あの頃のキミは、あの頃のままに 

ーー朝顔は一日だけ咲くーー



まえがき

 人は歳を重ねるほど、胸の奥に小さな引き出しを持つようになります。
 普段は開けることもなく、誰に見せることもない。けれど、ふとした匂い、光の角度、季節の移ろいが、その鍵をそっと外してしまうことがある。
 この物語は、そんな“引き出し”の中にしまわれた、ある十七歳の記憶の話です。
 忘れたわけではない。ただ、触れずにいた。
 人生の後半に差しかかったとき、人はようやく自分の記憶と静かに向き合えるようになるのかもしれません。
 あの頃のままの笑顔と、今を生きる自分。その二つを矛盾のまま抱えて生きることの、ささやかな温かさを描きました。




プロローグ
―夢の中の笑顔―

 目が覚めた瞬間、彼女の笑顔はもうそこにはなかった。
 天井の染みを見つめながら、桐島誠一は静かに息を吐いた。六十五歳になった今も、この夢を見る。学生服の白いブラウスと、少し恥ずかしそうに俯いたときに覗く耳の後ろ。梅雨の始まりの、あの廊下の匂い。
 夢の中の彼女は、いつも十七歳のままだ。
 誠一は布団の上でゆっくりと体を起こした。膝が痛む。腰も重い。窓の外は薄墨色の夜明け前で、遠くで鳥が鳴いている。
 妻の絹江は隣でまだ眠っている。三十八年間連れ添った、この人とは別の話だ。誠一の胸の奥に、絹江への愛情とはまた違う場所に、ひっそりと仕舞われた引き出しがある。その引き出しには鍵がかかっていて、自分でも滅多に開けることはないが、夢がたまにその鍵を外してしまう。
 引き出しの中には、小野寺朱里がいる。



第一章 
―桜の木の下で―

 あれは昭和五十三年の春だった。
 桐島誠一が高校二年生になった四月、クラス替えで初めて朱里と同じ組になった。もっとも、彼女のことは一年生のときから知っていた。廊下ですれ違うたびに、何か特別な引力のようなものを感じていたが、それが何なのかを十六歳の自分は言語化できなかった。
 席は廊下を挟んで斜め前、だった。授業中にちらりと横顔を見ることができる、そんな距離。彼女が窓の外を見るとき、光の中に白い頰が浮かぶのを、誠一はいつも視界の端で追いかけていた。
 最初に言葉を交わしたのは、五月の体育祭の準備の日だった。放課後、誠一はグラウンドに立てる看板を体育倉庫まで運ぶ係を命じられていた。重い板を一人で抱えて廊下を歩いていると、声をかけてきたのが朱里だった。
「手伝いましょうか」
 振り向いた拍子に看板を傾けて、危うく壁にぶつけそうになった。
「あ、いや、大丈夫です」
「大丈夫じゃなさそうですよ」
 朱里は笑いながら板の端をつかんだ。白い指先が木の縁に触れた。誠一は顔が熱くなるのを感じながら、ありがとうと小さく言った。
 二人で体育倉庫まで歩いたのは、ほんの二、三分のことだったろう。でもその二、三分が、誠一の人生に深い溝を刻んだ。
 彼女が笑うと、右の頰に小さなえくぼができた。
 それだけのことが、ずっと忘れられない。



