならばどうする? 開けてみるか!」
私は、一千年の信頼を寄せてくれた友の目をまっすぐ見つめ返した。
「良し! そうしよう!」
私がそっと、その量子玉手箱のフタを開けた瞬間――箱の中から、宇宙誕生(ビッグバン)をも凌駕す
るほどの、それはそれは凄まじい「純白の光」が溢れ出した。まぶしい! 私は思わず両目を強く閉じた
――。
第四章
めだかとスナックの因果律
「うわああああっ!」
私は大汗をかいて跳ね起きた。 視界に飛び込んできたのは、見慣れた我が家の寝室の天井だった。時
計を見る。二〇二六年。人類は滅亡していないし、私は一千年の未来に取り残されてもいない。もちろ
ん、白髪の老人もそこにはいなかった。
「夢……か」
私は盛大に背伸びをし、首や肩、膝の関節がいつも通り(少しガタはきているが)動くことを確かめ
た。あまりにも壮大で、あまりにも滑稽な超時空の記憶が脳からこぼれ落ちてしまわないうちに、私は枕
元のスマートフォンを掴み、この『忘れ急ぐ夢』を一気に書き留めた。これだけのSF大作だ、Kindleで
出版すれば少しは話題になるかもしれない。
落ち着いた私は、寝起きのアタマのまま一階のリビングへと急いだ。まずは、天国へ旅立った愛犬「ぱ
ふ」の祭壇へ向かい、小さなお椀の水を新しく冷たいものに取り替える。「ぱふ、パパは今、カメに
乗って一千年後の未来に行ってきたよ」と心の中で報告する。
それから、庭にある蓮鉢へと足を向けた。過酷な宇宙戦争も、時間跳躍もない、平穏な私の日常がそ
こにある。鉢を覗き込むと、今年生まれたばかりの子メダカたちが、私の影を察して「餌をくれ!」と
ばかりに一斉に水面に集まってきた。私はパラパラと餌を撒きながら、この美しい、命のバトンが繋
がっていく静かな風景に、心から感謝した。海も山も川も陸も、そしてこの小さな蓮鉢も、すべては確
かに繋がっているのだ。
「……そう言えば」
メダカの波紋を眺めているうちに、私は遥か昔、自分がまだ血気盛んな若者だった頃の、ある「黒歴
史」を唐突に思い出した。
当時、友人と地方の寂れた歓楽街へ遊びに出かけた時のことだ。雑居ビルの奥に、怪しげな紫色のネ
オン看板が掲げられていた。そこには、堂々とこう書かれていたのだ。
【スナック 竜宮城】
入り口のドアが開いた瞬間、中から強烈な厚化粧と紫色のヘアスタイルのオバさんママ(推定年齢・乙
姫の三倍)が現れ、しわがれた声で「お兄さんたち、寄っていきなさいよォ〜、サービスしちゃうわ
よォ〜」と、ものすごい力で私の腕を引っ張ったのである。
「やだよーーーっ!」
あの時の私は、未知の生命体に遭遇した宇宙飛行士のような恐怖を覚え、友人と共に脱兎のごとく逃
げ出したものだった。
「まさか今、僕がその時のママの年齢に近づいているとはね……」
私は苦笑し、頭を掻いた。もしあの時、あの「スナック竜宮城」のドアをくぐっていたら、私の人生と
いう世界線は、一体どう変わっていただろうか。それこそ、百年の時が瞬時に過ぎ去るほどの、恐ろしい
「お会計(玉手箱)」が待っていたに違いない。
庭の蓮鉢から、一匹のメダカがピチッと跳ねた。それはまるで、「余計な過去を振り返らず、早く朝食
を食べなさい」と、私を現実の世界線へ引き戻す合図のようだった。
(了)
【あとがき】
さて、あなたは今、「結局あれは夢だったのか?」「竜宮城は本当にあったのか?」と思っているかもしれません。
その答えは――私にも分かりません。
ただ、人生を長く生きていると、不思議な出来事というのは案外あるものです。
妙にタイミングが良すぎる偶然。
忘れた頃に現れる縁。
「あの時こうしていたら」と思わず考えてしまう分岐点。
もしかすると、人生そのものが巨大なタイムラインの寄り道であり、人間は皆、それぞれの“竜宮城”に寄り道しながら生きているのかもしれません。
若い頃には笑って逃げたものが、年齢を重ねると少し愛しく見えたりする。
逆に、昔は夢中だったものが、今では静かな思い出になっていたりもする。
そんなことを考える年齢になりました。
結局のところ、壮大な宇宙旅行よりも、朝の庭でメダカに餌をやる時間のほうが幸せだったりする。
人生って、不思議です。
もしどこかで、妙に人懐っこいカメを見かけたら。
その時は、少しだけ気をつけてください。
ひょっとすると――次に会う場所は、竜宮城かもしれません。