第二章 
―梅雨の教室―

 六月になると雨が続いた。
 教室の窓ガラスが白く曇り、廊下には濡れた傘の匂いが漂っていた。あの頃の梅雨の匂いを、誠一は今でもはっきりと覚えている。湿った木の床と、図書室の古い本と、誰かの制服についた石鹸の香り。
 朱里は読書家だった。昼休みになると必ず文庫本を取り出し、給食を食べながら読んでいた。誠一は何を読んでいるのかを確認したくて、何度も彼女の席の前を通り過ぎた。松本清張、有吉佐和子、川端康成。十七歳の少女には少し渋い選択のような気がして、それがまた不思議な魅力だった。
 ある雨の午後、誠一は図書委員の仕事で図書室に残っていた。貸し出しカードの整理をしていると、ドアが開いて朱里が入ってきた。
「あ、桐島くん」
「委員の仕事?」
「ええ、返却に来ただけですけど。桐島くんも委員だったんですね」
 彼女は返却口にそっと本を置いた。誠一がカードを引き抜くと、川端康成の『雪国』だった。
「読んだことありますか」と朱里が聞いた。
「授業で少し」
「最後、悲しいですよね」
 彼女はそう言って少し俯いた。窓の外の雨が強くなった。二人は一瞬、同じ雨音を聞いた。
 帰り際、朱里は振り返って言った。
「また来ます」
 その言葉は図書室への「また来ます」だったはずなのに、誠一にはなぜか自分に向けられた言葉のように聞こえた。きっと自分の都合のいい聞き違いだと思いながらも、その日の夜は眠れなかった。



第三章 
―縁側の夕暮れ―

 夏休みが来た。
 誠一の家は古い商家を改築した平屋で、縁側から小さな庭が見えた。毎年夏になると父が朝顔を育て、青紫の花が竹格子に絡みついた。誠一は宿題帳を広げながら、実際には窓の外を見ているだけのことが多かった。
 朱里の家は自転車で十分ほどの場所にあった。近所の盆踊りで何度か見かけたことがある。浴衣姿の彼女は、制服姿とは別の人のようだった。藍色の浴衣に、白い帯。うなじに汗の光るのを見て、誠一は目をそらした。
 夏休みの終わり近く、学校の補習で久しぶりに顔を合わせた。帰り道が同じ方向だったので、自然と並んで歩くことになった。
「夏休み、何かしてた?」と誠一は聞いた。
「図書館に通ってました。冷房が効いてて」
「何読んでたの」
「今は向田邦子。あなたは?」
「あなたは、って」誠一は苦笑いした。「俺はずっと家にいた」
「つまらなそう」
「でも朝顔がきれいだった」
 朱里は少し考えてから言った。
「朝顔って、朝しか咲かないから好きなんです。一日だけしか咲かない花って、なんか潔くて」
 誠一はその言葉を、胸の引き出しの奥にそっと仕舞った。



第四章 
―秋、文化祭の夜―

 文化祭は十月だった。
 二年二組は喫茶店をやることになり、誠一は厨房係、朱里はホール係に振り分けられた。練習の日、エプロンをつけた朱里がコーヒーカップを運ぶ姿を、誠一は厨房の小窓からこっそり眺めていた。
 文化祭本番の夜、後片付けが終わったあと、クラスで屋上に上がった。誰かが持ってきた缶ジュースを回し飲みして、みんなで夜景を見た。秋の空気は澄んでいて、遠くのビルの灯りが宝石のようだった。
 気がつくと、誠一の隣に朱里が立っていた。
「楽しかったですね」と彼女は言った。
「うん」
「こういう日って、なんか夢みたいで、終わってほしくないって思う」
 誠一は何も言えなかった。終わってほしくない、という言葉が自分の気持ちにぴったり重なって、うまく口が動かなかった。
 夜風が吹いて、朱里の前髪が揺れた。誠一は手を伸ばしかけて、やめた。
 あのとき手を伸ばしていたら、どうなっていただろう。
 六十五歳になった今も、たまに考える。きっと何も変わらなかっただろうと思いながら、もしかしたら、とも思う。人生というのは、伸ばしかけてやめた手の積み重ねかもしれない。



第五章 
―冬の別れ―

 三年生になると、クラスが変わった。
 受験の緊張が学校全体を覆い、廊下で朱里と会うことも少なくなった。誠一は文系、朱里は理系と聞いた。進む道が違う、という事実が、二人の間にはっきりとした仕切りを引いた。
 最後に言葉を交わしたのは、十二月の個人面談の日だった。廊下で待っている間、隣のベンチに朱里が座った。
「受験、大変そうね」と彼女が言った。
「朱里さんは?」
「医療系に行こうと思ってる。まだ迷ってるけど」
 医療系。誠一は少し驚いた。どこか遠いところへ行ってしまうような気がした。
「桐島くんは、なりたいものある?」
「まだわからない。でも、普通に就職できれば」
「普通って、何だろうね」
 朱里はそう言って少し笑った。面談の順番が来て、彼女は立ち上がった。
「頑張ってね」
 それが最後の言葉だった。
 卒業式の日、誠一は遠くから彼女の姿を探したが、人混みに消えてしまって見つけられなかった。白い制服の中で、朱里はどこかに溶けていった。
 それから季節が四十回、巡った。



第六章 
―大人になるということ―

 大学に入り、就職し、結婚した。
 誠一の人生は、おおむね普通に進んだ。小さな建設会社に入り、三十年かけて営業部長になった。絹江と結婚して、子供が二人生まれて、今は二人とも独立している。
 悪い人生ではなかった。むしろ恵まれていた。
 それでも、朱里のことを考える瞬間が、ときどきある。特に理由はない。夕暮れの光の角度がある一点を超えると、急に思い出すことがある。何かを読んでいて、ふとした言葉に引っかかることがある。梅雨の雨の匂いを嗅いだとき。
 彼女は今、どこで何をしているのだろう。
 医療系に行くと言っていた。看護師か薬剤師か、あるいは医師になったのかもしれない。結婚もしているだろう。子供もいるかもしれない。六十五歳になっているはずだ。自分と同じように、膝が痛んで、白髪が増えて、老眼鏡をかけているかもしれない。
 でも誠一の頭の中では、朱里はいつまでも十七歳だ。
 それはおかしなことだと思う。自分は確実に老いているのに、彼女だけを時間の中に閉じ込めておくのは、一種の身勝手さだ。
 でも、それでいいとも思う。
 記憶の中の朱里は、現実の誰にも傷つけられない。夢の中で笑うあの笑顔は、誰のものでもなく、誰にも奪われない。



第七章 
―同窓会の通知―

 十一月のある日、一枚のはがきが届いた。
 差出人の名前を見て、誠一は少し胸が詰まった。西川敏雄。高校のクラスメートで、ずっと同窓会の幹事をやってくれていた男だ。几帳面で、しっかり者で、誰かが音頭を取らなければ集まれないクラスのために、何十年も世話を焼いてくれていた。
 はがきの内容はしかし、同窓会の案内ではなかった。
 西川が昨年末に亡くなったという知らせだった。奥さんからのはがきで、整理をしていたら連絡先名簿が出てきたので、ご報告まで、と書いてあった。
 誠一はしばらくはがきを持ったまま動けなかった。
 西川がいなくなった。そうか。あいつがいなくなった。
 次の同窓会を自分で企画しようかと思ったことは何度かあった。でも、そこまでの度胸がなかった。人を集めて、場所を取って、案内状を出して、という作業を、誠一は苦手だった。西川のような細やかさが自分にはない、と言い訳にしていた。
 でも今は、もうあいつに頼むこともできない。
 誠一は庭に出た。晩秋の夕暮れで、柿の実が橙色に光っていた。西川の顔を思い出した。笑うと目が細くなる、少し太った男。高校時代から変わらないふっくらした頬で、還暦の同窓会のときも同じように笑っていた。
 あれが最後だったか。
 もう五年前になる。



第八章 
―もし会えるなら―

 年が明けて、誠一は少しだけ本気で同窓会の開催を考えた。
 クラスの連絡先は、西川から引き継がれた名簿が自分のところにも届いているはずだ。探してみると、古いファイルの中から出てきた。四十人ほどの名前と住所が並んでいる。すでに故人になっている名前も、いくつか知っていた。
 指が朱里の名前のところで止まった。
 小野寺朱里。結婚していれば、苗字も変わっているだろう。でも名前はある。住所も、一応ある。数年前まで西川が更新していたが、今も同じかどうかはわからない。
 手紙を書こうかと思った。でも何を書く。
 何十年も会っていない、ただのクラスメートからの突然の手紙。しかも自分は彼女のことを憧れていた、と今さら気づかせるような内容など書けない。書いても意味がない。
 それより怖いのは、会ったときのことだ。
 誠一は正直に、自分の心の動きを分析する。もし朱里に再会したとして、自分はどう感じるか。
 恋が再燃するかどうかは、まず考えない。自分には絹江がいる。それは揺るがない。
 怖いのは、別のことだ。
 記憶の中の十七歳の朱里が、六十五歳の現実に書き換えられてしまうことが、怖い。それは彼女への冒涜ではない。時間を生きてきた彼女自身への失礼でもない。ただ誠一にとって、記憶というものは取り返しがつかないものだ。一度上書きされたら、もとには戻らない。
 胸の引き出しの中の朱里は、笑っている。
 えくぼがある。前髪が揺れる。川端康成の本を返却口に置く白い指。
 その朱里を、誠一は今さら別の形に変えたくなかった。



第九章 
―絹江のこと―

 夕食の後、誠一は珍しく台所で絹江の洗い物を手伝った。
「どうしたの、急に」
「別に」
「高校の友達が亡くなったって言ってたじゃない。それが気になってるの?」
 誠一は茶碗を拭きながら少し考えた。
「同窓会、やろうかどうか迷ってる」
「やればいいじゃない。あなたが音頭とれば、みんな来るわよ」
「そうかな」
「そうよ。もうそういう年よ、お互い」
 絹江は泡を流しながら静かに言った。自分の手の甲をさすった。三十八年分の年輪みたいな、薄いシミがそこにあった。
「会えるうちに、会っておかないと」
 誠一はその言葉を聞きながら、また朱里のことを思った。
 会えるうちに、会っておかないと。
 でも、自分が朱里に会いたいのは、会っておきたいからではなかった。会いたいのではない。会わずに済ませることで、何かを守りたかった。
 それは臆病かもしれない。でも、そういう気持ちを持ったまま六十五年生きてきた。今さら変えることもない。
「考えてみる」と誠一は言った。
 絹江は振り返って、少し笑った。三十八年間、隣にいた顔だ。白髪が増えて、少しふっくらして、でも笑うと昔と同じ顔になる。誠一はこの顔が好きだ。
 胸の引き出しには別の顔がある。でもその引き出しを持っていることと、今ここにいる絹江を愛していることは、矛盾しない。少なくとも誠一の中では。
 そういう複雑さを抱えたまま、人は生きていくのだと思う。



第十章 
―時間の速さ―

 還暦を過ぎてから、時間が変わった。
 若い頃は一年が長かった。高校の三年間は、今思えばずいぶん長く感じた。夏休みは永遠に続くようで、文化祭の夜は時間が止まっているようだった。
 六十を過ぎると、一年が三ヶ月に感じる。気づくと正月が来て、気づくと桜が散って、気づくと年賀状を書いている。
 先輩たちが言っていた通りだ。定年前に会社の先輩から「六十過ぎたら時間が音速になるぞ」と言われたとき、誠一は半信半疑だった。今はその意味がわかる。砂時計の上の砂が少なくなるほど、下に落ちるのが速く見える。そんなものかもしれない。
 もうすぐ古希だ。
 七十歳。あの頃は遠い話だと思っていた。祖父が七十になったとき、誠一は十歳で、祖父は別世界の住人のように見えた。今やその七十が目前に迫っている。
 あの頃の自分が今の自分を見たら、なんと言うだろう。白髪で、眼鏡をかけて、膝をかばいながら歩く六十五歳の男を。
 「こんなふうになるのか」と驚くかもしれない。でも誠一は今の自分をそれほど嫌いではない。たくさんのものを失ったが、たくさんのものを得た。子供たちは元気だ。絹江は隣にいる。庭の柿の木は今年も実をつけた。
 そして胸の引き出しには、笑っている朱里がいる。
 あの頃のまま、永遠に十七歳の朱里が。



第十一章 
―春の夜の夢―

 三月の末、誠一はまた夢を見た。
 今度は図書室だった。雨が窓を打っていて、誠一はカードの整理をしている。ドアが開いて、朱里が入ってくる。白いブラウス、紺のスカート。えくぼ。
「また来ました」
「うん」
 夢の中では自然に言葉が出た。
「もうすぐ卒業ですね」と朱里が言った。
「そうだな」
「桐島くんは、何になるの?」
「わからない。でも、普通にやっていけると思う」
「それでいいの?」
 彼女はそう言って本を返却口に置いた。今度は川端康成ではなく、向田邦子だった。
「普通って何だろう、って前に言ってたけど」と誠一は夢の中で言った。「今はわかる気がする。普通というのは、誰かのそばにいることだ」
 朱里は少し驚いたような顔をして、それから笑った。えくぼが深くなった。
「そうかもしれないですね」
 そこで目が覚めた。
 天井の染みがある。窓の外は白い夜明けで、遠くで鳥が鳴いている。隣に絹江がいる。
 誠一は静かに目を閉じた。夢の残像がまだある。図書室の雨と、えくぼと、返却口の向田邦子。
 普通というのは、誰かのそばにいることだ。
 夢の中で自分はそう言った。六十五歳の自分が、十七歳の記憶に教えてもらった気がした。



エピローグ 
―あの頃のキミへ―

 四月になった。
 誠一は同窓会の案内状を書いた。西川の代わりに、自分が音頭をとることにした。不器用な文面になったが、それでもいいと思った。
 案内状には、集まれる人だけでいい、返事がない人は無理をしなくていい、と書いた。みんなそれぞれの時間の中で生きているのだから。
 小野寺朱里の欄には、案内状を入れた。送り先の住所が変わっているかもしれない。届かないかもしれない。届いても、返事が来ないかもしれない。
 それでいい、と誠一は思った。
 来てくれたら、懐かしい顔として会う。来なかったら、胸の引き出しの中で十七歳のままでいてくれる。どちらになっても、朱里は朱里だ。
 縁側に出ると、庭の隅に朝顔の双葉が出ていた。今年も父の朝顔の種が芽を出した。毎年出るのだ、あの朝顔は。
 一日しか咲かない花。でも種は残って、また次の夏に咲く。
 誠一はしゃがんで、双葉をそっと触った。柔らかい。まだ小さい。
 あの頃の朱里が言っていた言葉を思い出した。朝顔は朝しか咲かないから好き、一日だけしか咲かない花って潔くて、と。
 あの頃のキミは、あの頃のままに、ずっとそこにいる。
 それでいい。
 夢の中でまた会おう。
そう思った夜、庭ではまだ咲いてもいない朝顔が、風に小さく揺れていた。

 ――了


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あとがき

 六十五歳の主人公・誠一が見つめるのは、決して“叶わなかった恋”ではありません。
 むしろ、人生の中でそっと息づき続けた“記憶の温度”です。
 人は誰しも、心のどこかに十七歳の自分を残したまま生きているのだと思います。
 そして、誰かの十七歳を、そっと抱えたまま生きていることもある。
 それは後ろ向きではなく、むしろ人生を豊かにする静かな光です。
 朝顔が一日だけ咲いても、種は残り、翌年また芽を出すように。
 記憶もまた、形を変えながら、私たちの中で生き続けます。
 この物語が、あなた自身の“あの頃”に、そっと触れるきっかけになれば幸いです。